トラックが迷惑がられる最大要因「ポイ捨て」。ドライバーからも「同業として情けない」の声

トラックが迷惑がられる最大要因「ポイ捨て」。ドライバーからも「同業として情けない」の声

"トラックは迷惑"の最大要因

トラックが迷惑がられる最大要因「ポイ捨て」。ドライバーからも「同業として情けない」の声

道路脇に溜まるゴミ。場所によってはトラックでしか届かないところに置かれたゴミも

トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前々回と前回は、「運送業界の働き方改革とドライバーの給与形態」について紹介したが、今後は不定期に「トラックドライバーによるマナー違反」についていくつか考えていきたい。

 今回は、その中でも特に指摘の多い「ポイ捨て」について述べていこう。

◆業界内部も頭を悩ませているドライバーの「ポイ捨て」

 トラックの事情をドライバー目線で紹介すると、毎度必ずといっていいほど聞こえてくるのが、世間からの「トラックドライバーはマナーが悪い」という声だ。

「路上駐車」や「エンジンの掛けっぱなし」、「ハンドルへの足上げ」など、トラックの裏事情を知らない一般車や歩行者からは、「交通ルールも守れないのか」、「これだからトラックは」などと、否応なく後ろ指を指されてしまう。

 そのため、こうしたトラックドライバーのマナー違反に対しては、これまで元ドライバーとして、彼らがそうせざるを得ない理由、そして「迷惑をかけて申し訳ないし、決して褒められた行為ではないが、好きでマナー違反をしているわけではない」という心情を、できる限り丁寧に説明してきたつもりだ。

 しかしその一方、守れるマナーをも守らないトラックドライバーが存在しているのも事実。

 中でも、同業者ですら頭を悩ませているのが、「ポイ捨て」である。

◆なぜ「ポイ捨て」するのか?

 クルマからのポイ捨ては、ドライバーに「車内は汚したくない」というワガママ心と、「すでにゴミがポイ捨てされてあるから、どのみち誰かが掃除するだろう」という割れ窓理論の心理が合わさると、トラックだけでなく、乗っている車種問わず、さほど罪悪感なく行われてしまう。

 そのため、「トラックドライバー=ポイ捨ての犯人」と世間から決めつけられると、やはり「それは違うだろう」と鼻の穴膨らまし反論したくなるのだが、こうした思いとは裏腹に、トラックドライバーによるポイ捨てが数多く行われているのは間違いなく、潔癖の元ドライバーとしてはプライドが許さないところで、近い将来なんとしてでもこのイメージを払拭したいと思っているところだ。

 大げさに言ってしまえば「トラックのマナー改善」においては、現在こうしてトラック関連を書くうえでの1つのゴールとして位置付けている課題だったりもする。

◆トラックドライバーはゴミマナー意識が一般ドライバーより悪いのか?

 では実のところトラックドライバーは、一般ドライバーと比べてゴミに対するマナー意識が飛びぬけて悪いのかと言ったら、やはりそんなことはない。

 実際に今回、現役トラックドライバーに「同業者に感じるマナー違反にはどんなものがあるか」というアンケートをTwitterで行ったところ、大変多くのドライバーが「ポイ捨て」を挙げ、「同業者として情けない」、「一緒にされることに憤りを覚える」といった声を聞かせてくれた。

 また、正義感の強い彼らの中には、普段から「ポイ捨てしているドライバーがいた」と筆者に報告してくれる人や、画像や動画を拡散して「プロではない」「恥さらし」と怒りをあらわにする人が驚くほどたくさんいる。

 ゆえに、「トラックドライバー=ポイ捨てする」という固定観念を世間から持たれるのは、やはり本意ではないのだ。

 にも関わらず、どうしてトラックドライバーは、とりわけ強いポイ捨ての印象を持たれるのか。

 それには第一に、彼らが絶対的に「道路上や車中にいる時間」が一般ドライバーよりはるかに長いため、「ポイ捨てする機会」も必然的に増えるという現状がベースにある。

 時間に追われるトラックドライバーは車内で食事を取ることが多い。また、車内・路上にいる時間が長くなれば、出すゴミの量も一般車より多くなる。

 そのため、「ポイ捨て率」が他車より高くなるのは、当然と言えば当然なのだ。

 無論、だからといってこうした行為を「はいそうですか」と笑って許せる隙は一切ない。

 どんな事情があっても、トラックドライバーである前に人であるべきで、一般車の車高からはポイ捨てできない、高いフェンスの張られた向こう側にコンビニ弁当や雑誌、空き缶などのゴミが散乱しているのを見ると、やり場のない憤りがこみ上げてくると同時に、姿の見えない持ち主のもとへ配送したくなる。

◆中にはこんなものを捨てるドライバーも……

 そんなゴミの中でも、とりわけ同業者が「恥ずかしい」と嘆くモノがある。

「用を足したペットボトル」だ。

 彼らがペットボトルに用を足すのには、彼らなりの事情がある。

 過去にも述べてきたように、時間厳守で走る彼らには、とにかくトイレに寄る時間がない。いや、時間があっても「寄れるトイレ」がないことのほうがむしろ多いかもしれない。

 図体の大きいトラックは、立ち寄れるコンビニや店舗が大変少なく、大型車専用駐車レーンのあるサービスエリアに行っても混雑時は駐車できず、トイレに長時間行けないことがあるのだ。

 さりとて、ペットボトルに用を足すのと、それを外に投げ捨てるのとは、全くの別問題である。

 筆者が現役時代、マナーの悪いドライバーに用足しのペットボトルがポイ捨てされている現状を嘆いたところ、「小便我慢しろってのか」と言い放たれたことがあった。

 が、なにも生理現象を我慢しろというわけではない。過酷がゆえに、ペットボトルへの用足しもやむを得ないことだってある。

 しかし、自らが作り出したその用足しペットボトルのポイ捨ては、もはや「人格のポイ捨て」と同義。女性の筆者からすれば、正直、用が足せるだけ羨ましかった。

◆雇用側もマナー教育の充実を

 当然、多くのドライバーを抱える運送企業各社も、彼らにこうしたモラル教育を施す必要がある。

 育ってきた環境の違う人間全員に当然のモラルを守らせるというのは、実はそんなに簡単なことではない。

 特にひとりで仕事をする時間の多いトラックドライバーの中には、「誰も見ていないだろう」「このくらいいいだろう」という気持ちが芽生えてしまう人も、残念ながら存在するのだ。

 トラックは文字通り、会社の名前を背負って走っている。

「そんな当たり前なことを教えるのか」とせず、日々遠くまで行って頑張る自社のトラックドライバーを胸張って送り出せるようにするためにも、彼らのモラル教育は、社内で定期的に行うべきだといえるだろう。

◆しかし重要なのは、ドライバー自身が声をあげること

 一方、拾ってもすぐにゴミ山ができる状況に対し、自治体の中には、監視カメラを設置したり、小さい「鳥居」を置き、人の信仰心を刺激してポイ捨てを躊躇させたりするなどの対策を取っているところまである。

 「神様」まで使って対策せねばならないほどのポイ捨てが、トラックドライバーによるものだと世間に少なからず思われてしまっているならば、やはりここはトラックドライバー総出でこのイメージを180度変えよう、いや、変えてやろうじゃないかと、筆者はひとり躍起になっているところなのだが、どうだろう、現役トラッカー各位。

 冗談などではなく、本気でトラックドライバーの存在価値を上げていく気はないだろうか。

 世間から「だからトラックドライバーは」と後ろ指さされながら仕事をするより、「大変なのにマナーがいいな、トラックドライバーは」と言われたほうが、仕事のモチベーションもトラックドライバーとしてのプライドの在り様も違ってくる。

 そしてなにより、「底辺職」と言われる現状からの脱却、過酷な労働環境の改善には、国や企業による努力だけでなく、ドライバー自身のマナー向上も必須な要素であることを忘れてはならない。

<取材・文・撮影/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

関連記事(外部サイト)