タイ人にとって、日本旅行はタイ国内旅行よりコスパよし!? リピーターも増え、行き先もマニアックに

タイ人にとって、日本旅行はタイ国内旅行よりコスパよし!? リピーターも増え、行き先もマニアックに

バンコクの旅行博に出店するJR東日本や自治体、企業など

◆まだ「日本旅行ブーム」が続くタイ

 インバウンドに「伸び悩み」の兆しが見えてきたと言われる中だが、いまだタイでは日本旅行ブームが続いている。

 かつてはビザ取得がなかなか適わなかったこともあり、2013年7月にタイ人に対する短期査証免除になってから爆発的な人気になった。タイは大まかには乾季と雨季のふたつの季節しかなく、通年気温が高いので季節的な風物詩はそうあるものではない。一方、日本は春夏秋冬で見える姿が違うので、何回行っても飽きることがないようだ。

 タイに暮らして約20年の筆者は、移住したばかりのころ、よくタイ人からビザの取得に関する相談を受けた。日本のビザは厳しいという噂があったが、実は単にビザ申請を行うタイ人が必要書類を用意できていないだけで、それほど難しいことではない。実際、短期査証が免除になったのは、同年にタイ航空が札幌直行便をタイから飛ばし、その際に雪祭りが注目されたこともきっかけのひとつだ。ちゃんと書類を揃えることのできるタイ人たちの間で日本ブームがすでに始まっていて、それを見た日本政府が免除に動いたという面もある。

 そうして誰でも日本に行けるようになり、かつ格安航空会社も多数日本の各都市にタイから直接乗り入れるようになったので、なお日本が近くなった。リピーターも多く、当初は「東京と大阪ならどっちに行くべきか」と訊かれたものだが、今は「東京の○○の通りならどんなおいしい店がある?」といった、地元民しか知らないような質問が出てくるほどマニアックになっている。

◆タイ人の「琴線」に触れれば意外な場所でも集客に

 日本を旅行するタイ人は主にテレビやネットで旅先の情報収集をする。日本旅行を専門に紹介する番組もあるし、ネットなら無数に日本観光レビュー・ページがある。タイ人が紹介していること、また徐々にマニアックになりつつあることから、日本人が思いもしない地域がタイでブームになることもある。たとえば、タイのドラマが2015年に佐賀県で、2018年に山形で、2016年は北海道で映画撮影が行われたことで、タイ人が訪れる場所となった。日本ブームの当初は静岡県御殿場のアウトレットがタイ人の定番スポットでもあったし、今は成田に近く、かつ見所の多い千葉県にタイ人が増えつつあるという。

 このようにタイ人にはタイ人の琴線があって、そこに触れることでタイ人客を集めることができるようだ。

◆日光東照宮で見かけたタイ人観光客

 かつてそれほどタイが日本人から注目されていなかったころも日本人旅行者はタイにおり、現在のタイ好き同様、タイが気に入ってリピーターになった。そういった人々が徐々にガイドブックにはないタイを求め、マニアックになっていった。今、タイ人が逆に日本に対してそうなってきている。

 かつての日本人タイ・マニアもそうだが、タイ人の日本マニアは以前は比較的若い人が多かった。ビザが必要だったときは観光客以外では出稼ぎ、日系企業の出張者といった面々が中心で、高齢であることはあまりなかった。先の地元民しかわからないような質問を筆者にしてきたのもやはり若者だった。

 しかし、これだけ日本が近くなると、個人旅行で郊外へと遠出をする人は20代30代の若めなタイ人とは限らなくなってきた。栃木県日光市にあるユネスコ世界文化遺産の「日光東照宮」でもタイ人を見かけた。外国人は大半が中国人、あるいは韓国人のようだったが、ほんのわずかタイ人も来ていたのだ。見た感じでは40代50代のグループだ。

 彼らに軽く話を聞いてみた。

「東京は何度も来ているので、郊外を見てみようと思い来てみました。日帰りで楽しんで帰ることができるので、いい場所ですね」

 どうやら、リピーターとなり、行動範囲を広げているのは若者だけというわけではないようだ。

◆タイ語で行き方も検索できる「日光」

 日光は東京から遠くはないが、案外行きづらい。電車だとJR線か東武線になるし、バスでは宇都宮まで向かって乗り換えるなど面倒だ。

 それでも、観光スポットの多い日光市は当然タイのブロガーたちがすでに取り上げていて、行き方はタイ語で検索できるほどだ。JR線は外国人向けの乗り放題パスも用意しているので、日光はタイ人には意外と安価に行ける場所でもある。安価に加え、2時間程度の所要時間という、ちょうどいい距離感で旅情と冒険心も満たされる。

 東照宮は東京在住者でもそう滅多に行くような場所ではないので、タイ人もまだまだ少ない。それもまたマニアックな旅行を求める人に向いているようだ。ある程度歳をとると手つかずの場所に行ってオンリーワンの思い出話を語りたい思いもありつつ、でも安全に行って帰ってきたいと考える。そんな人の東京旅行における日光への遠出はちょうどいい。

◆タイ国内旅行より日本旅行のほうがコスパよし!?

 2019年半ばからタイ人は口々に不景気だと言い始めたので、2020年の日本観光にも影響が出るかもしれない。しかし、タイは物価上昇が著しいことと、海外の輸入物は関税が高いこともあって値段が高い。和食も平均的には日本の1.5倍以上はする。そのため、2000年代初頭のように、タイ国内を旅行するよりも案外日本旅行の方がコストパフォーマンスに優れている。そのため、今後も日本ブームは続き、より目的はマニアックになっていくだろう。

 特に2020年はオリンピックの年だ。タイ人は諸外国の人ほど熱心にスポーツ観戦をしない。サッカーやバレーボール、ボクシングなど、タイ人選手が多い、あるいはタイ人選手が強いといった特定の人気種目のみ応援し、全般的に観ているわけではない。そう考えると、この時期に日本を訪れるタイ人は東京ではなく地方に行くのではないだろうか。今からタイ人にピンとくるようなネタを仕込んでおけば、2020年はタイ人集客が見込めるかもしれない。

<取材・文・撮影/高田胤臣>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など

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