韓国公営放送MBC、「週刊ポスト」が徴用工証言を歪曲報道と批判。真相はいかに?

韓国公営放送MBC、「週刊ポスト」が徴用工証言を歪曲報道と批判。真相はいかに?

MBCで放映されたニュース via MBC YouTube CH

◆韓国公営放送が日本の「週刊ポスト」記事を名指しで批判

 韓国の公営放送局であるMBCが、「週刊ポスト」に掲載された記事が完全なる捏造報道であると批判する番組を報道した。

 問題となっているのは、12月9日に発売された「週刊ポスト2019年12月20・27日号」の中で、「91歳の元徴用工『日本からの金は要らない』韓国・文在寅政権が隠す肉声を入手!」という記事。ジャーナリストの赤石晋一朗氏が現地取材を行い、元徴用工らの証言を得たという。

「週刊ポスト」は元徴用工の証言をどのように得、また韓国・MBC放送はそれをどのように報じたのか?

◆「週刊ポスト」は元徴用工の証言をどう書いたのか?

 週刊ポストの記事によれば、元徴用工であった崔漢永氏(91)は、「日本人のほうが韓国人より、いい人が多かったと私は考えています。私が炭鉱で働いていた時代、日本人にはとても親切にされた思い出があります」と答えたという。18歳と年を偽り、15歳で日本に渡ってきた崔氏は、福岡県飯塚市の三菱炭鉱で働いた。記事は崔氏の証言を次のように続けた。

「私は坑道を作る仕事を主にしていました。現場では日本人と朝鮮人が一緒に働いていた。休みは月に1日か2日でしたが、日本人も朝鮮人も同じ労働条件で、同じ賃金をもらっていました。朝鮮人だからと差別や暴行を受けるということもなかった」(同記事より)

 崔氏の証言は更に続く。

「(元徴用工が)裁判を起こしても何も得られるものはないよ。この高齢でお金を手にしてもしょうがないだろう。私はお金もいらないし、補償をして欲しいとも思わない」

 記事は崔氏のこのような証言を列記しながら、「慰謝料ありきで徴用工問題を語る文在寅政権に、静かに異を唱えているようにも思えた」とインタビューを結ぶ。

 記事では崔氏の他に3名の元徴用工のインタビューを行い、「虐待した日本人はいなかった」という証言を掲載している。

◆韓国・MBC放送の取材では全く反対の証言が

 韓国・MBC放送は「週刊ポスト」の記事を受け、「証言」の当事者である崔漢永氏にインタビューを行っている。

 以下は、韓国・MBC放送の取材によるもの。

 ”問題となった記事は、日本の大手出版社が出版する「週刊ポスト」に掲載された。

 文在寅政府が隠す、徴用被害者たちの肉声を入手したとの触れ込みで、4名の実名インタビューを掲載したが、「虐待した日本人はいなかった」、「日本人が、韓国人よりも良かった」と言ったという記事。「既に高齢で、金銭的な補償は望んでいない」という信じ難い証言も登場する。

(週刊ポストの)取材チームがインタビューをしたという、1928年生、今年92歳になる崔漢永氏に会ったところ、先月末に開かれた「強制徴用関連の懇談会」に日本の記者が突然訪れインタビューを求められたという。

(崔漢永氏のインタビュー映像)「私一人でご飯を食べていたら、(日本の記者が)福祉会館に自動車まで持ってきて、補償金はどれくらい貰ったのかを聞き、私を車に乗せ自宅まで…」”

 放送では崔氏のインタビューを続ける。

 以下は、崔氏の証言。崔氏の声は憤っている。

”「日当はその日の飯代にしかならなかった。取っつかまって3年間も炭鉱で働かされたのに、補償をされないなんて話にもならない。何故、補償をもらわない? 謝罪も必要だし、被害補償も必要だ」”

 崔氏の証言は、週刊ポストのそれとは全くもって正反対だ。

 放送には、そのインタビューに付き添った(とオンエアでは紹介されている)、元徴用工の息子でもあり、韓国で強制徴用被害者連合会の代表も務めているチャン氏の「(日本が)『補償も謝罪も必要ない』と歪曲して報道すれば、徴用被害者たちの声も弱化させることが出来ると思っている」というコメントも添えられている。

 韓国の強制徴用関連団体は、被害者たちの名誉を著しく棄損したとして法的な手続きを進めるとともに、駐韓日本大使館にも抗議訪問するという。

◆「ポスト」と「MBC」、どちらが真実か?

 かつて「週刊ポスト」は、「韓国なんて要らない」という特集記事を掲載し、「10人に1人は治療が必要−怒りを制御できない『韓国人という病理』」に代表されるバッシングを超えた韓国ヘイト記事は、内外の著名人からの批判を浴びている。(※同記事については謝罪文を公表)

 今回の元徴用工の証言も、韓国MBC放送のインタビューが真実であれば、歪曲どころの騒ぎではない。完全なる捏造記事であり、その根底には悪意が蠢いている。

 しかし一方で、証言者の代表でもある崔氏が週刊ポストとMBC双方に異なる証言をしたとの推測も出来る。つまり、「週刊ポスト」に対する証言も崔氏の言葉であるが、MBCの取材では違うことを言ったという可能性も否定できない。

 記事を執筆した赤石氏は、自身のTwitterで以下のようにツイートしている。

”韓国MBCのニュース番組で私の記事が糾弾されたようです。証言を真摯に伝えたつもりです。だが韓国メディアでは証言者の一人が違うと言い出したようで。現場には存在しなかった同席者まで現れたようです。”(赤石氏のツイートより)

”一部でご心配をおかけしています、韓国MBCの件ですが。取材は某テレビ局のカメラも入っており、ダブルチェックも出来ていたと思っています。なぜ、あんな形になったのか。詳しい経緯については、いつか書きたいと思っています。”(同)

 赤石氏がいう「現場には存在しなかった」人物はMBCの放送分では先述した通り「付き添った」とされており、この点でも双方の証言が食い違っている。

 「週刊ポスト」の記事と、MBC放送の取材と、どちらの証言が真実なのか。

 インタビュー時の音声も間違いなく録音もしているのだろう。赤石氏が言うように「某テレビ局のカメラ」が入っているのであれば、動画も押さえている可能性すらある。

◆「記録に基づいて、正確に記事にした」

 そこで、週刊ポスト編集部に本件について取材を申し込むと次のような回答を頂いた。

「インタビュー取材の記録に基づいて、正確に記事にしたものです」

 同誌編集部では記事化にあたり、取材の音声データも確認し、通訳もダブルチェックをしたという。

 筆者も、音声データ自体を確認したかったが、それはできなかった。しかし、赤石氏がいう「某テレビ局」は、テレビ西日本のことであり、12月16〜21日にかけて放映された「ももち浜ストア特報ライブ」及び「福岡ニュースファイルCUBE」内のシリーズ企画「韓国人のホンネ」で流れたことが判明したため、現在、編集部ではテレビ西日本への取材と、放映された映像の入手を試みている。

 というのも、筆者がMBCの動画で見た限り、崔氏の韓国語は非常に訛りがきつく、韓国語ネイティブでも聞き取りが難しいものだと感じたからだ。とすれば、証言の食い違いや悪意による歪曲ではなく、「翻訳の誤り」という可能性も否めない。そのため、特に「日本人のほうが韓国人より、いい人が多かったと私は考えています。私が炭鉱で働いていた時代、日本人にはとても親切にされた思い出があります」という箇所に関して、筆者自身の耳で実際に確認したいと思っているのだ。

 ちなみに、テレビ西日本のオンエアされた動画は未見だが、同局では文字のニュースとして「初証言 元徴用工 福岡での炭鉱労働を語る」という記事を配信している。

 同記事では、崔氏の証言は週刊ポストのものとだいたい同じだが、他にも元徴用工の父親が日本人から受けた激しい暴力について語る徴用工遺族の声を紹介し、”同じ時代に、同じ徴用工として日本に渡っても仕事をする場所や、出会う人間によって、体験は大きく異なることは当然ある。/どちらが正しいとか、どちらが真実という問題ではない。/体験者や関係者が語る様々な証言に、偏見を持たずにしっかりと耳を傾けて、相手を理解しようと努力することが、長いバトンを受け継いで、今、戦後を生きている私たちの使命ではないだろうか。”と結んでいる。

<文/安達夕>

※当初配信時、「国営」との表記でしたが、正確には「公営」の誤りでした。お詫びして訂正します(2019/12/26 9:24)

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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