民族派右翼青年が「反差別」に立ち上がったワケ。「愛国とは日本の負の歴史を背負うこと」

民族派右翼青年が「反差別」に立ち上がったワケ。「愛国とは日本の負の歴史を背負うこと」

Photo by Richard Atrero de Guzman/NurPhoto via Getty Images

 日韓関係が冷え込み、ネットなどで平然とヘイトスピーチがまかり通っている昨今だが、その一方で神奈川県川崎市が全国に先駆けてヘイトスピーチ禁止条例を可決するなど、日本でも「ヘイトスピーチ」というものの認識が高まりつつある。

 そんな中、民族派の立場から一貫して反差別カウンター活動を行ってきた山口祐二郎氏が、その活動の記録である新刊『ネット右翼vs.反差別カウンター  愛国とは日本の負の歴史を背負うことだ』(にんげん出版)を上梓した。

『月刊日本 2020年1月号』に掲載された山口氏へのインタビューを転載、紹介したい。

◆体を張ってレイシストを食い止める

―― 山口さんの新著『ネット右翼vs.反差別カウンター』は、在日特権を許さない市民の会(在特会)などと闘ってきた山口さんの活動記録になっています。なぜレイシストやヘイトスピーチと闘おうと考えたのですか。

山口祐二郎氏(以下、山口):私はもともと新右翼界隈で活動していたのですが、その中でヘイトスピーチを聞いたことはほとんどありません。むしろ「ああいうやり方はよくない」、「右翼の品格ではない」といったように、在特会に批判的な人たちのほうが多かったと思います。

 しかしその一方で、一緒に活動していた仲間の中から、在特会に引き寄せられてしまう人も出てきました。彼らは既存の右翼活動に限界を感じ、在特会に新たな可能性を見出すようになったのでしょう。

 右翼活動に疑問を覚えていたという点では、私も一緒です。毎日のように街頭演説をしても、聴衆はまったくおらず、ヤジを飛ばされるくらいで、効果が感じられないということを何度も経験しました。

 しかし、私は韓国人や在日コリアンの人たちを差別しても日本が良くなるとは思いません。そもそも私が右翼業界に入ったのは、苦しんでいる人たちを助けられるような人間になりたいと思ったからです。そのため、なんとしてもレイシストやヘイトスピーチと闘わなければならないと考えたのです。

◆「どっちもどっち」論の的外れさ

―― 山口さんは仲間たちとともに在特会のヘイトスピーチを体を張って食い止める「反差別カウンター活動」を始めました。なぜこうした形の活動を始めたのですか。

山口:一番のきっかけは、在特会が新大久保のコリアンタウンでヘイトスピーチを行っていたことです。彼らはヘイトデモのあと、「お散歩」と称して商店街を練り歩き、韓国人の店員に対して暴言を吐いたり唾を飛ばすなど、嫌がらせ行為を繰り返していました。

 彼らに対して、いくら口頭で「やめろ」と言ってみたり、言論で批判しても、その行動を止めることはできません。嫌がらせをやめさせるには物理的に止めるしかありません。反差別カウンターをしたのはそのためです。

 もっとも、私は韓国批判自体をやめるべきだと言っているのではありません。しかし、韓国を批判したいのであれば、たとえば韓国大使館に行ってしかるべき抗議をすべきです。一般の韓国人や在日コリアンに嫌がらせするのはおかしいと思います。

―― 反差別カウンターは在特会と激しくぶつかっていたので、「どっちもどっちだ」と批判されることも多かったのではないでしょうか。

山口:在日コリアンにヘイトスピーチをするレイシストと、それを阻止する反差別カウンターの思想は、明確に異なります。これはいじめの問題について考えればわかると思います。目の前でいじめが行われているとき、それを止めに入って相手と口論になったり、罵倒の応酬になった場合、どっちもどっちと言えるでしょうか。

 また、私は右翼とは汚れ役になって世の中を良くする義賊的な存在だと考えているので、周りから批判されてもそれほど気になりませんでした。自分たちへの批判よりも、とにかく在日コリアンに対するヘイトスピーチを食い止めることを優先しました。

◆法律がなければヘイトスピーチを阻止できない悔しさ

―― 山口さんは反差別カウンターのような現場の活動を行うと同時に、自民党を含む国会議員への働きかけも行っています。

山口:現場の活動はとても重要ですが、限界もあります。2016年にヘイトスピーチ解消法が施行されましたが、これは自民党の西田昌司議員や立憲民主党の有田芳生議員の活動によるところが大きかったと思います。在特会がこれまでのように街頭で活動できなくなったのも、ヘイトスピーチ解消法のおかげです。

 また、私は日韓、日朝問題に関して自民党議員と意見交換したことがありますが、日韓、日朝関係を改善する上でも国会議員にしかできないことがあります。実際に政治家への働きかけによって事態が改善したと実感できたこともあるので、今後も政治家との対話を積極的に行っていきたいと思っています。

―― ヘイトスピーチ解消法はヘイトスピーチを取り締まる上で重要な法律ですが、その一方で表現の自由や言論の自由の弾圧につながる恐れもあります。

山口:ヘイトスピーチは「スピーチ」という名前がついているので勘違いされやすいのですが、実際はヘイトクライム(差別的憎悪犯罪)の一形態であり、明確な犯罪行為です。たとえば、他人に対して「ぶち殺すぞ」と言えば、表現の自由ではなく、脅迫になります。それと一緒の考え方です。

 もちろんヘイトスピーチ解消法が拡大解釈され、言論の自由が弾圧される恐れがあることは否定しません。実際、国会でも議論になりましたが「米軍は日本から出ていけ」と抗議することもヘイトスピーチと見なされてしまう可能性があります。

 私自身、理想としてはヘイトスピーチ解消法はないほうがいいと思っています。しかし、現在の日本は、法律がなければヘイトスピーチを阻止できないような社会になってしまっています。これは非常に恥ずかしいことですし、日本社会の道徳心によってヘイトスピーチを食い止められなかったことには悔しさも感じています。

 いま川崎市で議論されているヘイトスピーチ禁止条例では、実効性を確保するために刑事罰が盛り込まれることが検討されています。今後はこうした条例を全国に広めていくと同時に、もしこれが悪い方向に拡大解釈されたときにはしっかりと是正していくことが重要になると思います。

―― 今後はどのような活動に取り組んでいく予定ですか。

山口:最近勉強しているのは朝鮮人の遺骨の問題です。終戦直後に日本海軍の「浮島丸」が米軍の機雷によって沈没し、朝鮮人の乗組員を含む多くの人たちが亡くなるという事件がありました。このときの犠牲者の遺骨は目黒区にある祐天寺に安置されています。

 日本は韓国とは国交があるため、韓国には一部遺骨を返すことができましたが、北朝鮮には全く返還できていません。こうした問題に取り組んでいきたいと思っています。

(12月5日、聞き手・構成 中村友哉)

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

関連記事(外部サイト)