雪道で徐行するトラックの前に割り込むな!トラック運転手を悩ませる冬の苦労

雪道で徐行するトラックの前に割り込むな!トラック運転手を悩ませる冬の苦労

雪道のトラックは運転にも神経をすり減らしている

◆運送業界、冬季の苦労はもちろん「雪」

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回は、トラックドライバーの「ポイ捨て」について指摘したが、今回からは、雪国を走る現役のトラックドライバーから聞いた「彼らの知られざる苦労」と、一般ドライバーにも有効な「雪道走行時の対策」を前編・後編に分けて紹介していきたい。

 これまで「トラックドライバーの知られざる苦労」を数多く紹介してきたが、雪国を走るドライバーにとって、冬はさらにその負担が増える。

 この時期、彼らにとって配送以上に大変になる作業が、「除雪」だ。

 朝、家を出る際にまずしなければならないことは、マイカーを走らせるための除雪。そして、会社に着くと今度はトラックを出庫させるための除雪が待っている。

 箱車(荷台が箱型のトラック)の場合は、屋根の雪下ろしも必須となる。積もってから時間が経ち、氷の塊のようになった雪は、そのまま放置して走ると後続車に凶器となって襲い掛かることがあるからだ。

 一方、平ボディ(荷台が板状のトラック)は荷台に屋根がないため、荷積みをする前にやはり荷台の雪下ろしが必要になる。事前に幌(ほろ)と呼ばれるシートを掛けておいても、積もった雪の重さで垂れ下がるため効果はほとんどないに等しい。

 さらに、降雪の多い日は配送を終えて自社へ帰庫した際も、朝から降り続いた雪が駐車場にたんまり積もっており、トラックを駐車するために再度除雪する必要があるのだ。

◆当然運転も一層神経を使うことに

 彼らの苦労は、除雪作業だけではない。無論、走り方や危険度も非降雪地域とは大きく違うため、運転時も常に神経を尖らせておく必要がある。

 中でも雪国のトラックドライバーが口を揃えてタブーとするのが、「急」のつく運転だ。

 雪道や凍結した路面での「急発進」「急ブレーキ」「急ハンドル」などは、コントロール不能に直結する。

 こうした現象は乗用車にも同じことが言えるが、トラックの場合は、後ろに大量の荷物を積んでいるため、一度スリップすると立て直しが利かなくなり、起こした事故も規模が大きくなりやすい。

 そのため雪道を走るトラックドライバーは、大きな動力を要する「ゼロ発進(完全停止からの発進)」を避けるべく、赤信号が道の先に見えると、ゆっくりとしたスピードで最徐行することがある。が、こうした事情を知らない乗用車が、その大きく空いた車間に急に入り込んでくることがあり、その度にヤキモキすると彼らは嘆く。

 雪道でクルマをコントロール不能にさせるものには、その他に「轍(わだち)」がある。

 一見、轍に沿えば走りやすいと思いがちだが、その溝に深さがあるとハンドルを取られるだけでなく、その路面が凍り固まっていれば、スリップ状態から延々抜け出せなくなるのだ。

 こうした凸凹な道を作る要因として、もう1つ恐れられているのが「マンホール」だ。

 マンホールの上には雪が積もりにくい。その地下には生活排水が通っており、路面温度が他の場所よりも高いからだ。

 そのため、マンホール部分は雪の積もった地面と大きな段差ができ、そこにタイヤが突然落ちたりハマったりすると、クルマが壊れるほどの衝撃が生じるとともに、やはり抜け出せなくなるという。

 トラックは、こうした凸凹を大変に嫌う。積んだ荷物を破損させる恐れがあるためだ。が、そんなトラックの中でも凸凹道に弱いのが、けん引車であるトレーラーである。

 トレーラーは運転席(トラクター部)と荷台(トレーラー部)がそれぞれ独立しているため、ハンドルから伝わる感覚だけではクルマを完全にコントロールできない。トレーラー部のタイヤが傾斜や轍に取られれば、運転席もろとも横転する恐れが非常に高いのだ。

 そんな凸凹道を避けるべく、積雪や降雪が激しい時、トラックドライバーはどんなに混んでいても幹線道路をなるべく使うようにするという意見もあった。

 幹線道路には、塩化カルシウムでできた「凍結防止剤」が撒かれるなどの対策がなされていることが多く、比較的積雪が少ない。そのため、抜け道や路地などよりは雪にハマるリスクが減るのだ。

◆ドライバーの視界を防ぐ雪

 雪国での運転で恐ろしいのは、道路のコンディションだけではない。積雪による「視界不良」も大変怖い。

 吹雪などによって視界が真っ白になると方向感覚が失われる「ホワイトアウト」をはじめ、雪道ではとにかく視界が悪くなる。

 そんな中、クルマ側の原因として多く聞かれたのが、「ライトの周りの雪が溶けない」という声だった。

 昨今、その省電力性能と長寿命からクルマのヘッドライトに多く採用されているLEDライトは、HIDやハロゲンと違い「熱」をほとんど発しない。そのため、ライト前に積もった雪が溶けず、点灯しても前が全く見えなくなることがあるのだ。

 ゆえに雪国には、フォグランプをハロゲンにしているドライバーが多いというが、光量はやはりヘッドライトよりも劣るという。

 こうした問題はヘッドライトだけではなく、テールランプにも同じことが起きる。

 先のホワイトアウトなどが起きた際は、視界は真っ白。車線どころか、歩道と車道の境すら分からなくなる。そんな中、前方車両のテールランプが雪に覆われていれば、もはや方向感覚は崩壊状態となるのだ。

 

 もう1つ、彼らにとって脅威になるのが「雪に慣れていないクルマ」だ。

 アイスバーンで急ブレーキを踏んではスリップしているクルマが前後左右に存在すると、追突されないかという不安に襲われる。

 特に北陸・中部地方の内陸あたりは「雪が降っていない」「凍結していない」と思われることが多く、ノーマルタイヤで訪れる乗用車が目立つという声もあった。そのため、地元以外のナンバーを見ると、距離を取って走るというドライバーも少なくない。

◆雪国のトラック車内に常備されているもの

 雪国は、室外はもちろん車内も大変寒く、クルマのエアコンの暖房ではなかなか温まらない。また、詳しくは後編で述べるが、降雪時にクルマのエンジンを掛けたまま長時間車内で待機すると、マフラーの排気口が雪で塞がり、排ガスが車内に入り込んで一酸化炭素中毒を起こす危険性も生じる。

 そのため雪国では、エンジンを切っても車内を温められる「FFヒーター」の取り付け率が高く、特に長時間車内待機を余儀なくされるトラックドライバーには愛用者が多い。

 また、こちらも後編で詳述するが、トラックドライバーが常備しているものの中でも必需品となっているものが、「非常食」だ。

 立ち往生した際、近くにコンビニやスーパーがあるとも限らない(あっても豪雪時は開いていないこともある)。そのため、数日分の食料と飲み物は常に用意しておくというドライバーが大変多かった。

 もう1つ立ち往生対策として、どんなに短い距離を走行する場合でも、燃料は常に満タンにしておくというのも大事だそうだ。中には、燃料が3分の1の状態で30分ほどの場所へ向かったところ通行止めに遭い、3日間閉じ込められたという経験を話してくれたドライバーもいた。

 生活インフラの1つでもある物流。こうした悪天候や災害に見舞われた地域に目を向けると、毎度つくづく思うのが、物資が必要な場所ほど、その道のりが険しいことだ。そして、我々の生活が滞りなく送れている陰には、見知らぬ人たちのこうした努力や苦労があることを改めて感じる。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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