鉄道歴史パーク in SAIJOで新型の「振り子車両」を体験してみた<コロラド博士の鉄分補給>

鉄道歴史パーク in SAIJOで新型の「振り子車両」を体験してみた<コロラド博士の鉄分補給>

JR四国新型特急用気動車2700系2019/11/23撮影 牧田寛

 前回に引き続き、息抜き回として昨年11月23日に開催された鉄道歴史パーク in SAIJOについてその様子をお伝えします。SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)問題のために世界中でイベントの類いは壊滅的ですが、少しはお楽しみいただけると思います。

 このイベントは、主催が西条市、JR四国の協力で毎年開催されています。この鉄道歴史パーク in SAIJOを構成する四国鉄道文化館では、四国島内の高速道路ネットワーク充実により厳しい競争に晒されているJR四国が、どういう将来を模索しているかその片鱗をみることができます。

◆新型特急車両2700系試乗会……しかし、ヤツがいない!

 フリーゲージトレインを下車するとその向かいにある西条駅構内の柵が解放してあり、見慣れない真新しい気動車(ディーゼルカー)がごろごろ鳴いています。これは乗らねばなりません。

 ところで、こういう場所に必ずいるはずのヤツがいません*。イベント列車が走れば伴走し 、イベントあれば現れ 、ロンドンにも現れるモンスターのくせに病気でしょうか? 心配です。西条にはポ◎モンセンターがありません。気になりますが、ドアが閉まりそうなので乗車しました。車内は満席ではありませんが、席はかなり埋まっています。

〈*JR四国のシンボルに 「すまいる えきちゃん」「れっちゃくん」2019//11/27交通新聞 電子版〉

 最後尾車両は空いていましたので、座って一休みすると、目の前にヤツの相棒がいます。そうそう、ヤツらは分離式でした。しかも5色もいろちがいがいます。まるで頭の白いお友達のお財布を狙うポ◎モンです。実は、ヤツ(すまいるえきちゃん)は、この日埼玉県羽生市へ出張していたとのことでした。寂しいね。

◆新型特急車両2700系試乗会。振り子体験

 さて、乗車すると早速JR四国定番の振り子体験です。気動車での振り子台車は、JR四国2000系で初めて実用化したもので、土讃線や高徳線などの線形の悪い区間を走る気動車特急を一新しました。しかし、JR四国2000系の登場は1989年と30年も昔で、既に初期車両の廃車が始まるなど、老朽化が進んでおり、新型車両の配備は急務なのですが、JR四国2600系気動車の失敗によって急遽開発されたのがJR四国2700系です。JR四国2700系もJR四国2000系同様の制御付き自然振子式を採用しています。この方式は、製造費が高く、維持費も高いのですが、JR四国2600系で簡易振り子式を導入したところ、土讃線では運用が難しいことが判明してJR四国2600系は量産中止、JR四国2600系をもとに制御付き自然振子式としたJR四国2700系が開発されました。

https://youtu.be/BLKWJ6Yh8yc

 残念ながら走行しませんでしたので乗り心地は分かりませんでしたが、やはり新しい車両はよいものです。南風号や宇和海号などのJR四国2000系特急に乗ると、車両の傷みが既に隠しようなくなっている感があり、乗り心地もやや悪くなっています。

 新造車両のJR四国2700系には多いに期待できます。

◆振り子車両開発の経緯

 予讃線では、JR四国8000系電車が振り子車両で、線路が貧弱で線形が悪い(曲がりくねっている)JR四国では、振り子列車でなければ高速運転のできる範囲はとても限られてしまいます。

 これは国鉄時代からの懸案事項でしたが、競争相手の長距離バスは、四国の高速道路網が殆ど未整備だったためにあまり考える必要がありませんでした。松山と高知の間だけは、大きく香川県を迂回する鉄道(290km)に対して最短距離の国道33号線(120km)を通る国鉄急行バス(なんごく号)がもっぱら使われてきましたが、他区間での都市間輸送は鉄道が優勢でした。今日では、四国全県に高速道路網が整備されたため、鉄道の競争力は大きく下がっています。

 JR化後、四国島内の高速道路整備に備えてJR四国2000系などの振り子車両を開発、投入し、優位を維持してきました。これは線路の改良には莫大な資金と時間が必要ですが、線形が悪い線路でも高速運転できる車両によって線形改良に近い効果を得るという考えによるもので、実際過去30年間にJR四国の特急列車網は大きく改善したと言えます。

 これは将来四国新幹線が整備される僅かな可能性もあって、在来線への大規模な投資は二重投資になると言うこともありますが、やはりJR四国では土讃線、予讃線、高徳線の大規模改良という投資は企業体力的にたいへんに難しいという理由が大きいです。

 JR四国2000系が登場して既に31年目になろうとしていますが、その間に過疎化と人口減少による市場規模の縮小、高速道路網の整備が進み、バスや自家用車との競争激化、航空機との長距離旅客需要の取り合いなどによってJR四国はたいへんに厳しい経営環境となっており、そういった中でJR化後に現れた車両の更新が必須となっています。

 厳しい経営環境の中であっても貧相な車両を投入すれば見栄えと乗り心地のわるい車両が嫌われてお客が更に逃げてしまった旧国鉄末期の二の舞ですので性能と見栄えを落とすことなく低価格化、とくに運用費を下げる目的で開発したのが空気バネで車体を傾斜させる簡易振り子式のJR四国2600系です。ところが試運転をしたところ、なんと曲がりくねった線路が長く続く土讃線で運用するには圧搾空気が足りないというとんでもない欠陥が見つかり、量産化は中止されました。

 結局、構造が複雑で運用にも手間とお金がかかりますが、JR四国2000系同様の制御付き自然振子式(曲線通過時の遠心力で自然に車体が振り子動作をするが、更に空気バネでも制御した車体の傾斜を行う)を採用したJR四国2700系に改良し、いよいよJR四国2000系の本格更新が始まります。

 空気が足りなくなって使えない*という一見初歩的な欠陥ですが、工学ではこういったやってみて気がつく問題は多く、JR四国2600系とJR四国2700系の開発において生じたことはその教科書的な事例と言えます。

〈*空気タンクを大型化すると床下の場所が足りなくなり、屋根上に巨大タンクを置くと建築限界と重心上昇の問題が生じる。コンプレッサーを稼働させるとディーゼルカーの場合、馬力をコンプレッサーに取られて速度が大幅に落ちる〉

 残念ながら運用コスト削減という目的は一部遂げられませんでしたが、JR四国では、次の20年30年を担う新車両への更新は進んでおり、とりあえず一息ついています。

◆JR四国もJR北海道と同じく抱えている深刻な問題

 しかし現状では、先細りの将来しかなく、JR北海道が陥っている鉄道事業継続自体が困難となる将来が来る可能性は否定できないために何らかの抜本的な経営体質改善につながるものが切望されています。実は、イベントの度に整備新幹線が来ないと厳しいという本音が見え隠れしているのですが、事業化の動きは全く見えず、JR四国の将来計画を迷走させるものとなっています。

 とくに愛媛県は、香川県、徳島県といった本四架橋の恩恵が大きい二県、既に諦めて航空機、高速バス輸送に依存している高知県に比して生殺しの感があり、四国新幹線の誘致にはとても熱心です。

◆特別展示には軌陸車やミニレールも!

 11/23の特別展示、イベントは、他に軌陸車(きりくしゃ)の載線作業がありましたが、あいにく筆者は都合がつきませんでした。軌陸車は、昨年ご紹介した松山運転所の一般公開でも展示されていましたが、線路へ載せる載線作業は、かなり珍しいのでお勧めです。

 2日目の11/24には、ミニレールとしてはとても規模の大きな南館前での恒久軌道でのミニレール乗車会と鉄道模型走行会が予定されていましたが、あいにくの雨天でミニレール乗車会は中止でした。

◆常設展示へ

 ここまで特別展示とイベントをご紹介しました。時間も15:30頃になると特別展示は終わり、片付けが始まっています。しかし、四国鉄道文化館南館、北館には数多くの優れた常設展示があり、十河信二記念館には西条市出身(正確には隣の新居浜市出身、西条高校卒業、西条市名誉市民)の第四代国鉄総裁十河信二氏の国鉄再生と新幹線事業の記録があります。

 次回から、いよいよ常設展示のご紹介となります。

<取材・文・撮影/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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