夫婦間の「わかってくれて当然」はもうやめた。夫婦インタビューで良好な関係を築く

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◆価値観が違う2人が、仲良くいるために

 2019年12月中旬、私と妻は5回目の結婚記念日を迎えました。

 妻と一緒にいるのは楽しいし、ずっと一緒にいたいと思います。しかし生まれも育ちも何もかも違う人間と一緒に暮らすって、かなりハード。自分の当たり前が、相手にとってそうとは限りません。同じ景色を見ているのに、感じ方が全然違っていて驚くことばかりです。

 「大好きなこの人と一緒にいたい!」と純粋な気持ちでスタートした結婚生活が、いつしか苦痛の日々に変わってしまう。そうなるのは、無理からぬことだと感じることすらあります。

 価値観が違うふたりだからこそ、仲良くいるためには努力がいる。妻も僕もそう思っていて、普段の会話では自分の気持ちや考えを話し合うようにしています。

 「なんだ、たかが話し合いか……」と感じるかもしれませんが、夫婦に限らず友人でも職場の人でも、異なる考えや価値観を持った人同士が協調するには、相手を知ることが必要なはず。妻と私が心がけている話し合い方をご紹介します。

◆衛生観念に金銭感覚、時間の使い方、なんでこんなに違うの?

 妻と出会ったのは、当時お互いに住んでいた街にある喫茶店でした。顔見知りから仲の良い友人となり、その後交際をスタートしました。付き合って1か月が経ったころ、僕らは同棲を始めます。大好きな人との生活は楽しい反面、予想もしない面倒くささもありました。

 私たちで顕著だったのは、衛生観念の違いでした。私は布団以外は足の踏み場もない汚部屋で暮らしていたので、雑然とした空間でも平気なタイプでした。一方で妻はホテルのように整った住空間が好み。初めて妻の部屋に行ったときには、室内にモノが少なく整然としていて驚きました。

 私は綺麗に使っているつもりでも、妻からは「なんでそんなに汚すの?」と突っ込まれてしまう。でも私にとっては、「気にするほどの汚さか?」と疑問が湧いてくる。同棲当初は、ずいぶんとぶつかりました。 

 ほかにも驚いたのが、距離感覚の違いでした。僕にとって片道30分は「近い」と感じるのですが、妻にとっての「近い」は歩いて1分。同じ「近い」という言葉から連想する感覚は、こんなにも異なっていました。

 特に記憶に残っているものとして衛生観念と距離感覚を挙げましたが、ほかにも時間の使い方、洗濯機を回すタイミング、料理の温度、休日の過ごし方、服装選びなど、私たちの間にはたくさんの「ぶつかりポイント」がありました。

◆正面衝突は有効な一手。でもメンタルはやられる

 当時の私たちは、価値観の違いを「正面衝突」でわかり合おうとしていました。

「僕はこう思わない!」

「私はそう思わない!」

「僕はこれが嫌いだから、こうして!」

「私はそれが嫌いだから、やめて!」

 こんなやりとりが続きました。

 ポジティブなとらえ方をすれば、「もうこの人には何を言ってもしかたない」と諦めてしまうより、正面衝突した方がまし。一応は話し合っているわけですから。

 同棲後まもない時期にたくさんぶつかり合ったことで、現在私たちが大切にする話し合い習慣ができた面はあります。

 とはいえ、気持ちを思い切りぶつけ合うのは、メンタルが消耗するやり方でした。正論を伝えるのが正しいとは限りません。たまにぶつかるのは仕方がないことですが、あまりにも頻繁だと一緒に生活するのが嫌になってきます。そんな毎日が続いたらストレスでしかありません。もっと建設的なアプローチが好ましいですよね。

◆雨を嫌と感じる人もいれば、嬉しく思う人もいる

 入籍してからも私たちは正面から気持ちを伝え合ってきましたが、あるとき妻の提案を受け入れてからは、穏やかな意見交換へと変化しました。

 妻の提案とは、夫婦で話し合う前に「そもそも自分が何にどんなことを感じているか」を探ろうというものでした。話し合いには、夫婦仲を良くする、気持ちをわかり合いたいといったいった目的があります。ゴールに到達するには、まず現在地を正確に把握しないといけませんよね。妻はここを重視していました。

 妻は日頃から「人って、みんな違う辞書を持っている」とよく言います。育ってきた環境によって、ある事象について独自の意味づけをしてしまうことのたとえです。

 わかりやすいように「雨」を例にとります。ある人にとっては、雨はうっとうしいもの、不快なものと感じることがあります。確かに濡れるし、傘が必要で荷物は増えますからね。

 でも別の人にとっては、雨は嬉しい存在でもあります。雨具が大好きな人なら、お気に入りのレインコートの出番だと小躍りするかもしれません。

 「雨とは嫌なもの」と辞書に書かれている人もいれば、「嬉しいもの」と書かれている人もいるわけです。何が正解か不正解かではなく、解釈の仕方が違う、ということです。  

 同じ「雨」でも複数の見方があることがわかります。このように、夫婦で話し合いたい事柄について自分がどんな意味づけをしているのかを探っていきます。

 メリットは、自分の価値観を相手に押し付けにくくなること。ついつい自分の辞書に書かれていることが常識だと思い込みがちですが、相手は別の見方をしている可能性がありますよね。価値観の押し付け頻度を減らすだけでも、ケンカはずいぶんと減ります。

◆「どう思うの?」とシンプルに問いかける

 ほかには、お互いを壁打ち相手として自分を知るやり方も取り入れています。私たちはこれを「夫婦インタビュー」と呼んでいます。

 私はライターという仕事柄、たくさんの人に取材をしてきました。インタビューでは相手の発言に対して、「それはどういう意味ですか?」「なぜそう思われるのですか?」というふうに、深掘りをします。同じことを夫婦でしようという試みです。   

 「よし、やるぞ!」と身構えるのではなくて、普段の成果で「価値観が違うな」と感じたときに軽く聞いてみる感じです。

 たとえば、僕は「近い」と思って片道30分の場所にあるカフェに妻を誘ったけど、妻は「遠い」と感じて別のお店にしたいと言われた場合。

「僕は片道30分は近いと思っているんだ。最寄駅までバスで20分かかる場所に住んでいたから、通学も通勤も1時間は当たり前だったからね。あなたにとっての『近い』は何分くらいか教えて欲しいな」

と聞くだけです。

 妻の場合は、目的地が「目の前」だと近いと判断しますが、徒歩5分は「ちょっと歩くなぁ」と感じることがわかりました。妻は市街地で育ち、自宅周辺に買い物や遊ぶための場所がたくさんあった。だから歩く必要がなかったのです。

 ちょっとしたことですが、この質問のおかげでお互いの距離感覚がわかりました。また所要時間を伝えるときには「歩いて10分」「バスで15分」のように数字で言うようにしました。こうして距離をめぐる思い違いを防げます。

◆夫婦は違っていて当たり前

 夫婦インタビューで大切なのは、相手を責めないこと、理解できなくてもいいと思うことです。「なんでそうなの?」「なんでこうしてくれなかったの?」と聞いてしまうと、相手のアクションを否定したように聞こえてしまいます。相手がどう思っているのかがわかれば、目的は達成です。

 シンプルですが、夫婦インタビューは役に立ちます。実はこの原稿を書いているとき、家事と育児の分担をめぐって妻と意見が割れました。時間をとってお互いの考えを冷静に聞き合って、ベストな対応ができました。

 長く一緒にいると「わかってくれて当たり前」と思い、夫婦で考えを共有しなくなることがあります。夫婦は「最も近くにいる他人」です。「違っていて当たり前」を前提に、パートナーの話を聞くのは大切だと私は思います。

<文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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