訪日外国人が驚愕。タクシーがタブレットで顔認識して広告表示。根底にプライバシーやジェンダー意識の欠如

訪日外国人が驚愕。タクシーがタブレットで顔認識して広告表示。根底にプライバシーやジェンダー意識の欠如

タクシーの座席に設置されたタブレットに表示された文字

 先日、外国人の友人と会っていたときのこと。「これ見たことある?」と向けられたスマホ画面に映っていたのは、タクシーの座席についているモニター(タブレット)の写真だった。表示されていたのは、気に留めなければそのまま見過ごしてしまいそうな英語の注意書き。筆者の友人が思わず写真を撮ってしまった、その内容は次のようなものだ。

◆カメラで乗客の性別を判断

 “このタクシーのタブレットはタブレットのフロントカメラが集めた画像による顔認識システムを使用しています。画像のデータはもっとも最適化されたコンテンツをお届けするため、性別を判断するよう使われています。

 性別の判断は広告プログラム開始時に起動し、判断の工程が終わり次第、画像データは削除されます。タブレットもサーバーもデータを記録することはありません“

 要は乗客の顔を取り込んで、性別に合わせた広告が流れる……ということだ。

 インターネットの検索やショッピングの履歴、SNSのアクティビティのデータが収集され、広告の内容に反映されているのは、今や誰もが知るところだろう。

 しかし、前もって断ってあるとはいえ、そういったツールとは違い、今回のケースでは事前に何か利用規約などで「同意」しているわけではない。一方的にデータを搾取されているうえ、モニターを見ていなければ、その事実すら知らされないままだ。

 興味がなければ「電源をオフにしてください」とも書いてあるが、放っておけば「勝手に」広告を押しつけてくることには変わりない。

◆プライバシーとジェンダーの問題

 この表示が気になったという友人に話を聞くと、次のような理由で違和感を覚えたという。

「2つ問題があって、簡単に言うとプライバシーとジェンダー。今はあらゆるところでユーザーの個人情報が集められているけど、乗客の顔を無断で撮影するのは行き過ぎだと思う。それもサービス向上のためじゃなくて、タクシーとは関係ないコマーシャルを流すためなんだから、勝手すぎるね。これを放置していたら、いずれ人を監視することにもつながりかねないと思う」(アメリカ人・男性・38歳)

 また、ジェンダーに関しては、過度に性を強調した宇崎ちゃんやラブライブのポスターが公共の場に提示されたことで、そうした広告が次々と炎上している。

 今回のタクシーの件についても、外国人に話し聞くと性別によって表示される広告が異なるという点に、疑問を抱いたという意見が出た。

「性別によって広告を変えるのは意味不明。『男性、女性ならこういうものが好きだろう』って偏見をもとにしているわけでしょう? なんの根拠もないし、性別とセクシュアリティが一致しない人だって沢山いるのに。すごく狭いジェンダー観を押しつけることになるし、馬鹿らしい」(ノルウェー人・女性・34歳)

◆「くだらないものばかり」と広告業界への厳しい意見も

 また、こうしたプライバシーやセクシュアリティに関する問題だけでなく、収集したデータの利用法についても厳しい意見が出ている。

「そんなところでまで情報を集めているのに、くだらない広告とかセンスのないCMばっかりなのはなんで? マーケティングをしているのにうんざりするようなものばかりで、集めた情報が役に立ってるとはとても思えない。程度が低すぎて消費者を馬鹿にしてるみたい」(ポーランド人・女性・63歳)

 そして、元も子もない話だが、そもそも広告が多すぎるという意見もある。

「日本はどこに行っても広告が多すぎるよ。街中でもそこら中にポスターが貼られて、看板が立っていて、コマーシャルの音声が流れている。見た目にも汚いし、うるさく感じるね。消費者もそういうことにもっと声をあげてもいいと思うんだけど」(フランス人・男性・29歳)

 普段は気づかずに生活していても、異なる視点で見ると実はいろいろと目につくことも多い日本社会。わざわざ外国人におもねる必要はないが、特に考えないまま当たり前だと思っていることにも、たまには目を向けてみたほうがいいだろう。

 知らず知らずのうちに個人情報を集められたり、広告によって自分が誘導されているかもしれないとなればなおさらだ。

<取材・文/林泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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