タイで日本人観光客の悪ふざけがテレビや新聞も報道する大騒動に発展

タイで日本人観光客の悪ふざけがテレビや新聞も報道する大騒動に発展

タイで邦人の悪ふざけ騒動に

タイで日本人観光客の悪ふざけがテレビや新聞も報道する大騒動に発展

Facebookで拡散した動画

◆タイでまたたく間に拡散したある動画クリップ

 タイと日本は昔から国家間でも一般の人同士でも交流が深く、過ごしやすい場所として日本人が多く訪れている。そのため、毎日、ニュースなどで「イープン(日本)」という言葉を何度も耳にする。

 そんな今月の13日、残念ながら悪い方のニュースで日本人が取り上げられてしまった。あるタイ人がSNSにアップした動画クリップが瞬く間に拡散されたのだ。

 その内容は「トゥクトゥクに乗った外国人が道路上で性交している」というものだった。

 トゥクトゥクとはタイの三輪タクシーのことだ。これが13日の深夜1時ごろにアップされ、投稿者は「ついさっき経験したこと」と紹介した。それがあっという間に広まっていき、翌朝には大手新聞各社のウェブ版に掲載され、13日夜にはテレビニュースにもなってしまった。

◆You Tubeに転載された問題の動画

 朝の時点ではあくまでも「外国人」で日本人とはされていなかった。地元マスコミに語る投稿者によれば「外国人の男性3人、女性2人の若者のうち、ひと組の男女や下半身を露わにし、男性の上に女性が乗っていた」そうだ。

 該当する動画を確認すると、拡散された時点なのか、あるいは最初の投稿時なのか不明だが、モザイクが入っているものの、トゥクトゥクがかなり揺れていることがわかる。ただ、その直後に「気持ちいい」と女性の声が聞こえた。また、喘ぎ声のような声も聞こえてる。

 タイの性風俗産業は日本人も顧客ターゲットに入っているため、ナイトエンターテインメントに従事する女性の中では「気持ちいい」は誰もが知る言葉だ。そのため、動画だけでは日本人とは断定できないが、13日の夕方にはそのトゥクトゥクの運転手が管轄の警察署に出頭して事情を説明し、日本人と証言した続報が地元紙のウェブ版に掲載された。

◆運転手の証言で「性交」は誤報だと発覚したが……

 その記事内のトゥクトゥクの運転手によれば、この日本人グループを歓楽街で拾い、およそ3.3キロ離れたホテルに送ったという。動画はバイクに乗っていた投稿者によって道中で偶然撮影された。トゥクトゥクが揺れていたのは、彼らの性交によるものではなく、この運転手が乗客を喜ばせるために小刻みにブレーキをかけていたからだそうだ。

 また、タイのメディアが最も気にしていた点である、彼らは下半身を露わにして本当に性交していたかどうかだが、それをこのトゥクトゥク運転手は違うと否定した。彼らはかなり酩酊していたが、女性は座った状態ではなにも穿いていないように見えただけで、ホテルに到着して降りたときにはちゃんとショートパンツを穿いていたという。「気持ちいい」などの発言はあくまでも悪ふざけで、クリップには存在しないが、彼らは最初の投稿者のカメラに向かってポーズを取っているはずだという。

 つまり、トゥクトゥクの上で性交していたというのは見間違いで、それにたくさんのタイ人が過剰反応しただけだったようだ。

◆自由な雰囲気の南国でも知っておくべきこと

 ただ、この事件はタイ人の国民性を表しているともいえ、観光客や長期滞在者は憶えておいた方がいいことを象徴している。というのは、この報道が出た早い段階では警察に捜査をするべきとする声が多数だったからだ。

 タイには昔から国際貿易国でもあったため、外国人や外国の文化が流入してきた。ところが、タイ人は保守的で、新しいものをあまり受け入れない一面も持ち合わせている。

 たとえば、食に関しても、今でこそ国民食ともいえる米粉から作る麺「クイッティアオ」は、中国の広東省潮州県の麺類が発祥だとされる。タイのアユタヤ王朝時代(1351〜1767年)には中国人の商人が持ち込んでいたとされるが、タイ人全般が受け入れるようになったのは第2次世界大戦中のことだ。

 また、タイ国内には外国人向け性風俗店が数多にあるが、本来タイ人は人前で肌を露出することを極端に嫌がる。服装に関しても、近代は英国を中心に欧米の影響を受けていることもあって、身なりが調っていない人は低階級の人物とみなされてしまう。さらに、仏教徒が国民の94%とされ、敬虔な信者ばかりで非常にまじめな性格であるというのもあり、下品なことを嫌う。

 これらのタイ人気質が「道路上で外国人が性交をするなんて、タイの品位を落としている!」と、今回の事件に対し、真相が判明する前に過剰反応させたのだ。こういうことは多々ある。たとえばビーチリゾートの砂浜で盛り上がってしまったカップルがその場で性交してしまうことがあり、警察が逮捕したというニュースはよく見かける。ちょっとした殺人事件ならほとんど報道されることはないにも関わらず、この手の事件に関してはニュースになってしまう。さすがに厳重注意や罰金刑などで済み、刑務所に入ることはないが。

◆「性」に関して日本人が問題を起こすことも

 日本人も性に関係した事件を起こしていて、タイの品位を傷つけたと批判されることがある。たとえば、アダルトビデオの業界においてニッチなジャンルではあるようだが、タイ人女優が出演するものがある。10年以上前にはタイのセクシー系タレントがこっそりと日本のAVに出演し、それがタイで発覚するやいなや、女優を騙した日本のAVが悪いといった意見が噴出した。数年前にはタイ女性の客室乗務員をナンパしたシナリオのため、タイの玄関・スワナプーム国際空港でオープニングの部分を少しだけ撮影してしまい、それにタイ側がかなり怒った。

 微笑みの国と呼ばれるタイは、基本的におおらかになんでも許される部分は確かに多い。しかし、タイ人にも怒るポイントがあるので、今回の若者たちは本当に性交渉をしていたわけではないとはいえ、そう周囲に勘違いさせることはタイでは許されることではなく、分別のある行動を取らなければならないという教訓になった。一般的な観光客も羽目を外してしまうこともある。タイはそうしても許されそうな雰囲気はあるが、やっていいこと・悪いことがあるのだ。

<取材・文・写真/高田胤臣>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など

関連記事(外部サイト)