百貨店内で「通販サイトに誘導」!?――「百貨店アパレル大量閉店」でECとの融合めざす地方百貨店

百貨店内で「通販サイトに誘導」!?――「百貨店アパレル大量閉店」でECとの融合めざす地方百貨店

連絡通路に設けられたDaaSのポップアップストア。 「ショールーミングショップ化」は商品供給が十分でない地方百貨店の切り札となるか?

◆百貨店内に「通販サイト」のポップアップストアが登場!?

 9月に全館改装を終えた大分県別府市の百貨店・トキハ別府店の連絡通路に登場したのは日本初となる「ストライプデパートメント」の百貨店向けネット通販「DaaS」(Department EC as a Service)ポップアップストア。ストライプデパートメントは「earth music&ecology」などで知られるストライプインターナショナル社(岡山市)が運営する百貨店向けアパレルを中心としたネット通販サイトで、この9月よりトキハとの提携を決めたばかりだ。

 しかし、なぜ百貨店内で百貨店商品の通販サイトの宣伝を行わないといけないのか――その背景には地方百貨店ならではの苦悩がある。

◆「百貨店アパレル撤退」!――穴を埋めるのは?

「百貨店アパレル不況」が叫ばれる昨今、いわゆる百貨店向けアパレル大手として知られる「オンワードホールディングス」、「ワールド」、「TSIホールディングス」(東京スタイルとサンエー・インターナショナルの統合会社)などはいずれも店舗整理を進めているが、これにより真っ先に閉店となったのが、売上高・店舗規模が小さく物流コストも高い地方百貨店内にある店であった。

 トキハ別府店でも約10年ほどのあいだに多くのブランドが姿を消しており、とくにオンワード系列の店舗は全て撤退。トキハ別府店は全館改装を終えたばかりで、改装後は客数が大幅に増加したことでも話題となっているが、婦人服売場の百貨店向けブランドは殆ど「ミセス向け」のみで、同店にかつて出店していた「組曲」「23区」など「20代〜30代女性向け百貨店アパレル」の穴を埋めるべく現在出店しているのは別の百貨店向けブランドではなく「テナント」として出店しているワールドの「grove」やストライプの「アメリカンホリック」、そして「無印良品」など、駅ビルやイオンなどのショッピングセンターでお馴染みとなった店舗たちだ。

 これらのテナントはいずれも別府市唯一の店舗であり若者にも人気を集めこととなった一方で、多くの百貨店向けアパレルの商品は、隣接する大分市、もしくは個性的な商品になると福岡市の百貨店まで買いに行く人もいるという状況であった。

◆地方店では陳列できない商品を補完できる

 こうした状況に目を付けたのがストライプであった。ストライプは地方百貨店の多くが百貨店商材の充実を図ることができないばかりか独自のECサイト整備も不十分であることに目を付け、子会社であるストライプデパートメント運営の百貨店向けネット通販「DaaS」(Department EC as a Service)を開発。ストライプデパートメントは「DaaS」のシステムを用いて、百貨店ごとにカスタマイズされた「各百貨店独自の百貨店アパレルを中心としたネット通販サイト」を運営する。各百貨店独自の通販サイトといえども、百貨店側のイニシャルコスト、ランニングコストはともに無料。売上はストライプデパートメント側に入るが、百貨店側には登録者数と売り上げに応じた手数料が入る仕組みだ。

 この「DaaS」を用いた通販サイトでは百貨店向けアパレルを中心に約1000ブランドを取り扱う。地方百貨店からの撤退が続く百貨店向けブランドはもちろん、人気のため地方まで届かない商品、地方では売り上げが見込めずに入荷されないような高級品・個性的な商品の販売もおこなわれている。地方百貨店にとってDaaSを用いた通販サイトの導入は、地方店では陳列することができないような商品を補完する役割を兼ねることになる、という訳だ。

 トキハ別府店のポップアップショップでは、普段は同店で販売されていないクロエやマルニのバッグ、サルトルのブーツなどが陳列され、興味深そうに眺める買い物客の姿が見かけられた。このポップアップショップはあくまでも「ショールーミングショップ」。陳列されている商品もサイズやカラーバリエーションなどを豊富に取り揃えている訳ではなく、客はDaaSを用いたトキハのネット通販を通じて自分にあった商品を選ぶかたちを採る。

◆ECデパートは「百貨店が消えた街」の代替となるか

 このほか、ストライプデパートメントは金沢市に本店を置く百貨店「大和」との提携も発表している。

 大和は2010年まで新潟、富山、石川の3県に7つの大型店と複数の中〜小型店を構えていたものの、現在の店舗は金沢店、富山店の2店舗と小型店のみに縮小。大和はDaaSを用いた通販サイトを導入することで、このような百貨店が撤退した街の顧客に対しても「(DaaSを用いた)大和のECサイトで百貨店ブランドのアパレルを買うことができる」ということをアピールしていく狙いもあろう。

 大和の小型店(サテライトショップやギフトサロン)のうち、一部はかつて大型百貨店があった都市でも展開されている。今後は、こうした小型店にポップアップストアを置き、かつての百貨店の顧客をECサイトへと誘導する試みもおこなわれるかも知れない。

 地方を中心に撤退を進める百貨店アパレルと、その穴埋めに苦悩する地方百貨店、そしてそれを商機と捉えて進化を遂げるECサイト。

実店舗にとってはライバルであったはずのECサイトが店舗の強い味方となるのかどうか、そして「実店舗に行ってわざわざ通販で買う」という手間が消費者に受け入れられるのか――今後の「成果」が注目される。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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