タイ全土で小売店がレジ袋提供一斉停止。困惑しつつもネタ化して楽しむタイ人買い物客

タイ全土で小売店がレジ袋提供一斉停止。困惑しつつもネタ化して楽しむタイ人買い物客

photo via sihamese on Twitter

◆タイでレジ袋提供一斉廃止

 タイでは今年に入った1月1日から、全土の小売店約2.5万店舗が一斉にレジ袋の提供を停止した。つまり、コンビニエンスストアなどで買いものをしたときに無料で入れてくれる袋がなくなったのだ。

 この取り組みはタイ小売業協会が実施するもので、加盟する小売業者がプラスチック製のレジ袋の無償提供を取りやめている。コンビニではセブンイレブンやファミリーマート、スーパーではタイ最大チェーンのビッグCなどが行っており、実質的にタイ全土でレジ袋がなくなったようなものだ。

 タイでは近年、プラスチック製品などによる海洋汚染が深刻化しており、海洋生物がこれらの製品を飲み込んでしまったり、身体の一部に引っかかって死亡している案件が増加している。これらの環境問題をタイ政府も取り上げており、小売業協会に加盟する43社が無料提供を取りやめることを決定した。世界的にレジ袋の有償化は珍しくないが、タイの場合は一斉に実施したので、規模の大きな活動として注目される。

◆「何に入れて持ち帰るか」を競うようにSNSにアップ

 タイ国民はこの活動を支持する人が大半ではあるが、これまで習慣的に受け取っていたものが急になくなり、戸惑っている人も少なくない。筆者もそのうちのひとりで、このニュースは昨年9月ごろには発表されていたことから知ってはいたものの、いざ始まると買ったものをどう持ち帰るかで途方に暮れることもしばしばだ。実施されて半月以上が過ぎた今も、レジの前で困ってしまうことがある。

 ただ、現状はまだこれまでのレジ袋が残っている小売店も少なくない。そのため、コンビニなどでは在庫があるうちは買いもの客に袋が必要かを訊ね、ほしい人には無料で提供しているところもある。

 また、この困惑を楽しんでいる人たちも少なからずいるようだ。タイもスマートフォンの普及率が高く、スマホの普及率以上にSNSのアカウント開設が多い。いわゆるインスタ映えなどもタイ人の国民性に非常に合っていて、多くの人があらゆる場所でインパクトのある画像撮影を狙っている。

 今回のレジ袋がなくなったことで一部のタイ人の間ではなにに商品を入れて持ち帰るかを競うようにSNSにアップすることが話題になった。魚の干物を干す網やバケツ、鳥かごなど、あらゆる「入れ物」に商品を入れて持ち帰る様子がネットに上がっている。中にはゴザをレジ前で広げて商品を包んでいく動画をアップした芸能人もいて、案外タイ人は戸惑いながらも楽しんでいるようである。

 ちなみに、無償提供の袋はなくなったものの、エコバッグなどは販売されている。スーパーのビッグCではレジ横にエコバッグが最大サイズでも5バーツ程度で売られている。日本円で18円程度の金額だ。サイズはこれまでのレジ袋と同じくらいのものなので、買いもの量によっては数枚必要なものの、袋を忘れても対処はできそうだ。

◆とはいえ、まだまだ課題も残る

 ただ、この活動は果たしてどれほどの効果を生むのか、すぐに答えは出ないだろう。タイは外食が一般的で屋台も多い。こういった屋台でも持ち帰り用にプラスチック製の袋が使われており、今回の活動とは関係ないため、引き続き利用される。

 それから、タイではレジ袋をゴミ袋として利用している世帯も少なくない。タイでは日本の一部の自治体のように家のゴミを出す際に使うゴミ袋が指定されていない。同時に分別も最近政府が推奨するものの、いまだに曜日や分別を気にする必要がない。というのも、国や自治体から委託されるゴミ回収業者の従業員らは給与水準が非常に低く、ゴミの中からペットボトルや売却できるものなどを彼らが仕分けして売りさばいているのだ。大義名分として、それらは彼らの収入にもなるので、ゴミは彼らに分けてもらうというのがタイスタイルなのだ。

◆一般層はまだゴミ問題に無関心

 消費者がレジ袋を使わなくなったところでプラスチックを使った製品は大量に売られているし、結局のところ、海に流れるように捨てているのはゴミ業者だ。一般のタイ人も先進国、東南アジアで言えばシンガポールほどゴミの悪影響に関心を持っていない。いまだに平気で道端にゴミをポイ捨てする人が少なくないのだ。だから、まずはそういった啓蒙活動から始めて行くべきなのではないだろうか。あくまでも環境問題に疎い筆者の個人的な意見であるが、結果が見えてくるのはかなり先のような気がする。

 いずれにしても、もう始まったことである。レジ袋の負担がなくなり、かつエコバッグで売り上げも立つようになった小売業者がレジ袋の無償化に戻すことはまずないだろう。このレジ袋取りやめは観光客にも大いに関係することだ。コンビニで大量に買いものをする際にはなにかしら袋を用意することをおすすめする。

<取材・文・撮影/高田胤臣>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など

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