東大入試、試験の得点に「小数点以下」がある理由とは?

東大入試、試験の得点に「小数点以下」がある理由とは?

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◆あなたは東大の入試に関しどこまで知ってる?

 今年は新型コロナウィルスの影響もありましたが、国立大学の入試(2月25日、26日)は無事に実施することができました。そして、まもなく国立大学の合格発表が始まりますが、今回は知っておくと便利で楽しくなるかも知れない情報をお知らせします。

 まず、みなさんは東大の入試について、次のどこまでご存知でしょうか。

【初級レベル】

 国立大学を受験すると、実際に入学試験でとった点数を知ることができることを知っている。

【中級レベル】

 東大の入試では、受検者がとった得点(センター試験と個別試験の合計点、以下合計点と記す)は小数点以下第4位まで表示されることを知っている。

【上級レベル】

 東大の入試の合計点の小数部分として、あり得る点とあり得ない点を判別できる。

【超上級レベル】

 東大の入試でとった合計点からセンター試験の得点を推定できる。

 さて、どのレベルだったでしょうか。それではこれらの件について説明をしましょう。なお、東大の入試の合計点の詳しい算出方法は東大に問い合わせても答えてくれませんので、一部、「こう考えればすべてがうまく説明がつく」といった推定の部分もあります。

◆初級レベル:国立大学を受験すると、実際に入学試験でとった点数を知ることができるの?

 国立大学は2001年から成績開示と称して、受検者個人にセンター試験と個別試験の結果および合格最低点を開示しています。これによって、不合格であったとしても何点足りなくて不合格になったのかがわかるようになりました。例えば、東大は2001年以降、合格最低点を発表しており、2020年は文科一類343.9444点、文科二類337.6111点、文科三類338.8667点、理科一類320.7222点、理科二類313.0222点、理科三類385.6111となっています。(満点は550点です。)

 また、同じく2020年の合格最高点は、文科一類450.9111点、文科二類442.5444点、文科三類419.7778点、理科一類475.7222点、理科二類449.2889点、理科三類492.2333点です。

◆中級レベル:東大の合計点が小数第4位まで表示されるのはなぜ?

 この点数をご覧になって、「これが試験の点なのか」とか「なぜ、試験の点が整数ではないんだ」と思われた方も多いことでしょう。そして、大学入学共通テストのこれまでの会議では「1点刻みの試験に意味はあるのか」という議論がなされてきましたが、東大はむしろの逆の方向に進んでいたこともおわかりかと思います。

 東大は、センター試験(来年度からは大学入学共通テスト)と個別試験(2次試験)の合計点で合否を決めますが、2次試験の4科目の合計点は440点満点であるのに対し、1次試験(センター試験)はその1/4の110点満点ということになっています。ところが、今年まで実施されたセンター試験は900点満点であって、110点満点ではありません。したがって、900点を110点に圧縮します。例えば、センター試験で815点、2次試験で254点を取った場合は、合計点は、

 99.6111+254=353.6111(点)

となります。センター試験の815点は東大の計算方法(推定)で99.6111点に圧縮されます。これを四捨五入して100点にしないところが東大らしさです。

 でも、なぜ小数第4位までなのでしょうか。実は、900点満点を110点満点に圧縮する場合は、小数第2位までの表示でも十分で、小数第2位までの表示で受検者の得点の順位が変わることはありません。これが小数第4位まで表示される理由は次のように考えられています。(繰り返しになりますが、東大に問い合わせても答えてくれませんので推定です。)

 40年ほど前に開始した「共通1次試験」は1000点満点でした。1000点満点を110点満点に変換するためには、0.11をかければよいので小数第2位までで正確に表現することができました。しかし、ある時期にそれが800点満点に変更されました。この場合、800点満点の1点は、110点満点の0.1375点になります。ですから、小数第4位まで用意すると正確な得点を表現することができます。800点満点になったのは得点開示制度ができる以前でしたので、想像でしかありませんが、おそらく800点満点になったのを機会に小数第4位になったと考えられます。

◆上級レベル:では、0.0001点差で合格点に達しなかったということはあるの?

 センター試験は、2006年に900点満点に変更されます。900点満点を110点満点にする場合は、特別な得点でない限りは変換後の点数は無限小数になるので、小数第4位まで表記したとしても正確ではありません。東大は、2006年と2007年は今とは異なる計算方法で900点満点を110点満点に圧縮していましたが、不正確な点もあったため(順位には影響はありませんでした)2008年からは正確に圧縮するようになりました。その結果、すべてのセンター試験の得点は次のいずれかになりました。

 圧縮したセンター試験の点数を■■■.◇□□□とおくと、

・■■■には0から110が入る

・◇には0から9が入る

・□□□には000、111、222、333、444、556、667、778、889が入る

 もちろん、2次試験の得点は整数ですので、合計点の小数部分もこのルールに従います。

 このように、小数部分は小数第2位がわかれば、第3位、第4位は決定してしまいますので、小数部分は実質90種類しかありません。ですので、例えば、小数部分が先ほどの.6111ということはあっても.6112ということはありません。したがって、小数第4位の違いだけで合格できなかったということはあり得ないのです。例えば、毎年、「あと0.0001点足りなくて合格できなかった」と周りに報告する受験生が出てくるのですが、そういう場合は、見間違えているか、悔しさのあまりなのか違うことを言っているということになります。

◆超上級レベル:東大の入試でとった合計点からセンター試験の点数はわかるの?

 東大の合計点が小数第4位まで表示されているおかげで、合計点からセンター試験の得点をある程度類推できます。具体的には、センター試験の得点を90で割った余りがわかります。一例として、2018年の東大理科一類の最高点について触れましょう。この年の理科一類の合計点の最高点は、458.9667点でした。この年は、東大入試史上初めてセンター試験で満点(900点)を取った人がいた年でした。合計点の最高点の小数部分である0.9667を0.3667+0.6と考えることで、センター試験の得点を90で割った余りが、3+9×6=57(センター試験の9点が1.1点になる)となります。この年の足切りが715点であることを考えると、最高点の人のセンター試験の得点は、867点または777点に限られます。センター試験の90点の差は2次試験の11点ですので、777点の人が最高点をとった可能性もありますが、867点をとった人が最高点をとったと考える方が分があるかなと思います。

 なお、参考まで、今年のセンター試験の足切りラインとその後、合格最低点で入った人のセンター試験の得点を以下に記しておきます。足切りラインは文科一類621点、文科二類612点、文科三類575点、理科一類681点、理科二類626点、理科三類611点です。合格最低点のセンター試験の得点は、文科一類695点(785、875)、文科二類635点(725、815)、文科三類678点(768、858)、理科一類685点(775、865)、理科二類712点(802)、理科三類635点(725、815)です。合格最低点のセンター試験の得点につていは、最も低い点を記し、それ以外の候補は()内に記してあります。

 これを見るとどの科類も足切りラインから少し離れた人が合格最低点をとっていることがわかります。

 さて、来年の東大入試では、大学入学共通テストの英語が、リーディングが100点満点のところを140点、リスニングが100点満点のところを60点に換算して英語の合計点を出すと発表されています。こうなると、今度は共通テストの段階で英語の得点が整数ではなくなります。つまり、大学入学共通テストの得点が整数ではなくなるので、東大がどのような計算方法で得点を計算するのかは関心がもたれるところです。

<文/清史弘>

【清史弘】

せいふみひろ●Twitter ID:@f_sei。数学教育研究所代表取締役・認定NPO法人数理の翼顧問・予備校講師・作曲家。小学校、中学校、高校、大学、塾、予備校で教壇に立った経験をもつ数学教育の研究者。著書は30冊以上に及ぶ受験参考書と数学小説「数学の幸せ物語(前編・後編)」(現代数学社) 、数学雑誌「数学の翼」(数学教育研究所) 等。 

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