「奉仕の精神」や「見て覚えろ」を撤廃でホワイト化。働きやすさを追求した企業に贈る「GOOD ACTIONアワード」

「奉仕の精神」や「見て覚えろ」を撤廃でホワイト化。働きやすさを追求した企業に贈る「GOOD ACTIONアワード」

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 株式会社リクルートキャリアが主催する「第6回 GOOD ACTION アワード」の受賞式が2月4日、東京・銀座で行われた。

 「GOOD ACTION」とは、働き方の多様化が求められる現代において、一人ひとりがイキイキと働くための職場の取り組みに光を当てるプロジェクトのこと。

 昨年8月25日〜9月25日の間に応募した企業の中から書類、訪問、最終審査を経て選ばれた7社が出席した。

 各社は四つの部門賞に選出され、その中から大賞が決まる。大賞に輝いたのは、どんな企業なのだろうか。審査員は、慶応義塾大学の若新雄純特任准教授やSAPジャパン株式会社・人事戦略特別顧問のアキレス美知子氏ら4人が務めた。

◆職人の「見て覚えろ」を撤廃。動画を活用した新人教育法

 それぞれの審査員が独自の目線で高く評価したアクションに贈呈する「審査員賞」には、「株式会社KMユナイテッド」(大阪、塗装工)「有限会社原田左官工業」(東京、左官工事)「株式会社パネイル」(東京、エネルギーシステム)の三社がランクインした。うち二社が職人の育成に新たな手法を取り入れた、という特徴がある。

 「株式会社KMユナイテッド」は、10年で一人前になるという塗装職人の常識を壊し、3年で技能を習得できる独自のプログラムを導入した。

 職人の仕事を分析し、難易度が低い作業から徹底的に教えることで基本工程のプロを育てる。そのうえで、熟練の職人から専門性の高い技術を学ぶ体制を採用。若手が早く成長できるほか、女性や外国人など「従来は塗装工とは無縁」と思われていた層が塗装職人として活躍できる環境を整えた。

 「有限会社原田左官工業」は、長きにわたり左官業界にあった「見て覚える」「技術は盗むもの」との考えを疑い、新たな育成方法を作り出した。名人が壁を塗る様子を収めた「動画」を手本に、熟練した職人の動きを真似て塗り方を覚える。これにより、現場での成長が格段に早まった。

 また以前は一人前になるまでの期間が人によって違っていたが、見習い期間を一律で「4年」と定めた。キャリアパスが明確になり、30%にも届かなかった定着率が80〜90%と大きく改善した。

 会社の成長に伴い生じた社員間のコミュニケーションギャップをユニークな手法で埋めたのが、「株式会社パネイル」だ。社長自らがパーソナリティーを務め、週に一度社内ラジオ「パネラジ」を放送。

 トピックは会社のビジョンではなく、ざっくばらんにプライベートを語る。社員から寄せられた質問に答えたり、社員をゲストに招いたりして、トップと社員の間のコミュニケーションツールとして活用した。3ヶ月に1度全社員が集まる総会では、「ラジオで話題に上った人ですね」といった感じで、初対面の社員とスピーディーに打ち解けられるようになったという。

◆介護の「きつい職場」を一新!離職率40%→7%へ

 働き方の生産性向上に繋がるイノベーティブなアクション「ワークスタイルイノベーション賞」には、滋賀県の介護施設「エーデル土山」が選出。

 過去には労基署から是正勧告を受けるほどの労働環境だったが、スタッフファーストの施策で入職希望者に待ちが出るほど働きやすい施設へ変化を遂げた。その秘訣は、3つの離職理由である「残業」「腰痛」「メンタル不調」をなくす「トリプルゼロ」にある。

 また専用機器を導入してスタッフの肉体的な負担を軽減したり、毎月役職者が職員全員に「トーキング(個人面談)」を実施し、仕事やプライベートの悩みを把握する。無駄なコストをカットして生まれた財源で余剰人員を配置し、急な欠員に備える。これにより過去には40%だった離職率が、7〜8%にまで下がった。

◆スタッフの弱みではなく、強みを生かす

 働き手のバリエーションを多様化することに貢献したアクションに対する「ワークスタイルバリエーション賞」には、「グリー株式会社/グリービジネスオペレーションズ株式会社」(神奈川、ITサービス)、「ソフィアメディ株式会社」(東京、訪問看護)の二社が選出。

 「グリー株式会社」は、2012年に障がい者雇用の推進のため特例子会社を設立。障がい者の中でも「発達障がい者」を積極的に採用し、彼らが力を最大限に発揮できる環境を整備している。

 特例子会社代表との1on1面談や上長面談などを通じて、弱みではなく強みにフォーカス。易疲労や過集中など発達障がい者特有の症状に配慮した休憩室や、聴覚過敏用のイヤーマフを用意している。同社では56人の社員のうち37人が発達障がい者であり、グリーグループの事業における戦力として活躍している。

 「ソフィアメディ株式会社」では、訪問看護の現場で働くスタッフを支えるため、独自の働き方改革「ソフィアWOW!」(Work for Our Wonderful life!)を実施。

 2時間単位で取得可能な有給休暇や育休明けスタッフの正社員再登用、仕事・プライベートのどちらでも相談できる弁護士ホットライン、定年後の再雇用上限75歳への引き上げ、やむを得ない事情で退職したスタッフの職場復帰支援などを制度化した。

 同性同士の事実婚に祝い金を支給したり、育児休業を適用したりといったLGBTQのスタッフの働き方支援など、多様な人材が活躍できるようにするための制度も整えている。過去2年間で、拠点数・従業員数ともに増加したが、離職率は大幅に低下した。

 特別賞には、「タニタ株式会社」(東京、健康機器メーカー)がランクインした。同社は「日本活性化プロジェクト」と銘打ち、社員を対象に雇用から業務委託契約をベースとした「個人事業主(フリーランス)」に切り替える取り組みを2017年からスタート。

 希望者は会社と合意すれば個人事業主として独立し、会社から業務を受託できる。契約期間を3年間として仕事の安定性を確保できる。2019年は3期目となり、これまでに18人がこの仕組みを利用して独立した。

◆大賞選出の企業トップが伝えるメッセージ

 その年に受賞した取り組みのうち、総合的に最も素晴らしいアクションに贈呈する「大賞」に輝いたのは、スタッフファーストの施策を打ち出し、離職率40%から一桁代まで下げた介護施設運営「エーデル土山」。

 大賞受賞のアナウンスが流れると、施設長の廣岡隆之氏は照れながら壇上に上がり、トロフィーを受け取った。

 介護業界では経営サイドがスタッフの「奉仕の精神」に任せ、働き方を改善する有効な手を打ち出せないことが多い。しかしエーデル土山では、作業を徹底的に分析し、無駄を排除。その結果、年平均残業時間は0.02時間を実現した。この数字は、介護業界では驚異的だ。廣岡氏は、

 「不人気な業界に加え、滋賀県という土地柄から労働人口は減っており、働き方を改革せざるをえない状況でした。私も妻と二人の子どもがいるので、家庭と仕事とのどう両立するかは、喫緊の課題でした。

 職員のワークライフバランスを見直したり、福利厚生を充実させたりと様々な施策を打ち出したからこそ、今の結果を作れたと思います。

 辛いこともたくさんありましたが、一歩ずつできることを真剣にやってきました(中略)ブラックな職場でもやり方次第で十分に魅力的な職場へと生まれ変わることができます」

と語った。

 企業が取る働き方改革の傾向について審査員を務めた守島さんは、「改革を阻む壁を見つめ、その壁を乗り越える施策を打ち出している。経営サイドが従業員とのコミュニケーションを重視している」と話した。

 またアキレス美知子氏は「私は第一回から審査員をしていますが、この6年の変化としては『働き方を改革せざるをえない』状況になっていること。自社ではどうせ無理だと諦めず、チャレンジしてほしい」とエールを送った。

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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