「統一教会」のダブスタについて、教団と近い政治家や論客の見解を聞いてみた<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第26回>

「統一教会」のダブスタについて、教団と近い政治家や論客の見解を聞いてみた<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第26回>

2世修練会で韓鶴子総裁の言葉に涙する2世信者たち(U-ONE NEWSより)

 この年末年始、約1200人の統一教会(世界平和統一家庭連合)の大学生信者が渡韓し”強制徴用被害者”と“慰安婦”へ直接謝罪、少女像が設置された旧日本大使館前で日本政府・安倍政権に過去の歴史への謝罪を要求する会見を開いた。

 多くの韓国メディアが日本の大学生による「謝罪」と「謝罪要求」を報じた。この大学生たちは統一教会系の世界平和青年学生連合(YSP)のメンバーで、一連の謝罪行脚は教団の2世信者特別修練会の”企画”として行われたもの。YSPが安倍政権批判を行う一方で、同じく教団が大学生2世信者に行わせている勝共UNITEは「安倍政権支持」を掲げて活動しており、教団内での相反する構図が浮き彫りとなった。そこで、これまでUNITEやYSPのイベントで講演した保守系の政治家や論客に見解を尋ねた。

http://youtu.be/wveK-HqVdS0

◆韓国メディアが「謝罪」「謝罪要求」「反省」と報道

 昨年末に日本から動員され韓国へ渡った1,150人の大学生2世信者は韓国で2世大学生150人と合流、12月31日と1月2日に謝罪行脚を行った。

 この「日本の大学生による謝罪と日本政府への謝罪要求」は韓国国内で大きく報じられた。公共放送局KBSなど韓国主要メディアの報道記事のタイトルを紹介しよう。

●『「謝罪します」日本の大学生1200人、慰安婦・強制徴用被害者に謝罪訪韓』(KBS)

●『少女像抱いた日本の大学生1150人、「日本は過去の歴史を認めなければならない」』(MBN)

●『「新しい平和作成」日本青年1200人、日本の過去史謝罪」(MBC)

●『日本の大学生1150人、少女像抱き「安倍、過去の謝罪が必要」』(毎日経済)

●『韓国を訪れた日本の大学生、安倍政府に過去の歴史の謝罪を要求」(聯合ニュース)

◆韓国メディアが報じた2世信者の謝罪行脚

 謝罪行脚の“旅程”を韓国での報道からまとめた。

・12月31日 

 京畿道広州市の慰安婦歴史館「ナヌムの家」を訪問し同館で共同生活を送る元慰安婦”ハルモニ”に直接謝罪。

・1月2日

 ソウル龍山区白凡記念館で「韓日青年と日本統治時代の被害者たちとの出会い」イベントを開き、強制徴用の被害者に直接謝罪。

 日本統治時代に抗日運動家が収監されたソウルの西大門刑務所歴史館を見学し“痛切で恥ずかしい過去を反省”、抗日運動烈士追悼碑に献花。

 ソウル鍾路区、旧日本大使館前に設置された“日本軍性奴隷制被害者の象徴”である少女像に献花し抱擁。少女像の脇で会見を開き、元徴用工と元慰安婦に謝罪した上で日本政府・安倍政権に過去の歴史への謝罪を要求。(参照:「MBC」)

 一連の謝罪行脚を“用意”した世界平和青年学生連合は統一教会の摂理機関、つまり教団の教えを広めるためのフロント組織だ。2017年に世界平和青年連合(YFWP)から名称変更しており、日本の会長は2013年6月から19年10月まで教団幹部の松田幸士氏が務めていた(現在、松田氏はYSP世界会長)。

◆教団メディアも報道。最高権力者が”国家復帰”を2世に指示

 この大学生たちは統一教会の第一地区(山梨県を含む関東)の2世信者で、指導者養成のための特別修錬会「TOPGUNユース2020」(12/28~1/3)に参加するため渡韓していた。修練会最終日に行われたTOPGUNワークショップでの2世信者たちの様子を教団メディアのU-ONE NEWSとPeaceTVが報じている。

◆世界平和統一家庭連合公式チャンネル U-ONE NEWS 2020年1月10日号

◆FFWPU PeaceTV HJグローバルニュース (2020年1月11日)

 では今回の2世たちの一連の活動は何を目的として行われたのか。教団メディアの報道映像には最高権力者・韓鶴子総裁が「“韓日”関係悪化改善の努力が韓国の為政者に影響を及ぼした」と評価した上で、日本人2世たちに統一原理を日本の国教にするという”国家復帰”を指示する様子が映っていた。

 韓鶴子総裁を”真の母”として崇拝する2世信者たちは、国家復帰の命を受け無条件の忠誠を誓う。

◆偽装勧誘員が成果をスピーチ

 TOPGUN研修を受ける2世の中に見覚えのある顔があった。壇上から伝道活動の成果として「証し」をスピーチするその女性2世信者を番組キャスターはこう紹介した。

「西東京杉並教区・篠崎瑞奈 青年宣教師は、海外宣教活動を通して、真の父母様の心情を相続し、多くの霊の子女を復帰していることを証しし、より一生懸命活動することを決意しました」

 この“篠崎宣教師”は普段、新宿駅南口で正体と目的を隠した伝道活動を行っている偽装勧誘員だ。

 以下の画像は昨年(2019年)7月、新宿駅南口での“篠崎宣教師”による偽装勧誘の現場を捉えたものだ。

 勧誘現場で筆者が「2世信者勧誘員による正体と目的を隠した偽装伝道」であることを指摘すると、篠崎宣教師は宗教勧誘を否定し「青年アンケート」と抗弁。自らが教団2世であることも当初否定し「スクール(筆者注:ビデオセンター)の卒業生」と被勧誘者に説明。「伝道ではなく、道を伝えてます。人生の目的とか」と苦しい言い訳に終始した。

 教団系メディアはこの謝罪行脚に対する韓国国内での報道を紹介し関心の高さを報じた。

◆同じ「統一教会」での矛盾

 韓国国内における統一教会系組織の”謝罪”活動には前例がある。2012年、日本統一教会の江利川安栄元会長が代表を務め、合同結婚式で韓国人とマッチングされ韓国に在住する日本人女性信者たちで構成された「日韓の歴史を克服し友好を推進する会」が、着物姿などで謝罪行動を行った。(江利川元会長は2015年、教団の分派であるサンクチュアリ教会へ移籍)

 この時も韓国の主要紙である東亜日報や中央日報が報じた。

 しかし、元徴用工については1965年締結の「日韓財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓請求権協定)」において「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記されており、また慰安婦についても2015年の日韓両政府による日韓合意(日韓外相会談における慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決の確認)から、安倍政権は「徴用工及び慰安婦の問題は解決済み」との立場を繰り返し表明している。

 また、当連載で報じてきたように、統一教会は日本国内では自民党安倍政権に接近、安倍晋三首相直々の依頼による特定候補者への組織票の提供の他、運動員・秘書・スタッフ派遣、後援会結成に加え2世信者を使った一連の工作など様々な形で現政権を支援しており、いわば共存関係にある。

 中でも2世信者組織・勝共UNITEは街宣やデモで「安倍政権支持」」「安倍政権を支えよう」とのスローガンを掲げて活動、安倍政権への追従を明示してきた。〈参照:「自民党安倍政権と統一教会。2016参院選、教団2世信者を使った策動」、「安倍政権と統一教会。首相官邸での密談発覚、利用される2世信者たち」|ともにHBOL本連載〉

 ところがその一方で、同じく従順な2世信者を韓国へ”派遣”し安倍政権への謝罪要求を行わせているのだ。日本での協力・共存関係と、今回韓国で2世に行わせた日本政府・安倍政権批判との齟齬。この矛盾をどう捉えればよいのか。教団が2世を教化し、それぞれの2世組織で安倍政権支持運動と安倍政権批判をさせていることはダブルスタンダード以外の何物でもない。

◆事あるごとに発覚する2重構造

 この2重構造には前例がある。教団内においては安倍首相を打ち負かし屈服させ教育する対象と位置づけられていることを連載の中で明らかにした。〈参照:安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令|HBOL〉

 安倍政権との蜜月関係を維持する一方で、教団内では安倍首相を韓鶴子総裁に侍る存在であると日本の幹部は指導されている。そこにあるのは極端な贖罪意識の植え付けだ。

 流出した教団内部資料によって毎年300億円以上のお金が日本人信者から韓国の教祖一族へ上納されていたことが判明している。日本人から収奪したお金が教団中枢や関連企業群を支えているのだ。なぜ日本人信者はエンドレスで苛烈な献金ノルマに追われながら唯々諾々とお金を納めるのか。なぜ合同結婚式で韓国人男性とマッチングされた日本人女性信者は韓国の寒村へ喜んで嫁いでいくのか。それは日本人信者が韓国への贖罪意識を植え付けられているからに他ならない。その究極の狙いは、韓鶴子総裁及び韓国人幹部へ隷従させることにある。

 日本が韓国に対して行ったことへの罪滅ぼしのため、率先して韓国へ奉仕しにいく日本の信者たち。母の国・日本が父の国・韓国へ仕える構図がある。この「歴史観」は教団の内部統制の手段として使われており、今回はそれが表に出たため可視化されたに過ぎない。

◆教団関連団体や繋がりが深い保守系政治家や論客の見解は

 教団のダブルスタンダードのキーマンがYSPの松田幸士世界会長だ。というのも松田会長は2017年11月3日に勝共UNITEが開催した憲法改正イベントの実行委員長を務めていたからだ。

 

 1月10日、世界平和青年学生連合と勝共UNITE(及び国際勝共連合)に双方の教団内組織としてのギャップを、そしてこれまで勝共UNITEや世界平和青年学生連合のイベントで講演した以下の保守系の政治家や論客に見解を尋ねた。

●原田義昭衆議院議員(自民党、前環境大臣):勝共UNITEの福岡支部であるUNITE FUKUOKAが福岡市男女共同参画センター・アミカスで開いた『UNITE学生フォーラム』で基調講演

●長尾敬衆議院議員(自民党)、谷川とむ衆議院議員(自民党):勝共UNITEの関西支部UNITE KANSAIが大阪市淀川区民会館で開いた学習会に参加し2世信者を激励

●菅原一秀衆議院議員(自民党、前経産大臣)、吉木誉絵氏(著作家、古事記アーティスト、神職)、織田邦男氏(評論家、国家戦略研究所所長、航空自衛隊元空将):東京、永田町・星陵会館で勝共UNITEが開いた改憲集会『改憲2020実現東京大会』(松田幸士実行委員長)のゲストスピーカーとして講演、信者を激励(菅原)

●西川京子氏(九州国際大学学長、元自民党衆議院議員):福岡県の福岡市民会館小ホールで勝共UNITEが開いた『改憲2020実現福岡大会』で基調講演

●神田憲次衆議院議員(自民党):幕張メッセでYSP-JAPANが共催し教団が後援した『提言 JAPAN 2050 ユース・フェスティバル』(松田幸士実行委員長)に来賓出席、審査員を務める/愛知県武道館で世界平和青年学生連合が主催した『神日本家庭連合 第3地区 HJ未来フェス [未来を動かすチカラ]』で来賓挨拶

●石平氏(評論家):東京、永田町・星陵会館で勝共UNITEが開いた改憲集会『改憲2020実現東京大会2018』のメインスピーカーとして講演

◆慌てて「謝罪撤回」に奔走する世界平和青年学生連合HP

 教団サイドで反応があったのは世界平和青年学生連合のみ。

 1月14日に「12月31日と1月2日に行った行事の報告は、当団体のホームページに掲載いたしました。それをもって回答とさせていただきます」との回答FAXが届いた。

 質問要旨の「訪韓大学生と勝共UNITEメンバーの重複」「『安倍政権支持』を掲げる勝共UNITEへの見解」「ダブルスタンダードでは?」等への言及はなく、“行事の報告”という活動レポート「日韓青年学生平和プロジェクト」にも、“謝罪”や”謝罪要求”に関する内容は一切掲載されていない。

 ただ、筆者が質問書で各韓国メディアの報道内容を知らせたためかYSPは1月13日、先手を打ってHPに「活動についてのお詫び」を掲載した。

 主張内容の要点は以下。

「韓国の報道を通して、一方的にことさらに『謝罪をした」という印象が伝わっていることに、困惑」「日本人が謝罪をしに行ったような誤解を与えてしまったことに対しては、心よりお詫び」「今回の一連のプロジェクトは謝罪する企画ではなかった」

・ナヌムの家を訪れての謝罪について

「謝罪は行っていません」

・韓国人被爆者への謝罪について

「組織的に青年に謝罪させたものではありません。従って日本を代表して謝罪したわけではありません」

・日本の過去や安倍政権に謝罪要求をしたという情報について

「一部のブログなどでは、私たちが活動の中で安倍政権や日本に過去の歴史への謝罪を要求したかのように書かれていますが、そのような事実は一切ありません」

・慰安婦像への礼とハグについて

「予定にはなかったこと」「日本社会に誤解を与えかねない問題行動」

 日本政府・安倍政権への謝罪要求は「一部のブログなど」ではなく、韓国の一般メディアが報じている。

◆「そんなバカなこと」呆れる前環境大臣

 保守系著名人の中で回答があったのはまず吉木誉絵事務所。1月14日の回答。

「吉木はこれまでに、言論の自由を重んじる立場から、自身の考えと一致するか否かに関わらず、反社会的組織を除く様々な団体が主催する講演会に講師等として参加させていただいております。講演を主催する団体組織の思想、個別の活動内容については関知するものではなく、ご質問のいただいた点についてお答えするような立場にございません」

 西川京子学長からは1月15日、九州国際大学を通して「西川学長の意向により、コメントは差し控えさせていただきます」と回答があった。

 その他の著名人からは期限までに回答が得られなかったため、統一教会やその関連団体について昨年10月「ちゃんとした組織としてちゃんとした活動をやっている」と筆者の取材に答えていた原田義昭前環境大臣に電話をかけて訊いてみた。

 慰安婦などの歴史認識問題で韓国サイドへの強気の発言で知られる原田議員は統一教会が2世信者に行わせた韓国謝罪行脚と日本政府・安倍政権への謝罪要求について「初めて聞きました、そんなバカなこと」と呆れたものの、教団のダブルスタンダードについては「一つの組織が一つのことを主張しながら政権と意見を違うことも出てきたってそんなことは当たり前のこと」と答えた。

 統一教会の“二枚舌”は今回に限ったことではないが、韓国での報道が日本に飛び火しかねないと、教団サイドが火消しに必死なことだけは確かなようだ。(文中一部敬称略)

<取材・文/鈴木エイト(ジャーナリスト)>

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表〜主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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