新型コロナで中止になった「MWC」。バルセロナのホテルはキャンセルを埋めるため8割近くの値引きを断行

新型コロナで中止になった「MWC」。バルセロナのホテルはキャンセルを埋めるため8割近くの値引きを断行

Leonhard Niederwimmer via Pixabay

◆5億ユーロの経済効果がオジャンになったMWC中止

 新型コロナウイルスの感染を懸念して開催を中止した「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」は2月24日から27日までバルセロナで開催の予定であった。予定していた訪問客は11万人。バルセロナ市内にあるホテルの4万室の大半が埋まってしまう予定であった。MWCの開催前までに予約は7割近くを達成していた。ホテルによっては開催前までに予約で満室になっていたホテルもあった。

 しかも、この開催でバルセロナには5億ユーロ(590億円)分の経済的潤いをもたらす見込みであった。それが中止となって、バルセロナの州と市の政府やホテル連盟などはこの空白となった期間を埋めるべく必死のプロモーション活動を行っている。バルセロナへの訪問客を出来るだけ多く誘うためである。

◆8割値引きも。ブッキング・ドットコムは「掘り出し物」として紹介

 ホテル連盟のジョルディ・メストゥレ会長によると、前述した5億ユーロのほぼ20%がホテルの売上になる予定であったと指摘している。

 期待していた売上の一部でも回復させる為に現在ホテルは値引きを実施して客引きに努めている。その一部を以下に列記して行くと、「Eurostars Grand Marina」は開催4日間で2891ユーロ(34万1000円)だったのが、594ユーロ(7万円)に値下げしている。ほぼ80%の割引となっている。同様に、「Claris Hotel & Spa GL」は4日間でツイン部屋3177ユーロ(37万5000円)だったのが、680ユーロ(8万円)に値下げした。「Miramar Barcelona」だとデラックス部屋が4日間で2900ユーロ(34万2000円)だったのが758ユーロ(8万9000円)と値下げ。「Hotel Palace」で3人部屋のスイートが平均して2904ユーロ(34万3000円)だったのが現在559-1221ユーロ(6万6000円―14万4000円)となっている。

「Majest?c」、「W」、「Barcelona Edition」はすべて満室となっていたが、現在ブッキングドットコムは「掘り出し物」と題してそれぞれ異なった部屋を提供している。展示会場に面した「Fira Congress」だと460ユーロ(5万4000円)していた部屋が現在132ユーロ(1万5500円)となっている。その近くの「Travelodge Barcelona Fira」は689ユーロ(8万1000円)だったのが268ユーロ(3万1600円)に値下げしている。(参照:「El Pais」、「El Pais」)

 一般大衆向けの3スターのホテルも、開催期間中は400-500ユーロ(4万7000円―5万9000円)していたのが現在100ユーロ(1万2000円)となって、これが本来の正常の価格だということだ。

 バルセロナはスペインで物価が一番高い都市だ。兎に角、このような世界的に重要なイベントの場合はホテル業界は値上率を非常に高くするというのも異常ではある。

 ただ。ホテルの場合は、今回のような事態で展示会が中止となっても予約の50%は保険で補填できるというメリットがある。勿論、保険に加入していた場合に限られる。残りの50%は回収できない。しかし、平常時の宿泊代金を考慮すれば、50%でも回収ができることに満足すべきであろう。

◆悲惨なのは飲食店や納品業者

 問題なのは食材などを開催を見込んで通常以上の仕入れをした納品業者だろう。彼らの負担はしんどいものになっている。例えば、プレミアム・マグロを納品している「Arrom Barcelona」や海産物の「Maremar」はMWCの開催期間中にホテルやレストラン向けに通常よりもより多く仕入れて納品体制を整えていた。それができなくなって売り先を見つけるのは大変な作業だと業者は告白している。勿論、在庫を捌くのにかなりの値引きをせねばならなくなるのは必至だ。

 肉の場合も同様だ。「Compa??a General C?rnca」のマルティン・コロメル社長は15%ほど売上が減少すると見ているそうだ。

 植木業者も今回被害を被っている。展示会場を飾るのに室内用の花など700個の植木鉢を「Vivers Barri」は用意していたそうだ。6年前からMWCの会場に納品しているという。ひと鉢が最低30ユーロからのもので、用意していた全てを捌くのにプレゼントとして無償提供する場合もあるだろうと覚悟しているそうだ。(参照:「Cronica Global」)

 これらの納品業者の場合はホテルと違って保険で補填できないので被害が脆にかぶることになる。

◆バルセロナ市主導で、失ったMWC収入獲得に必死

 MWCが開催されていた4日間の前後を加えて7日間を「Opportunity Week」と名付けて観光とデジタル分野のキャンペーンを実施している。観光では「Barcelona Turisme」と題して例えばガウディのバジョー邸(Casa Batll?)などを見学するのに一つの入場券で二人が見学できるといったサービスを提供している。

 高速列車もバルセロナを訪れる人には乗車券の35%割引、飛行機もバルセロナをベース基地にしているブエリング航空がヨーロッパの58の都市からバルセロナに向かうチケットに20%の割引を適用している。その為に2月22日から3月5日まで1万枚の予約クーポンを用意しているそうだ。(参照:El Diario)

 デジタル分野では「Tech Sprit Barcelona」と呼ぶイベントを開催。この分野に関係した起業家らも参加して情報交換の場とするとしている。4000人の参加を見込んでいるそうだ。

 MWCの開催が中止となったバルセロナであるが、その開催期間中にできるだけ多くの訪問客をスペイン国内及びヨーロッパから募る運動をバルセロナの市政が主導して展開しているわけだ。

 ところで、来年もMWCはバルセロナで開催されるのか? この疑問は当面不透明のままで明白にはされないであろう。2023年までバルセロナで開催される契約は交わされている。しかし、MWCの主催者側ではカタルーニャの独立問題に派生した動きに迷惑を被っており、元政治アクティビスタで現在バルセロナ市長のアダ・コラウとの関係も彼女が市長になった時点から主催者側では彼女とは波長が合わないと感じているからである。彼女は市長になる前までMWCの開催に反対していたことは良く知られている。また、来年の開催候補地としてアムステルダムが有力だという噂が既に生まれている。(参照:「OK DIARIO」)

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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