慰謝料も払わず「離婚後もたまにデートしような」……。往生際の悪いモラ夫たち<モラ夫バスター40>

慰謝料も払わず「離婚後もたまにデートしような」……。往生際の悪いモラ夫たち<モラ夫バスター40>

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◆弁護士・大貫憲介のモラ夫バスターな日々<40>

 「いきなり電話してきて、お前、なんだよ」

 夫(40代)に電話して、私が弁護士と名乗ると、夫は初めから戦闘モードだった。

 私は、「よしえ様(仮名)は、離婚したいそうです」「まず、会ってお話ししたいのですが、お時間をいただけますか」とゆっくり尋ねると、夫は一瞬黙って、明日同じ時刻に電話くれと言った。

◆財産分与、慰謝料なしの協議離婚

 2018年の離婚総数は、約20万件である(参照:人口動態統計の年間推移|厚労省)。

 そのうち、調停離婚が成立したのは、約3万5000件である(参照: 婚姻関係事件数―終局区分別|Court In Japan)。

 すなわち、離婚6件のうち、おおよそ5件は協議離婚、1件は調停離婚である。弁護士が関わらない協議離婚の多くがどのようなものか、その実態はよくわからない。

 しかし、離婚後の法律相談やSNSなどでは、モラ被害妻たちが、財産分与や慰謝料なしで離婚し、養育料も満足に支払われていない事例が散見される。おそらく8割を占める協議離婚はほとんどが、そのような内容なのだろう。

◆ 「お前は俺なしでは生きていけない」

 モラ夫は妻を支配し、家事育児に従事させる。彼にとって、妻はとても都合の良い存在なので、逃げないよう妻を囲い込む。そのため妻が自立しないよう、日々、呪いの言葉をかけ続ける。

「お前など、社会の役に立てない」

「稼げるはずもない」

「俺がいないと、経済的に困るぞ」

 被害妻たちは「俺の言うことが信じられないのか!」と怒られ、モラ夫の言葉を疑うことを禁じられている。そのため、モラ夫の呪いを乗り越えることは、容易ではない。

◆8割の被害妻は、モラ夫を恐れて満足な慰謝料を請求しない

 家裁で離婚するとモラ夫たちは、お金を払わされる側になる。そのため、呪いを乗り越えた妻が離婚を要求すると、モラ夫は、それを潰しにかかる。

 怒りや大きな声でけん制して、離婚を諦めさせようとする。それが無理とわかると、自分のお金の守りに入る。「(俺こそ)、この結婚の被害者」「(家事育児放棄などを理由に)慰謝料請求するぞ」などと屁理屈を総動員して、妻を威嚇する。 

 モラハラの海に溺れかかっている妻は、抵抗する力も殆んど残っていないが、力を振り絞って財産分与、慰謝料などを請求すると、モラ夫は「とことん闘うか」「俺は優秀な弁護士を知っているぞ」などと妻を押し潰す。

 被害妻の多くは、モラ夫を怒らせないようにすることが身に染みているので、結局、お金を請求せずに縁を切ろうとする。怒らせず円満に離婚すれば、確実に縁が切れると期待するのである。その結果、十分な経済条件なしでの協議離婚が、離婚総数の約8割近くを占めることになる。

 ところが離婚弁護の経験からは、しっかりお金を取ったほうが後腐れの可能性が大きく減る。

 多くのモラ夫たちは金銭欲が強いので、お金を払わせて痛みを学習すると、元妻に容易には近づかなくなる。ところが、上述のように、別れ際までモラ夫に気を使って、請求するべきものを請求しないでいると、モラ夫に足元を見られる。

 そして離婚しても、モラ夫は「成仏」できない。離婚後も、依然として亭主ヅラで、

「(離婚後も)、たまに食事したり、デートしような」

 などと宣う。離婚したこと自体を理解していないのである。

◆モラ夫バスターな日々

 私は日々、こんなモラ夫たちと対峙している。私が電話した冒頭の夫は、一日も早い面談を要求しつつ、「平日は仕事なので週末が良い」「週末の午後、俺の最寄り駅で面談しよう」などと平然と自分勝手を言う。

 面談では、私はなるべく聞き役に徹する。初回の面談では、離婚条件を示さない。それでも問われれば、婚姻費用(婚姻費用)とは離婚成立までの生活費のこと?の清算、財産分与、慰謝料、養育費等の相場を説明する。

 モラ夫は、妻側の弁護士には何を言っていいと勘違いしているので、離婚条件を話すと平然と、「お前は、金か」などと失礼なことを言う。私はひるまず、「いえ、私は弁護士です」と返すことにしている。

 こうして、私のモラ夫バスターな日々が過ぎていく。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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