伊藤詩織氏勝訴! 海外も注目していた裁判、海外メディアはどう報じたか

伊藤詩織氏勝訴! 海外も注目していた裁判、海外メディアはどう報じたか

Photo by Takashi Aoyama/Getty Images

 ジャーナリストの伊藤詩織氏が、元TBS記者で『総理』の著者として知られる山口敬之氏にレイプされたと1100万円の損害賠償を求めていた裁判で、18日、東京地裁は「酩酊状態で意識がない伊藤さんの同意がないまま性行為に及んだ」と認定し、山口氏に慰謝料330万円の支払いを命じた。

◆世界が注目する#MeTooのシンボル

 日本だけではなく、世界的にも注目されていた今回の訴訟。伊藤氏は先日行われた世界的ロックバンド・U2の来日公演でもスクリーンに映し出されるなど、#MeToo運動の象徴的存在として知られている。

 それだけに、今回の判決は世界中のメディアが報道するところとなった。いち早く報じたメディアのひとつが、同じアジアの『アルジャジーラ』だ。(参照:ALJAZEERA)

 “伊藤氏は安倍晋三首相と近しい接点のある元テレビジャーナリストの山口氏に対して、2015年に仕事の話をしようと夕食に誘ったのち、彼女をレイプしたと訴えており、1100万円を求めていた”

“捜査開始までに何週間もかかった警察は、伊藤氏に対して山口氏を逮捕すると言いながら、引き下がったと彼女は話した”

“(検察が起訴しなかったことに対して)当時野党からは山口氏が安倍氏と近しかったことから、特別扱いをされたのではないかという疑問が出た。菅義偉官房長官は事件に関して不正は一切ないと否定した”

“日本は2017年に強姦の最短刑期を3年から5年に引き上げ、初めて強姦被害者の範囲を男性にまで広げた。しかし、この改正には議論の余地のない要件が残されている。検察側は暴力、もしくは脅迫があったか、「被害者が抵抗することができなかった」ということを証明しなければいけない。研究者や活動家、精神科医からはさらなる法改正を促す声があがっている”

◆事件の様子を再現させられる

 日本の法制度や警察機関に問題があると指摘しているのは、『アルジャジーラ』だけではない。イギリスの『BBC』など、多くのメディアが同じことを報道している。(参照:BBC)

“伊藤詩織氏は2015年に意識を失っている状態で山口敬之氏にレイプされたと訴えた。伊藤氏は人々が滅多に性被害を通報しない国の#MeToo運動のシンボルとなった”

“警察によって捜査は行われたものの、証拠が不足していると打ち切られた。伊藤さんは男性警察官が見ている前で等身大の人形を使って、レイプされた様子を再現させられたと語った。2017年の政府の調査によれば、レイプ被害者のわずか4%しか警察に通報していないという”

 女性警察官の不足や、こうした、まるでセカンドレイプかのようなトラウマを蘇らせるような捜査方法は世界から非難を浴びているだけでなく、女性が助けを求めづらくなってしまう大きな要因ともなっている。

◆沈黙と同調圧力を強いる文化

 SNS上での誹謗中傷だけではなく、一部のメディアからも罵詈雑言を浴び続けた伊藤氏の苦しみは想像すらつかない。ましてや、法的機関すら頼りにならないのでは、声を上げる女性が少ないのも無理はないだろう。アメリカ『CNN』も今回の事件は特異なものではなく、日本社会全体の問題が表出したことを指摘している。(参照:CNN)

“鈴木昭洋裁判長は「行為は彼女の意思に反して行われたもので、彼女には虚偽の訴えを行う動機がない」と判決について話した。「それに対して、山口氏の説明は何度も変化し、信用性に疑念が残る」”

“伊藤が事件を警察に持っていったものの、山口は逮捕されず、刑事訴訟は棄却された。検察は昨年のCNNの取材に対し、個別の件についてはコメントできないと答えている。

“(世間からの)反応は協力的とは程遠かった。彼女は脅迫やソーシャルメディア上での反論を受け、自身と家族の安全を危惧したという。昨年、彼女は日本を離れたと話した”

“彼女が事件を通報すると、警察が法的手続きをしないよう気を削いできたという。また、彼女は屈辱的な現場の再現もさせられたと語った。「私は床に寝転ばなければならず、カメラを持った3〜4人の男性捜査官が私の上に等身大の人形を起き、動かしながら写真を撮りました」”

 さらに「より大きな問題」という見出しで、『BBC』と同じ調査結果を紹介している。

“伊藤の事件は日本では特異なものではない。統計的に日本は性被害の通報件数が極めて低い。2017年の内閣府の調査によれば、およそ13人に一人の女性がレイプされたことがあると答えたという。国立性暴力リソースセンターによると、アメリカでは5人に一人の女性が生涯のうちにレイプ被害に遭うという。

 しかし、日本人女性はレイプされても、警察に話すことは稀だ。同じ2017年の調査によると、性暴力被害者の約3.7%しか警察にレイプを通報しないという。女性たちが表に出ないのにはいくつも理由がある。性被害には汚名がつきまとい、女性は被害に遭ったことを恥じることが多い。日本には伝統的に沈黙の文化があり、足並みを揃えることが求められている”

◆時代遅れな法律

 同じアメリカの『ワシントンポスト』も指摘していることだが、世間の目がレイプ被害者に対して厳しく、現場での捜査にも問題がある以上、まず変えるべきは法律だろう。(参照:The Washington Post)

“日本の時代遅れな強姦罪や、男性が支配する社会で性的不正行為について女性が申し立てるうえでの障害が浮き彫りになった事件”

“警視庁は彼女に起訴させないようにしようとし、調書を取るうえで女性警察官を準備することもできなかった”

 また、タクシー運転手の証言やホテルの監視カメラの映像が残っていること、逮捕令状が出されながら、突然上司からの指示で起訴が取り下げられたことなどについても触れられている。

“山口氏は当時TBSのワシントン支局長で、安倍晋三首相についての本を書いていた。2017年に行われた公聴会で野党議員から起訴の取り上げと山口氏と安倍氏の繋がりに関係があるかと質問があがったが、政府はそれを否定し、起訴するだけの証拠がなかったと答えた”

 奇しくも判決が出たのは、日本がジェンダーギャップ指数121位であると発表された直後だ。伊藤氏が被害を訴えた直後から彼女を貶めるような報道をしたメディアや論客、不可解な動きを見せてきた公的機関は、自分たちがどれだけ彼女を、そして日本を傷つけているか振り返ってほしい。そして、ここ日本では性的被害者に責任を押しつける自分たちがマジョリティでも、世界ではマイノリティだと知るべきだ。

<取材・文・訳/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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