病院や保育園、オススメのお店情報を住民同士がシェア。ご近所SNS「マチマチ」が作る「つながりのある社会」

病院や保育園、オススメのお店情報を住民同士がシェア。ご近所SNS「マチマチ」が作る「つながりのある社会」

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 SNSを通じて世界中の人とコミュニケーションが取れる一方で、地域の繋がりが希薄になっている。そんな中、地域住民が地元の情報を共有して助け合う「ご近所SNS マチマチ」というサービスが人気だ。

 同サービスの利便性やユーザーの感想のほか、運営会社である株式会社マチマチ代表の六人部生馬さんに開発のきっかけや現在の活動を聞いた。

◆「この小児科の混み具合を教えてください」に住民が回答

 まず、マチマチはどう使うのかをご紹介する。

 普段の使い方としては、大きく分けると2つある。ひとつは、住んでいる地域にあるお店や施設について知っていることを発信すること。

「このカフェでは、パスタセットがおすすめ」

「駅前のスーパーでは青果が安い」

といった感じだ。

 もうひとつは、気になることを他のユーザーに質問したり、誰かの質問に回答したりすることだ。

「◯◯病院の混雑具合が知りたい」

「子どもを◯◯保育園に入れたいけど、評判はどうか」

などの質問が寄せられている。感覚としてはこちらの使い方をする人が多い。

 寄せられる質問を眺めると、行ったことがあるお店や施設名が出てくるので親近感が湧いてくる。

 かかりつけの小児科に関する質問を筆者が目にした時には、予約方法や混み具合、スタッフや先生の対応について細かく回答した。自分が持っている情報が、生活圏を同じくする人の疑問解消に繋がるのは嬉しかったし、連帯感を覚えた。 

 そのほか、就活や転職活動中の人からは「この企業はどうか?」という質問があるほか、地域のイベントに関する告知も見られる。マチマチを通じて家の近くで意外な催しが開かれていることがわかる。地域のことを知るきっかけになるわけだ。

◆台風15号上陸時には、リアルタイムな情報を共有して助け合った

 マチマチは普段の生活で役立つのはもちろんだが、災害時に大きな力を発揮する。強い勢力で昨年上陸した台風15号での事例を紹介する。

 災害時には自治体が情報を発信するが、職員の数には限りがあるため、リアルタイムというわけにはいかない。しかし住民が知りたいのは「今起こっていること」であり、情報の鮮度にズレが生じてしまう。また自治体によってはサーバーがダウンし、現況が全くつかめない事態も発生した。

 このときマチマチではユーザー同士で、川の水位や避難所の状況、食料品の残り具合などを共有し、助け合っていた。

 マチマチユーザーの田中さん(仮名、30代女性)は「住んでいる自治体のサーバーが落ちたのですが、マチマチに災害情報を共有するコミュニティが立ち上がっていたため現状がわかり、本当に助かりました」と振り返る。

災害以外にも、地域のコミュニティーが役立つケースがある。毎年1月頃には認可保育園の申請に落ちた親たちが、復職への不安を抱えたり、保活疲れにうんざりしたりする。そんなとき、マチマチに心境を書くことで、同じ悩みを持つユーザー同士が励まし合っているのだ。

「悩んでいるのは自分だけではない」と思えるだけでも、不安感はいくぶん和らぐ。

◆町会の活動を知り、好感度が上がった

 お二人のマチマチユーザーに使い方やメリットを聞いた。

 吉田さん(仮名、30代)は、「地元に住んでいる人だからこそ知っている情報を知れる」ことにメリットを感じている。まさにご近所SNSの強みだろう。

 また自身が保活で苦労した経験があることから、保育に関する情報を積極的に発信している。

「子どもを預けている保育園について思うことを書いています。保育園でどんな保育をしているか、保育士さんがどんな対応をしているかはインターネットではなかなか検索できません。だから自分が発信しようと思いました」

 また前述の田中さん(仮名、30代女性)も、「地域ごとの情報が入手できるのが便利です」と話す。

「Facebookでもイベント機能はありますが、開催地を見ると遠かったりして結局子連れでは行けなかったりします。マチマチで近所のイベントが見れる機能がありますが、子育て世代には助かります。私はどちらかというと近所のイベント情報を発信する側なのですが、近所のママ友からはすこぶる好評です」

 またマチマチを利用する中で、町会に対する印象が変わったという。

「マチマチを使うまでは、お祭り以外の町会の活動はあまり見えてこなかったのですが、マチマチで町会が色々な活動をしていることを知り、町会に対しての好感度が上がりました」

マチマチによって地域への繋がりを意識するようになったようだ。

◆紙媒体よりもネットの方が広く、たくさんの人に情報を届けられる

 マチマチのユーザー数は着実に増えている。2018年初めには20万人に満たなかったが、2019年時点では160万人目前にまで迫る。

 マチマチはどのようにして生まれたのか。代表の六人部さんが挙げたのが、「地域間のコミュニーションにネットが活用しきれていないことへの違和感」だった。

 飲み会店探しや賃貸物件の空き状況のほか、就活でもネットを使うのが当たり前だ。しかし地域での情報伝達手段は掲示板やチラシ、回覧板というケースが今でも根強い。ネットが発達した現代には合わなくなっている。

 また第一子が生まれたことも転機となった。

「親になったことで『どの小児科がいいのか』『どの公園だと遊ばせやすいのか』など、”地元の情報”が気になるようになりました。でも意外と情報が少なくて、どうやって選べばいいかがわかりません。

結局は妻の知人からの口コミで解決できましたが、不便だなと思いました。僕もやろうと思えば公園にいるパパさんやママさんに話しかけることはできますが、相当に勇気がいります(苦笑)

そんなストレスを感じなくても、ネット経由で地域の情報を得られる『地域のデジタルインフラ』をつくれないかを考え始めました」

◆全国25の自治体と連携。地域住民への情報発信をサポート

 マチマチは全国25の自治体とタイアップし、地域住民への情報提供ツールとしての機能を果たしている。首都圏では渋谷区や目黒区、神奈川県川崎市、横浜市といった政令指定都市と連携。西日本では神戸市や佐世保市がマチマチの利用者だ。

 多くの自治体は、若年層の流出や高齢化に伴う地域活動の消極化に悩んでいる。これにより地域の繋がりが弱まり、活気を失ってしまう。とはいえ、地域コミュニティを主導する最大のプレイヤーは自治体だ。マチマチは自治体と住民のコミュニケーションをサポートできないかを考えた。

 たとえば、イベントのお知らせを自治体がマチマチを利用して発信すれば、チラシでは届かなった層に情報が行き渡る可能性がある。これまで地域活動に参加してこなかった人は、興味がないわけではなく、活動の内容を知らないだけかもしれない。前述の田中さんのように、マチマチ経由で活動の詳細を知り、関心を持つ人も出てくる。そうなれば、いろんな人を地域のコミュニティーに巻き込んでいける。

 このようにマチマチは、自治体と住民間のコミュニケーションにも一役買っている。ユーザーとして感想を述べた吉田さんも「区の発信だから信頼できる」と話していた。

 六人部さんは、「個人的な感覚なのですが、ご近所のように物理的に近くにいる人たちの繋がりを求める人が増えているように思います。マチマチを通じて、当社が掲げる『ひらかれた、つながりのある地域社会をつくる』という目標の実現に向けて取り組んでいきます」と意気込みを語ってくれた。

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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