間違った科学的・心理学的知識を広めるタレントや知識人の「2つの弊害」

間違った科学的・心理学的知識を広めるタレントや知識人の「2つの弊害」

kai / PIXTA(ピクスタ)

◆科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。

 科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実シリーズ最終回の今回は、Youtuber・知識人タレント・その他エンターティナー編をお送り致します。こうした方々は、インフルエンサーという言葉に最も適合する方々だと思います。

Youtuber・知識人タレント・その他エンターティナーの方々が活躍する舞台は、主にTV・ラジオあるいはネットです。TV・ラジオやネット媒体で科学的・心理学的という言葉を多用しているインフルエンサーの中には、視聴者に誤解を与えるような科学知見の使い方をしている人々が多々見受けられます。それはどんなインフルエンサーでしょうか。

◆科学をエンタメ化するインフルエンサー

 最近、コンプライアンスの関係もあってか、科学・心理学という言葉を用いて自説を述べるインフルエンサーのTV・動画画面のテロップやチャンネル・Webページの説明欄には、「これはあくまでも個人の見解です」「正確なことは専門家にご相談下さい」「台本があり、あくまでもネタとして楽しんで下さい」「エンターティメントです」などの記述があります。

 場合によっては、小さく書かれているので気付かれない方も多いかも知れません。

 気付かれないくらい小さく書かれていることも問題ですが、それよりも大きな問題は、「科学・心理学的に○○だ」と言いながら、「個人見解・ネタ・エンタメです」と注意書きすることです。これは反則です。

 科学というものは、実験の条件と同じ材料と方法を揃えれば、誰もが同じゴールに行きつく、誰もが同じ結果を導けるという性質を持ちます。したがって、科学・心理学という言葉を使った瞬間、個人的な経験則を超えた広く通じる見解・知見になります。つまり、その知見は、そのインフルエンサーでなくても、誰にでも使えるものだということになります。

「難解な科学をわかりやすく楽しく紹介する。だから科学をエンタメ化しているんだ」というメッセージを持ったインフルエンサーがいます。

 大枠としては私も賛成です。私も似たような志向を持って、科学をビジネスに実装する方法を試行錯誤し、皆さんにお伝えしています。その過程で科学の厳密な定義や条件を緩和・省略することはあります。

 ただし、科学知見の大筋は変えることなく、お伝えするようにしています。しかし、広告から利益を得ることが最大目標のインフルエンサーは、単に自己の主張を際立たせるために、エンタメという名を隠れ蓑に科学的・心理学的という言葉を乱用しているように思えます。

◆レコメンド機能によって抜け出せなくなるインフルエンサーの呪縛

 科学的・心理学的という言葉を乱用するインフルエンサーの言葉やパフォーマンスに騙されてしまう方々を見ていると、そうした方々は見た目が派手で簡単に習得できるノウハウを求めているように思えます。

 また、自分で書籍や論文を調べ、データとロジックから考えることをせず、インフルエンサーの言葉を鵜呑みにしているように見受けられます。

 事実、私が開催している表情分析のセミナーの質問コーナーで某インフルエンサーの名前を出し、「○○はこう言っているけど、どうなんですか?」という質問を多々受けます

学説や理論ではなく、それらの説や理論を紹介しているインフルエンサーの名前を挙げていることが問題です。

◆ アルゴリズムによって、似非科学ばかりが人々の目につくようになる

 なぜ問題なのでしょうか。

 こうした方々、特にあるインフルエンサーのファンの方々は、科学者・研究者によって書かれたまともな科学書籍からではなく、インフルエンサーの動画から科学知見を知るのだと思います。

 インフルエンサーの動画を見て影響された方々が、それを盲信します。動画再生数が上がり、注目度が上がり、様々な方の目に触れる動画になります。その動画に紐づけられたインフルエンサーのサービスや本をweb上で見つけ、購入する方もいるでしょう。

 購入・閲覧履歴からのレコメンド機能によって、マイページやwebページはそのインフルエンサーあるいはその界隈・類似のサービスや本で埋め尽くされるでしょう。まともなことが書かれている科学書籍や品質がよい、あるいは真に素晴らしいサービスは、インフルエンサーのサービスや本に隠され、目に触れることすらない、そんなことになっているのではないかと危惧しています。

  さて、シリーズ5回に渡って、科学を乱用・誤用するインフルエンサーを批判してきました。

 しかし、こうした乱用・誤用の責任は、科学の利用者側だけにあるのでしょうか。つまり、科学を生産する側、すなわち科学者の側の責任はないと言えるでしょうか。次回はシリーズ番外編として、科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実〜科学者の責任と役割〜をお送りします。

<文/清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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