若い世代にもモラハラ夫、およびその予備軍は大量に存在する<モラ夫バスターな日々42>

若い世代にもモラハラ夫、およびその予備軍は大量に存在する<モラ夫バスターな日々42>

漫画/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<42>

「3か月も、我が子と会ってないんです」とアラサーの夫は、妻の代理人である私に不満を述べた。

 年下の妻の話では、彼は、ソフト・モラ夫で、行動監視が厳しく、スーパーに行くことすら彼の許可が必要だった。生活費は、一日あたり1000円以下とされ、月末にレシートと引き換えに現金を手渡された。妻は、家事、育児を1人でこなし、夫は全く手伝わなかった。そもそも夫は、子どもには一切関心がなかった。夜泣きすると、夫が怒るので、子どもを抱えて夜の公園をさまよったという。

 若い世代はモラ男が減っているのではないか。大学の教員や、若い世代(20代、30代)の方からときどき、訊かれる。

 男子学生を見ても、まわりの夫婦を見渡しても、モラ男・モラ夫は少ないとコメントが付くことが多い。確かに、離婚弁護士としての実務経験からは、若い世代の男性では、大声で怒鳴り、怒るハード・モラ夫、DV夫は減ってきているように思う。他方、ソフト・モラ夫はむしろ増えている。

◆「男としての自信」がモラに転じる幼稚さ

 しかし、まずモラスイッチの入る前のモラ夫予備軍は、正常男子/非モラに擬態するので、表面的に若い世代にモラ男が少なく見えるのは当たり前である。

 例えば、ある男性は、40代半ばに部長に昇進して年収が1000万円を超えて、モラスイッチが入った。彼は、昇進以降、多少物事を言い過ぎるようになったことを認めている。(なお、妻からみると、「多少」ではなく「常に」であり、彼の認知には歪みがある)。そして、言い過ぎる(つまりモラ)の理由として、昇進が「男としての自信」につながったからと述べた。

 モラ夫になる原因は、社会化の過程で人格の基礎部分に内在化されたモラ文化にある。なかでも、その中核は、男尊女卑と性別役割分担である。

 口先で男女平等を言ったとしても、人格の基礎部分に性別役割分担意識があれば、モラ夫予備軍と考えてよい。特に、夫婦フルタイムでの共働きで、家事、育児を平等に担当しない男性は、性別役割分担意識の下、共働きであることを無視して、家事育児は女の責任と考えているはずだ。

 つまり、既にモラ夫か、もしくはモラ夫予備軍なのである。

◆共働き夫婦の8割が「家事は妻がほとんど負担」

 株式会社マクロミルの調査によると、フルタイムでの共働きは、若い世代の方が多い。共働き夫婦の約半数は、家事分担の理想を「夫50%、妻50%」と回答している。

 ところが、実際の分担比率で最も多いのは、「夫10%、妻90%」である。妻の家事分担率の方が高い夫婦は約8割、妻が80%以上の夫婦が約半数に及ぶ。

(参照:共働き夫婦の家事分担調査。夫婦平等という理想は進む中、現実は後退|HONOTE by マクロミル)

 つまり男女平等は、口先だけで、家事の分担は、妻の約10分の1と申し訳程度に過ぎないのである。

 さて、総務省の統計によると、高齢の男性と若年の男性の家事を担当する時間は、むしろ高齢者のほうが多い。高齢者は仕事を離れているとはいえ、女性については、若年者の方が高齢者よりも家事担当時間が長いことを考えると、男性の若年者が家事をしない言い訳はできない。つまり若年者は、高齢者と比較しても、ダメダメなのである。

 そして、統計によると、共働き世帯での女性の家事分担率は平成18年で90%とされ、妻はフルタイムでもほぼワンオペで家事、育児を担当し、男性は殆んど担当していない。

(参照:共働き世帯における妻の家事の負担割合の推移|総務省統計局)

 個別案件を多数扱ってきた離婚弁護士としての経験からも、統計からも、若い世代について、モラ文化が改善しているとは到底言えない。

◆若い世代は、モラ文化を脱却できるか

 冒頭の若い夫に戻ろう。彼は、妻が子を連れて出て行った理由がわからないと言う。実家や友人から孤立させ、自宅マンションに幽閉し、ワンオペ家事、育児をさせ、経済的モラを行ってきたことについて、全く反省がないのだ。妻が出て行った上記のモラを具体的に説明したが、彼は、自己弁護の屁理屈を繰り返し、モラは言いがかりと反論した。

 その後、子どもに会っていないことを同情した妻が、面会交流を実施した。しかし夫は子どもを抱き上げず、一言声をかけただけで、子どもとの「交流」は30秒もなかった。面会交流の残りの時間はもっぱら、出て行った妻に「帰宅」を促す説教にあてられた。説教は、自らを優越した存在と認識しているからこそ行われるものである。つまり彼は、モラ夫である。

 日本のモラ文化、それによって引き起こされている日本の衰退を心から憂慮している1人として、若い世代には是非、モラ文化からの脱却を期待したい。期待したいが、楽観できる材料が見当たらない。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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