受け入れ企業の元職員が激白! 「私は監理団体の買収を担当していた」

受け入れ企業の元職員が激白! 「私は監理団体の買収を担当していた」

kiki15 / PIXTA(ピクスタ)

 『月刊日本』に好評連載中の「ルポ 外国人労働者」。第3回では、「日本全体で毎月130億円!? 監理団体の収入源『監理費』とは何か」と題して、技能実習制度の中心を担う監理団体の実態に迫った。その後、この記事を読んだ関係者2名から情報提供があり、それぞれ匿名を条件に話を聞くことができた。

 それらの証言を元に、『月刊日本 2020年2月号』では、改めて監理団体の知られざる実態に迫っている。

◆本邦初公開⁉ 監理団体の買収方法

 「私は数年前まで技能実習生の受け入れ企業に勤め、そこで監理団体の買収を担当していた」

 情報提供者の一人は元企業社員。中国地方の企業に勤めていた当時、監理団体の買収を任されていたという。

 「うちの会社は130人ほど実習生を受け入れていたが、事業拡大のために実習生をさらに増員する必要が出てきた。しかし監理団体を通じて実習生を入れると仲介手数料をとられるから、コスト削減のために監理団体を買収することになった。試算では、買収によって実習生の受け入れコストが半分になる計算だった。それで経営企画部にいた私に白羽の矢が立ったわけだ」

 監理団体の買収とは、具体的にどういうことなのか?

 「実際には『買収』ではなく『乗っ取り』だ。協同組合法では、独禁法の関係で理事や組合員の資格に一定の条件がある。要するに、大企業が中小企業の協同組合を支配しないように制限がかけられているわけだ。うちの会社は法律的に組合員にはなれても理事にはなれなかった。そのため組合員として加入した後、カネを出すと同時に社員を組合職員として送り込むことで、実質的に組合を乗っ取るという戦略を立てた」

 どうやって狙いをつけるのか?

 「狙いは名義だけで実際には活動していない休眠団体だ。それを見つけるために、国際研修協力機構(JITCO)や外国人技能実習機構(OTIT)に登録されている近県の監理団体を片っ端から調べた。まず監理団体のホームページを確認して過去1年以内に活動していた団体は除外していった。次にホームページが更新されていないところ、そもそもホームページを持っていないところに客の振りをして電話をかけた。つながったところには探りを入れ、つながらないところは現地を視察した。しかし視察先は無人の廃墟だったり建物自体がなかったりして関係者と連絡すらとれない状況だった。結局、電話がつながった4〜5の団体に買収を打診して、うち2つと交渉に入った。監理団体の理事とうちの会社の役員が直接交渉した」

 交渉の内幕は?

 「一方の団体は『500万円出資してくれれば、おたくの御用組合になる』と言っていたが、最終的には金額も含めた諸条件で折り合えず、2件とも交渉はまとまらなかった。結果的に監理団体の買収はできなかったため、残念ながら買収後の話はできない」

◆まともに活動していない団体が予想以上に多かった

 技能実習制度では監理団体の問題点が指摘されている。

 「監理団体の大半は中小企業の協同組合だ。私は300〜400くらいの監理団体を調べ、150〜200くらいには電話をかけたが、そのうち半分はつながらなかった。実際に視察しても人がいないどころか建物すらないところも少なくなかった。買収目当てでまともに活動していない団体を探したわけだが、その数が予想以上に多いことには驚かされた」

 監理団体の問題はどこにある?

 「最大の問題は中小企業の協同組合が監理事業を行っていることだろう。そもそも連絡がつかない組合が多く、連絡がついても技能実習制度を理解していない組合が多い。監理団体の大半は人手不足に困った中小企業が『外国人でも雇ってみるか』と言って組合を作ったはいいが、何のノウハウもないから失敗して活動を休止しているか、そのまま活動してトラブルが続出しているというのが実態だろう」

 監理団体の買収は違法ではないかもしれないが、企業倫理に反するのでは?

 「上司には『この件は隠密で動け』と釘を刺されたから、会社としても世間にバレたらまずいことをやっているという後ろめたさはあったのだろう。問題になれば取引先や自治体との関係も悪くなり、本業に支障が出る」

 しかし、監理団体の買収にリスクを上回るベネフィットを見込んだ。

 「実習生はとにかく安上がりだ。人件費はもちろん諸経費も安い。たとえば普通の社員には月2万円の家賃補助を出さねばならないが、実習生には家賃補助がいらないどころか寮費がとれる。うちの会社ではアパートを一棟買い上げて実習生の寮とし、一部屋3人で1人当たり約2万円の寮費を徴収していた。また社員には毎月交通費を払わねばならないが、実習生には7〜8000円の自転車を1台買うだけで済む」

 技能実習制度はどう思うか?

 「大前提として地方には日本人がいない以上、否応なく外国人に頼るしかないのだ。外国人労働者がいなければ地方経済は回らない。だからといって技能実習制度がこのままでいいとは思わないが、買収を打診した監理団体の中には『国会議員の誰々に相談しないと判断できない』というところもあった。国会議員も監理団体を使って利益を得ているとすれば、状況改善は難しいだろう」

◆監理団体の不正は野放し

 「私は協同組合型の監理団体に勤めていたが、不正が横行していた。監理事業でも様々な問題があり、その中で命を落とした実習生もいた」

 もう一人の情報提供者は元監理団体職員。所属する組合の不正を告発したが、状況は改善できなかったという。

 「私がいた協同組合は、もともとある企業が実習生を受け入れるために設立したものだった。職員は10名以下、所属する実習生は150〜200名程度、契約企業は20社程度で、監理団体としては小規模だった」

 どのような不正があったのか?

「所属先の不正には、協同組合としての不正と監理団体としての不正があった。まず後者の問題だ。技能実習生は従事する職種・作業が定められているが、うちの組合の実習先ではそれ以外のことをやらせていた。また監理団体は3か月に1度、実習先を訪問して実習生と面談して実習状況を監査しなければならない。しかし、うちの組合は所用で企業を訪問した日を『監査実施日』として虚偽報告し、実習生と面談することはほとんどなかった。俗にいう『エア監査』だ」

 監査が杜撰では、問題が起きるのではないか?

 「数年前、うちの組合に所属する実習生が自殺したことがあった。主な原因は実習生同士のいじめだったようだが、遺族に賠償金を払っただけで処分は何もなかった。この企業では賃金未払いも2回発覚した。この件は労基署の立ち入り検査で発覚し、未払い賃金の支払い等が命じられて終わった。うちの組合は何も知らなかったということで処分されなかったが、組合が何も知らないこと自体が問題だ。組合がきちんと監理業務を行っていれば、これらの事件は起きなかったはずだ」

 業務を怠ってトラブルを誘発した監理団体が処分されないのはおかしい。

 「私はこれらの問題について外国人技能実習機構(OTIT)に通報したが、機構の対応はお粗末そのものだった。機構は別件で企業を訪問した際、組合と企業の担当者が同席している場で『ちゃんと監査していますか』と確認する始末だ。当然、組合は『監査している』と嘘をつき、組合と揉めたくない企業も『監査を受けている』と口裏を合わせる。結局、機構は問題なしとして何の処分もしなかった。2017年に機構が設立された時は状況改善を期待したが、実際には何も変わらなかった」

◆技能実習制度改善のためには協同組合改善の必要

 協同組合としての不正は?

 「協同組合法では総会で承認された決算書の提出等が義務づけられている。しかし、うちの組合では総会を一度も開かず、総会議事録は捏造し、総会で承認を受けていない決算書を行政機関に提出していた」

 総会を開かない組合側に対して、組合員の不満はなかったのか?

 「そもそも、うちの組合では組合員同士のつながりがなく、組合員はお互いに誰が同じ組合員なのか分かっていない状態だった。中には総会が開催されないことを不審に思う組合員もいたが、彼らは無事に実習生が受け入れられればいいので、総会を開催しないことを問題視する声はなかった」

 組合は野放し状態なのか?

 「協同組合では収益が役員報酬に配分されたり、個人的な飲食接待・海外出張に流用されたりすることが多い。本来ならば、組合員が総会で疑問点を問いただしたり、決算書を審議したりすることで組合の不正を防ぐべきだ。しかし、実際の組合員は組合から実習生を回してもらわないと立ち行かなくなる中小零細企業ばかりなので、立場が逆転して組合の言いなりになったり、余計なことはせずに放任しているのが現状だ」

 行政はどういう対応なのか?

 「これらの問題点について、私は県庁の協同組合管轄部門に通報したが、『組合と組合員が〈総会を開催している〉と言えばそれ以上は追及できない』という返答だった。その後、担当者から『組合を調査したが、書類が整っているから問題はない』と連絡があった。形だけ対応したということだ。余程のことがない限り、行政は動かない」

 技能実習制度を改善するためには、協同組合を改善する必要がある。

 「しかし技能実習制度では組合のほうが組合員より強いため、自浄作用は働かない。監理団体を監督するOTIT、協同組合を監督する行政が外部から組合を是正することもない。状況の改善は難しいと思わざるをえない」

 「もちろん技能実習のおかげで帰国後に豊かな生活を送れるようになったと日本に感謝している実習生がいることは事実だ。だが、その一方で技能実習のせいで借金塗れになったり、身体を壊したりして普通の生活すら送れなくなったと日本を恨んでいる実習生がいることもまた事実だ。技能実習で問題が起きるのは、監理団体や企業が定められたルールを守っていないからだ。技能実習のルールが実態に沿っているのか見直した上で、監理団体や企業にルールを守らせるよう取り組まない限り、この問題は解決しないだろう」

 行政が動かないならば国会が動くしかない。しかし、その国会でも技能実習から甘い汁を吸っている人間がいる。国会が動かないならば、国民が動くしかない。

※本誌では今後も読者からの情報提供をお待ちしております。

◆ルポ 外国人労働者第6回

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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