保育園代が全額無料のプログラムも。日本と大違いのポーランドの子育て事情

保育園代が全額無料のプログラムも。日本と大違いのポーランドの子育て事情

イヤイヤ期の2歳とまだハイハイもできない0歳の兄弟を2人同時に世話するのは一苦労だ

 小泉環境相の育休などであらためて注目される日本の育児事情。筆者は一昨年、こうした状況が外国人の目にどのように映っているのか紹介したが、今回は反対に欧州での育児事情を紹介しようと思う。

◆「バラマキだと思うけど」役には立ってる子ども手当

 ポーランドに暮らす弟夫婦(弟30歳、義妹29歳)は2歳と0歳の男の子を育児中だ。独身の筆者は彼らとともに暮らすだけでも一苦労。朝7時に起床(平日は仕事があるのでさらに早い)して、夜0時ごろには就寝する生活リズムや、腰痛持ちには辛い子どもと同じ目線での遊び、移動するたびに装着・着脱を繰り返すベビーカーやチャイルドシート、そしてイヤイヤ期に突入した長男とただでさえ手のかかる次男の終わりなき絶叫……。

 何もかもが筆者の無力さ、そして育児をする親の力強さを感じさせる。子供が“爆発”しないよう細心の注意を払い、慣れた手つきで素早くベビーカーを組み立てる親の姿は、タフでチームワーク抜群。まるで百戦錬磨の特殊部隊員だ。

 天使の笑顔で「おじさん、大好き!」が一転、鬼の形相で「嫌い、あっち行け!」。平和な家族団欒の空間が、数秒後には阿鼻叫喚の修羅場と化す……。そんな過酷な毎日が育児なのだと痛感させられる。

 そんな彼らも夫婦2人で日々の試練に立ち向かっているわけではない。義妹に話を聞くと、家族や友人、国や地域からの支援がいかに重要か伝わってきた。まず、育児にかかる費用は以下の通り。

「(長男が通っている)保育園代が月800ズロチ(約2万2400円。1ズロチ=約28円)、そのほかオムツやらを合わせて子ども2人で育児にかかるお金は2000ズロチ(約5万6000円)ぐらい。正直、票集めのバラマキだと思うけど、与党の政策で子ども一人につき月500ズロチ(約1万4000円)が給付されているから、実際はその半分ぐらい」

 ちなみにポーランドの平均月収は手取りで約3775ズロチ(約10万5700円)。娯楽や嗜好品にかかるお金は日本と同じか少し安い程度だが、食料品などの生活費は日本に比べると圧倒的に安く、昨年の英金融大手HSBCが発表した海外駐在員の生活調査レポートでも33か国中13位(日本は32位)だった。つまりは決してみんなが贅沢をしているわけではないが、“暮らしやすい”のだ。(参照:HSBC)

◆EUの支援で保育園代が無料に

 年末調整でも子どものいる家庭は還付金がもらえるそうで、さらにEUからの支援もあるなど、やはり福祉は充実しているようだ。

「『アクティブなママ』っていうEU のプログラムでは、保育園代全額を一年分給付してもらった。これは育休から仕事に復帰する親向けのプログラムで、親一人につき一年ぶんもらえる仕組み。前回は私が申し込んだから、今度は旦那の名義で申請してる。ヨーロッパではこういう支援プログラムがよく行われていて、予算も多い」

 近年は欧米でも少子化が問題になっているが、国や地域がしっかりと親を支援しているか否かで選択肢も変わってくるだろう。少なくとも、産めよ増やせよと言うだけで、あとは自己責任と突き放すより効果があるはずだ。

 しかし、「保育園落ちた、日本死ね」ではないが、保育園の競争率はポーランドも高いという。

「国営の保育園に入るのはめちゃくちゃ大変。経済状況が悪かったり、ひとり親の家庭が優先的に入れるようになってる。ただ、ひとり親の支援に関しては、今どきは事実婚も増えてるから少し時代遅れだと思う。わざわざ書類上の結婚をしない人も多いから」

◆医療制度は欧州でもバラツキ

 一方、医療制度については同じヨーロッパでも少し違いがあるようだ。

「ポーランドでは健康面はもちろん、子育てに関するくだらない質問でも、その日のうちに予約して小児科医に会うことができる。国民健康保険が適用されて料金は無料。ところが姉が住んでるオランダでは、まず総合的な医者に診てもらってから小児科医に行くか、チャットでしか話を聞いてくれない。スピード感は国による」

 国民皆保険のある日本は他国に比べても、福祉は充実しているほうだ。社会福祉にまわすという名目で増税が行われただけに、今後はさらに子育て支援に期待したいところ。というか、そうあって然るべきだ。

◆公園にも授乳施設

 続いてインフラ面だが、こちらの環境は日本とは段違いだ。

「バスとか路面電車みたいな公共の交通機関にはベビーカー用の席があるし、いつも乗るときは誰かが助けてくれる。電車でも路線によっては子連れ用の車両があって、そこでは子どもが泣いていても他の乗客には注意する権利がない。レストランでもベビーチェアとか子ども用のメニュー、キッズスペースとか授乳室のあるところが多いね」

 もちろん、そういったインフラが整っているからといって、すべての人が子どもが優しいわけではない。ただ、論争が起きても、子連れの家族を応援する声のほうが大きいことは確かだ。

「(ポーランド西部の都市)ポズナンで、子連れの客がレストランを散らかして帰ったことがあって、お店が『6歳以下お断り』って張り紙を出したの。それで大騒ぎになって、有名人からも抗議が殺到。国中から非難を浴びたことがあった」

 保育園や幼稚園の建設に地域住民が抗議するようなことも、まず考えられないという。

「最近は公園にも子どもの服を替えたり、授乳できる小屋を造ってるし、新しく開発される住宅街とか集合住宅には必ず子ども用の広場がある。それに反対したり、場所とか遊びの内容を制限することもありえないと思う」

 子どもたちの遊び場や親が安心して子どもを預けられる施設が非難を浴びる……。そんな不健全な環境では、より育児に対してのストレスや労力が増す。当然、少子化を助長することにもなりかねない。

 後編では育児休暇、そして子育てに奮闘する親たちの赤裸々な愚痴を紹介する。

<取材・文/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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