急増する[動物ふれあいカフェ]の闇。癒やされるのは人間だけで動物には負担

急増する[動物ふれあいカフェ]の闇。癒やされるのは人間だけで動物には負担

カワウソ、ハリネズミ、チンチラ、モモンガ、フクロウ、ヘビetc……。人間に触られることに慣れていない動物たちも「動物カフェ」では触ることができる

 犬猫以外にもさまざまな動物と触れ合える「動物カフェ」が、ここ数年で急激に増えてきている。実は、その裏側では動物たちに多大な負担がかかっていた。触れ合うことで“癒やされ”ていたのは、人間ばかりだったのだ。

◆犬猫カフェだけじゃない! 人間を癒やすために傷つく動物たち…

「癒やし効果がある」と人気の、フクロウカフェ。’12年に都内でフクロウを扱う店が登場して以来、ここ数年で全国的に増加している。

 数か月前までフクロウカフェの店員として働いていたAさんは「フクロウが好きで働き始めたんですが、いたたまれなくて辞めてしまいました」と語る。

「私の働いていた店では、フクロウたちがおよそ30p間隔で密集したまま、足を紐で固定されて飛べない状態になっていました。お客さんが代わる代わるやってきて触ったり至近距離で写真を撮ったりするのも、相当なストレスがかかっていると思います」

◆病気に罹り、死んでしまうフクロウも多数

「人間の環境に合わせることも、フクロウに大きな負担をかけています」と言うのは、別のフクロウカフェの元店員・Bさん。

「室温は人間に合わせているので、シベリアなど寒冷地のフクロウには暑すぎる環境です。でも、水をやるのは『糞尿が増える』との理由で禁止されているんです。喉が渇いたしぐさを見せたら、霧吹きで5回水を吹きかけるというルール。また、フクロウにとっては、人間に合わせた部屋の明るさはまぶしすぎるし、聞こえる音も大音量だったと思います」

 そんな環境で暮らしていると、病気に罹るフクロウも増えてくる。

「病気になっても放置です。私の店では月1くらいで“落ちて”(死ぬこと)いました。お客さんに『〇〇ちゃんはどうしたの?』と聞かれると、『お迎えがきました』と、売れて飼い主が見つかったかのような表現をするように指導されていました。実際は、ほとんどが“天国からのお迎え”でしたが……。お客さんの多くは、飼えないからこそ触れ合いに来ているのだと思います。値段は小型が30万円、中型が45万円、大型が80万〜120万円ほどで、売れるのは1年に1〜2羽くらいでした」(Aさん)

 都内のフクロウカフェを調査した「アニマルライツセンター」の岡田千尋代表理事はこう語る。

「調査の結果、どのフクロウカフェも程度の差はあれ、個体に大きな負担を強いていることには変わりないということがわかりました。閉店後も繋ぎっぱなしの店が多く、一時的に廊下で飛ばすなどしている店もありますが、運動量が足りずに筋肉が落ち、多くのフクロウが不健康になっていきます。例えば、ニューサウスウェールズ州(オーストラリア)では『展示動物保護条例』で、フクロウを飼う場合のルールが細かく決められているんです。『フクロウを飼う場合は、1羽当たり3〜4m四方のスペースと、高い位置に止まり木が必要。繋いではならず、他のフクロウが見えない環境に置かなければならない』。しかし、日本は何の決まりもない。店の都合に合わせてフクロウが飼われている状態です」

◆野生と違う環境で心身を病むカワウソも

 最近のブームで、カワウソカフェも急増中。カワウソカフェ元店員のCさんはこう告発する。

「触れ合うことができるのは一部のカワウソだけで、お客さんを噛んでしまう『問題児』も多いんです。そうした子たちは狭いケージに入れられたまま、外に出してはもらえません。中には寄声を発したり、尻尾を噛んだり、同じ場所をグルグル回り続けるなどの『常同行動』を起こしたりする子もいます。そうなると、お客さんには見えないバックヤードに連れていかれて、そこで“飼い殺し”です」

 Cさんの店には、行政の動物愛護相談センターから「カワウソが泳げる水場が必要」との指導が入ったことがあるという。

「そのときは小さな水場を設けて『交代で泳がせています』とごまかしました。実際は一部のカワウソしか泳がせていませんでしたが」

 動物愛護団体「PEACE」の東さちこ代表はこう語る。

「カワウソは周囲10qという広大なテリトリーを動き回るアクティブな野生動物。肉食獣で鋭い牙を持ち、狂暴な一面もあります。飼うのは非常に難しい。異常行動を起こしてしまうのは、狭いところに閉じ込められるなど動きを制限されていることが大きな原因です。ストレスで免疫力が下がり、病気にもなりやすい。そもそもカワウソは、水辺で家族を中心とした群れで生活する動物です。仲間と引き離されて狭いケージに入れられ、すぐに泳げる水場もありません。これでは、精神も体も病んでしまうのが当然でしょう」

 日本で大人気のコツメカワウソは絶滅危惧種で、今年11月26日からワシントン条約により国際商取引が禁止された。カワウソの繁殖は難しく、現在日本には年間150匹が外国から入ってきているが、そのうち正式に輸入されたものは30匹ほどだという。それ以外は密輸だ。ペットショップやカワウソカフェにいるカワウソの多くは、違法に取引されたものということになる。

◆動物に愛情も知識もない人物が店を経営

 別のカワウソカフェで働いていたDさんは「ウチの店では、モモンガとハリネズミも飼っていました」と語る。

「マネジャーも社長も、動物に対する知識がまったくない。モモンガやハリネズミはよく動く野生動物なんですが、ハムスター用の小さいケージに入れられています。そこから何度も逃げ出そうとして、足にケガをしているハリネズミもいました。また、高い木から低い木へと飛び移るモモンガには高さのある環境が必要なのに、『スペースの関係』ということで狭い場所に閉じ込められていました」

 当然、こうした環境では病気になる動物が増えてくる。

「具合の悪くなった子がいて『病院に連れていきたい』と言うと、マネジャーは『様子を見よう』と拒否してばかり。モモンガは偏食で、同じエサをやり続けていたらそれを食べず、低栄養で下痢になってしまう子もいたんです。そこで、個人的にエサを買って与えていたところ、社長に『甘やかしだ』と叱られました」

 この店には、Dさんをはじめ、動物に愛情を持って世話をしていたスタッフが多かった。彼らが「動物の扱いを見直してほしい」と訴えると、何と社長は“反抗的な”スタッフ全員を突然解雇してしまったという。

 前出の岡田さんはこう解説する。

「最近、カワウソだけではなくチンチラやフェレット、フェネックなど人気の動物を一緒に飼う店が増えています。こうした店の経営者はその動物が好きなのではなく、“商売になるから”人気の動物を扱っていることが多い。野生動物にとっては違う種と一緒の空間に置かれること自体がストレスですし、人間に触られることも大きな負担。こうした野生動物と触れ合わせる営業形態は、欧米諸国はもちろん台湾でも違法です」

 訪れた客は「癒やされた」と満足して帰っていくが、癒やされているのは人間の側だけだったのだ。

◆国際商取引が禁止された結果、コツメカワウソの争奪戦が激化!?

 今年8月26日、絶滅の恐れのある野生動植物の保護を目的とした「ワシントン条約」の締約国会議で、コツメカワウソの国際商取引を原則禁止する議案が採択された(11月26日発効)。これにより、国際取引のための繁殖場は登録が必要となり、そこで生まれた2代目以降のカワウソしか輸入できなくなった。さらに国内取引も「種の保存法」で規制されることになるが、業界関係者は「抜け道はいくらでもある」と証言する。

「例えば、カワウソの輸出元のインドネシアは賄賂が利きます。難しい繁殖をするより、野生のカワウソの子供を獲るほうが手っ取り早くてコストも安い。現在、カワウソの値段は80万〜120万円程度。取引禁止で争奪戦が激化し、さらに値上がりすると見られています。密輸業者にとってはさらにオイシイ話になるでしょう」

<取材・文/北村土龍>

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