さいたま市、マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外。子どもの命を軽視する名ばかり「子ども未来局」の愚

【新型コロナウイルス】備蓄マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外 市長宛に抗議文

記事まとめ

  • さいたま市が新型コロナ対策として、備蓄マスクを保育所などへ配布することを決めた
  • しかし、埼玉朝鮮初中級学校幼稚園の職員はこの配布対象から除外されたという
  • 在日本朝鮮人人権協会は不当な差別的判断だとして、さいたま市長宛に抗議文を提出した

さいたま市、マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外。子どもの命を軽視する名ばかり「子ども未来局」の愚

さいたま市、マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外。子どもの命を軽視する名ばかり「子ども未来局」の愚

抗議する保護者や関係者たち(保護者提供)

◆さいたま市、マスク配布対象から朝鮮幼稚園除外の非道

 新型コロナウイルスの感染拡大防止の施策の一つとして、3月6日、さいたま市が決定したのは、市が備蓄する24万枚のマスクのうち9万3千枚を、同市の保育所、幼稚園、放課後児童クラブ、放課後等デイサービス事務所等の乳幼児や小さな子どもたちが集う場所や、また高齢者施設や介護施設の職員向けに配布するというもの。

 マスク不足が深刻になるなか、これ以上のウイルス感染拡大を喰い止めるために、職員たちへの感染防止を第一義として配布を決定した。

 しかし、この配布対象から、さいたま市大宮区にある埼玉朝鮮初中級学校幼稚園の職員は排除された。

 埼玉朝鮮初中級学校に子どもを送る保護者に確認をしたところによれば、同校は日本の教育システムで言う、小学校と中学校のほか、2歳児から年長組までの幼稚園が併設されている。同校の初級部、中級部は、日本政府と埼玉県の要請により、3月2日から学生たちの登校を止めているが、幼稚園に限っては、他の保育園や幼稚園と同様に現在も運営しているのだ。同校幼稚園には現在41名の児童が通園しており、4名の保育士がいるという。

 さいたま市が職員たちへのマスクの配布を決定したのが、3月6日。しかし配布の前日の10日に同行幼稚園の朴洋子(パク・ヤンジャ)園長に、配布がされない旨の通達がなされた。

 同校保護者によれば、園長がさいたま市子ども未来局に問い合わせたところ、同校幼稚園が配布の対象外となった理由は、「(同校幼稚園が)さいたま市の指導監督施設に該当しないため、マスクが不適切に使用された場合、指導できない」というものだった。(この理由については、同局部長が再度保護者達に直接伝えてもいる)

◆子供の命を軽視するさいたま市の決定

 在日本朝鮮人人権協会は、このさいたま市の不当な差別的判断に対し、清水勇人さいたま市長宛に抗議文を提出した。

 以下、抗議文の内容。

”この度、さいたま市は、新型コロナウイルスの感染防止措置として、@放課後児童クラブ A認可保育所 B認定こども園 C私立幼稚園 D小規模保育事業所 E事業所内保育事業所 F認可外保育施設 G障害児通所支援所、以上8区分のこども関連施設について、職員用マスクの配布を決めました。

 しかし、ここには大宮にある埼玉朝鮮初中級学校(幼稚部も併設)が含まれていません。

 感染病対策の一環として同校にも休校を促す「新型コロナウイルス感染症対策のための外国人学校等における対応について(事務連絡)」が届いています。これに関連して、厚生労働省では休校措置に伴う対策として「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」を実施することとしましたが、この助成制度においては学校教育法上の「各種学校」である朝鮮学校などもその対象に含むこととなりました。

(筆者中略)

 さいたま市は、2014年3月に発表した「国際化推進基本計画」で、「外国人市民もくらしやすいまちづくりを目指し、互いの文化や習慣のちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の一員として共に生活し環境を共有する多文化共生の社会づくりを推進します」と宣言していますが、朝鮮学校排除はこの精神に明らかに反します。

 私たちは、この度のマスク配布措置の対象に、朝鮮学校が含まれていないことについて、これを人権上、また人道上も、到底看過できない、許し難い行為として断固抗議するとともに、早急にその対象に同校を含むことを強く求めます。”

 さいたま市のみならず、日本全国にある朝鮮学校を巡っては、高校無償化に際する朝鮮高校の除外問題や幼保無償化対象外問題等、補助金などの不支給に関連する問題があり様々な議論があるが、こと今回のマスク不支給の問題は、それらの問題とは確実に一線を画するものだ。

 政府が「歴史的緊急事態」を標榜し、全力でウイルス感染防止に取り組んでいるなか、自治体レベルでは、子どもや職員たちの「生命の問題」として取り扱うべき問題である。その段に及んで、「マスクが不適切に使用された場合、指導できない」と理由は、まったく理解不能である。

 3月11日、さいたま市子ども未来局で抗議を行った保護者は、「不適切な使用とは、転売のことなのか?」と問いただした。奇しくも、国民生活安定緊急措置法に基づく、マスクの不正転売を罰則付きで禁じた政令が閣議決定され公布されたのが、同じ11日(施行15日)である。

「この緊急事態、幼稚園でもマスクが足りなくて困っているのに、そんなことするはずないだろ!」

 保護者の抗議の声が、子ども未来局に空しく響いた。

◆名ばかりの「子ども未来局」

 保護者たちは、さいたま市子ども未来局の部長、課長、参事たちに対し、決定権者は誰なのかを聞くと、同局の金子博志局長であると答える。そうであれば、局長に直接抗議文を提出したいと申し出ると、局長は予算委員会で応対出来ないと言う。「局長を出せ」、「判断は覆せない、局長との面会は約束できない」の押し問答が長時間に渡り続いた。

 午後7時過ぎ、予算委員会終了後の記者会見に応じていた金子局長との直談判にこぎつけた保護者らは、同局長に直接抗議。同局長は抗議文を受け取り、「再考する」と保護者らに返答した。

 本年度の第43回日本アカデミー賞において、埼玉県を題材にした「翔んで埼玉」が各賞を席巻した。これにより埼玉県に対する世間の注目度が大きく増したのだが、今回のさいたま市の基本的な人権や人道的な配慮を著しく欠いた決定には、大きく失望した。

 とんださいたま、である。

<取材・文/エリオット根須  写真/保護者提供>

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