問題山積みのリニアや相次ぐ踏切事故。2019年から引き継がれた鉄道業界の「課題」

問題山積みのリニアや相次ぐ踏切事故。2019年から引き継がれた鉄道業界の「課題」

PG1104NA / PIXTA(ピクスタ)

 オリンピックイヤーとなる2020年。多くの観光客が訪れることが予想されるが、本項では彼らの足となる鉄道業界はいかなる課題を抱えているのか? 

◆見通しの暗いリニアや新幹線

 2019年は相次ぐ自然災害に悩まされた日本列島だが、鉄道業界も災害に苦しめられた1年だった。そして、今までは地元から大歓迎されていた新幹線やリニアも、「地元民の反発」が目立ち始めた年でもあった。

◆新幹線やリニア建設を巡る自治体の反発

 九州新幹線の長崎ルートでは佐賀県がフル規格での整備に反対の姿勢を鮮明にし、中央リニア新幹線では静岡県の反対で同県内の工事だけが未だ着工できない状況に陥っている。

「ひと昔前であれば、こうした大型公共事業は歓迎されたはず。それが今では直接的なメリットがなければ反対も辞さない自治体が出てきている点で、時代の移り変わりを感じます。九州新幹線では在来線特急でも博多へのアクセスに不便を感じていない佐賀県が、新幹線整備コストの負担を嫌っている。静岡はリニアのトンネル工事に伴う大井川の水量を巡る問題です。

 いずれにしても、“国益”をかざして地方を説得することは難しい。最終的には国が主導して現実的な落とし所を見つけるのでしょうが、自治体側にも応分の“メリット”を感じられるような対応をしなければならないでしょう」(鉄道ライター・境治氏)

◆相次ぐ踏切事故への対策は?

 2019年9月5日、京急線が踏切に立ち往生していたトラックと衝突し脱線、トラックの運転手が死亡した。強引に踏切に進入したトラックに問題があるという見方があるいっぽうで、京急の高速運転や緊急ブレーキの対応に問題がなかったのかが問われることになった。

「もちろん今回の事故に関して原因を詳しく検証することは必要です。ただ、根本的には踏切がなくならない以上こうした事故を撲滅することはできません。実際、京急の事故ほど大きなものでなくても、立ち往生した車と電車が衝突する事故や、遮断機がおりてから踏切を横断しようとしている歩行者を撥ねる事故は相次いでいる。

 鉄道会社は可能な限り踏切を廃止したい意向を持っているようですが、踏切の廃止は沿線住民の反発もあるので難しい。京急がいいとか悪いとかそういう議論に終始するのではなく、運転本数が多い区間にある踏切の扱いを社会全体で真剣に考えていくべきでしょう」(同)

◆明暗がわかれた台風被害

◆台風15・19号による被災

 昨年、鉄道に最も被害を与えた災害といえば、10月にたて続けに襲来した台風15号と19号。15号は千葉県内を中心に大きな被害を与え、19号は東日本全体に被害をもたらした。首都圏の通勤路線は計画運休もあって軽微な被害で済んだが、ローカル線は年末の今も不通区間が残る。

 「とりわけ台風19号では、各社が早めに計画運休を告知したために混乱もなく、台風通過後も比較的スムーズに運転を再開することができました。ただ、事前の報道ではこうした首都圏の計画運休ばかりがとりあげられ、蓋を開ければ事前にはロクに報道されなかったローカル線に被害が集中した。施設が脆弱なローカル線が災害に弱いのはあるていど仕方ないのですが、お年寄りや学生などの交通弱者への影響は小さくありません。

 この台風では北陸新幹線の車両基地が浸水したことも大きなニュースになりましたが、復旧に向けた経営体力ではJRと地方の中小私鉄では雲泥の差があります。いつ起きてもおかしくない災害にローカル線がどう備えるか、国の支援体制も含めて議論が必要です」

 2019年の鉄道業界で話題になったのはこうした“被災”のニュースが多い印象がある。これらは2020年、改善すべき課題なのは言うまでもない。ひとたび大規模な災害がやってくると全てを吹き飛ばしてしまう。幸にして、今回の被災をきっかけに廃止される路線はなさそうだが、復旧に向けた工事はまだまだ緒についたばかりだ。

◆一方で希望も?

 もちろん、2020年に引き継がれた課題が少なくない一方で、東日本大震災の「復興」を感じさせる希望もあった。

◆三陸鉄道リアス線開業

 2019年3月には三陸鉄道“リアス線”が全線開通した。すでに南リアス線と北リアス線が営業していたが、加えて東日本大震災で被災したJR山田線宮古〜釜石間を復旧させて三陸鉄道に移管、盛〜久慈間全区間をリアス線としてリニューアルしたのだ。

 「東日本大震災で被災した三陸地方の鉄道路線復旧はこれにてひととおり完了したことになります。もともと山田線区間は利用者が少ないことからJR東日本が復旧に慎重な姿勢を示していましたが、地元との協議を経て復旧させて三陸鉄道に移管するという“ウルトラC“で決着しました。

 これによって盛から久慈まで全線を通して走る列車も設定され、三陸観光は一層便利になったといえるでしょう。秋のラグビーW杯ではリアス線鵜住居駅近くで試合が開催されて臨時列車も運行されるなど賑わいを見せました」

◆昨年も続いた相互直通運転の波

◆相模鉄道とJR線の直通

 いままで関東の大手私鉄の中で唯一他社路線との相互直通運転を行なっていなかった相模鉄道が、昨年11月からJR線との直通を開始。渋谷・新宿から乗り換えなしで相鉄沿線が結ばれるようになった。

 「相鉄沿線に縁がない人にとってはピンと来ないかもしれませんが、逆に言えば相鉄を日常的に利用してきた人にとっては大きな変化でしょう。直通列車は相鉄の西谷駅から新設された連絡線を経由し、東海道貨物線に入ってJRに直通します。今後は東急線との直通運転も予定されており、"相鉄の都心進出“が本格化しそうです」

 <取材・文/HBO編集部>

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