コーチング理論書やビジネススキル本をいくら読んでもスキルが上がらないのはなぜなのか?

コーチング理論書やビジネススキル本をいくら読んでもスキルが上がらないのはなぜなのか?

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 筆者はリーダーシップスキルの解説本をたくさん読んだが、スキル発揮できない……という相談を受けることが多い。最も多いのが、コーチング理論を書籍や研修で勉強したが、コーチングができないというものだ。

◆理論を学んでもスキル発揮できない

 しかし、考えてみれば当然だ。例えば、野球がうまくなりたいと思って、野球理論の本を読む人がいるだろうか。もちろん、中にはいるかもしれないが、多くの人は、野球の練習をするだろう。

 ピアノを上手に弾けるようになりたいと思って、ピアノの解説本を読む人がいるだろうか。ほとんどの人は、ピアノを弾き始めることから始める。

 にもかかわらず、リーダーシップスキル、ビジネススキル領域になると、どうして書籍を読んだり、理論を勉強することから入ってしまうのだろう。スキルを実践する場面は、身の回りに常にあるにもかかわらずだ。

 それだけ、企業内研修が、理論偏重になっていると思わざるをえない。理論が不要だとは言わない。しかし、理論以上に、実践の場面でスキルを向上させることが必要だ。

 それも、野球の上達のために、素振りやキャッチボールから始めるように、ピアノの上達のために、基礎的な指の動かし方を身につけることから始めるように、ビジネススキルも、コアスキルを反復演習して修得することが不可欠だ。

◆コアスキルを見極めて身につける

 例えば、プレゼンテーションスキルを向上させたいと思ったとしよう。一口にプレゼンテーションスキルといっても、投影資料の作り方、表現力の発揮の仕方、話の構成の仕方、発声の仕方、動作の発揮の仕方など、さまざまなスキルが必要だ。これを一から十まで解説して、あれもこれも全て身につけてプレゼンしてくださいと言っても、出来る人は一人もいないと、20年来の演習経験をふまえて断言できる。

 あれもこれも身につけようとするから、必要なことは頭ではわかっても、どう行動するか、どのように話法で発揮するかというが見当つかないということになってしまうのだ。

 そこで、身につけたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを見極める。コアスキルとは、そのコアスキルさえ身につければ、他のスキルはより容易に身につけやすくなるというスキルだ。コアスキルは単純であれば単純であるほどよい。単純であるほど、身につけやすいからだ。数回、反復演習すれば、身につく程度に分解するとよい。

 ひとつのコアスキルを身につけることができたら、そのスキルを発揮するのに、あれこれ考えたり、意識したりする必要がなくなる。自然と発揮できるようになる。そうなったら、そのコアスキルに関連する次のスキルを同じように修得する。そうなると、コアスキル同士を組み合わせたり、連動させて発揮しやすくなる。実践の場面でのスキル発揮は、ほとんどがコアスキルの組み合わせや連動なので、実践で発揮しやすくなるというわけだ。

◆たった2時間でコーチングができるように

 このコアスキル、プレゼンテーションスキルでは、相手を何秒見つめ続けてプレゼンするかという、アイコンタクトの長さだ。トップダウンの指示・命令ではなく、コーチングによる巻き込み型のリーダーシップを発揮するためのコアスキルは、質問のスキルだ。それも、詳しくは別の機会にゆずるが、5つの質問さえできるようになれば、コーチングが発揮できるようになる。

 ここで紹介したコアスキルは、理屈ではない。理屈の説明を一切せず、頭ではわかっていなくても、15分程度の数回の反復演習でアイコンタクトの長さをコントロールできるようになり、2時間集中的に演習を繰り返せば、相当程度、プレゼンテーション表現力が高まる。同じく15分程度で質問のスキルを発揮できるようになり、2時間の反復演習でコーチングが実際に発揮できるようになる。

 この方法は、過去20年来の私の演習プログラム参加者が、スキルを修得し、実践の場面でスキル発揮できるようになった方法だ。むしろ理屈は無用で無力なのだ。

◆アクティブリスニングを学ぶには、まず話しやすい場づくりを

質問:コーチングが実践できない

 一方的な面談にならないようにするために、コーチングが役に立つと言われ、コーチング理論の書籍を読んだり、コーチング研修に参加したりしました。しかし理論や理屈はわかったように思いますが、実際に実践する方法の見当がつきません。

 例えば、アクティブリスニング(傾聴)をすることが大事だと多くの書籍に書かれています。そもそもアクティブリスニングをするためには、相手に話してもらわなければならないわけですが、相手が話すという状態になりません。どうしたらよいのでしょうか?

回答:コアスキルを発揮する

 上司が部下に対して、改善点を指摘するだけで、一方的に話している面談では、そもそも相手が話していないのでアクティブリスニングを実行することができません。

 アクティブリスニングをするためには、相手に話してもらうためのスキルを発揮する、相手に話してもらうスキルを発揮するためには、相手が話しやすい場づくりをするスキルを発揮する…… というように、実践するために必要なスキルを分解していって、コアになるスキルを発揮するようになる必要があります。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第168回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

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