米国では大手食品メーカーも参入、「植物ベース」のハンバーガーの安全性は!?

米国では大手食品メーカーも参入、「植物ベース」のハンバーガーの安全性は!?

インポッシブル・バーガー

 米国では「インポッシプル・バーガー」「ビヨンド・バーガー」など、食肉を使わない「植物ベース」のハンバーガーが人気となっている。

 その背景にあるのは地球温暖化の問題。畜産は温暖化を促進するうえ、水や土地、飼料を大量に消費して非効率。だから「植物から直接肉を作るほうが効率的」だというのがその考え方だ。タイソンやスミスフィールドなど、大手食肉メーカーも植物ベースの肉の開発・販売を始めている。

◆ベジタリアン、ビーガンだけでなく肉食を減らす「フレキシタリアン」が増加

 日本では最近、「健康のためには筋肉が大事」だとして「良質のたんぱく質である肉を食べよう」と特に高齢者に肉食を勧めるTV番組が目につく。しかし欧米では、温暖化、動物愛護、健康志向などの理由で肉食を積極的に減らそうとする「フレキシタリアン」と呼ばれる人が増えてきているという。1年に1回、1週間に1回など、個人や地域、学校などで「ミートレスの日」を作り、食肉の摂取を減らそうとする動きも活発化している。

 フレキシタリアンの人々はベジタリアン(菜食主義者)やビーガン(酪農製品なども食べないベジタリアン)と違って、肉食を否定しているわけではない。そんな人々にとって植物ベースの肉は、本物の肉に近い味や香りや食感、あるいは本物の肉より栄養価が高いなどのメリットを提供するものとして開発されている。

◆インポッシブル・バーガーとビヨンド・バーガーのコンセプトの違い

 インポッシブル・バーガーは、本物の肉のような香りと色、食感で「肉を使っていないのに血の滴るようなバーガー」として話題となった。その秘密は、色素添加物として使われている「大豆レグヘモグロビン」という物質。本来大豆の根粒に含まれているこの物質を、遺伝子組み換え酵母によって製造している。

 インポッシブル・バーガーがたんぱく質原料として大豆を使っているのに対し、ビヨンド・バーガーはえんどう豆、緑豆、ソラマメなどを原料としている。また、「遺伝子組み換えを使用しない」「抗生物質やホルモンを含まない」ことをコンセプトとしてあげている。

◆インポッシブル・バーガーに使われている「大豆レグヘモグロビン」の安全性は!?

 温暖化対策だけではなく、米国の国民病とも言える肥満を解消するためにも植物ベースの食肉の開発は歓迎されるべきこと。しかし市民団体等が懸念しているのは、インポッシブル・バーガーに使われている、遺伝子組み換え酵母による「大豆レグヘモグロビン」の安全性だ。

 大豆の根粒に含まれる大豆レグヘモグロビンはヒトが食品として食べてきたものではないため、FDA(食品医薬品局)の安全審査が必要なはずだ。しかし「インポッシブル・バーガーを開発したインポッシブル・フーズは、FDAの承認を得ずに販売している」と米国の市民団体は指摘している。

 また、遺伝子組み換え酵母は大豆レグヘモグロビンを生成する時に他の約40種の物質を生成するとされていて、それらの中にアレルギーを起こす物質が含まれる可能性も懸念されるという。これは、30年以上前に遺伝子組み換えによるトリプトファンが開発されたとき、混じっていた不純物によって死者や健康被害が多発した事件があったからだ。

 FDAの添加物の安全評価では新規食品添加物の場合、市販前承認が義務づけられている。しかし、制度ができるずっと以前から安全に使われてきたという歴史がある物質については市販前審査を免除するという「GRAS規定」がある。GRAS資格を有するには一般に承認されていることが必要とされている。

 インポッシブル・フーズはFDAにGRAS通知を提出、その中で「大豆レグヘモグロビンは安全とみなされるほかのグロビンと化学的に類似しているので同程度に安全」と安全性の理由を説明しているという。

 市民団体の懸念をよそに、インポッシブル・バーガーはいまや高級レストランで食べられるほかスーパーマーケットでも購入できるようになってきている。

◆食品大手も植物ベース肉の市場に参入

 植物ベース肉の人気を見て、ホーメル・フーズ、タイソン、スミスフィールドなどの大手食肉メーカーまでが参入をし始めた。ホーメル・フーズは非組み換え大豆を使い、保存料、コレステロール、グルテンフリーの低カロリーパティを開発、スミスフィールドはフレキシタリアンをターゲットに数種類のパティやミートボールなどを販売している。

 今年12月にスペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)では、世界各国がますます厳しい温暖化対策の実施を求められている。こうした中で、肉食を控えようとするフレキシタリアンがさらに増えると考えられる。大手食肉メーカーも、食肉一辺倒からの方向転換を余儀なくされているのかもしれない。

【どうなる食と農 第1回】

<文/上林裕子>

関連記事(外部サイト)