新型コロナ禍のデマが物流を混乱させる!「国の血液」、物流業界への影響

【新型コロナウイルス】トラックドライバーが『巣ごもり消費』による物流のパンク危惧

記事まとめ

  • コロナでトイレットペーパーが一時不足し、トラックドライバーから混乱の声が見られた
  • イベント機材などを運ぶトラックドライバーは、仕事が大幅に減っているという
  • 一方、『巣ごもり消費』現象により、配達の遅延や物流のパンクを危惧するドライバーも

新型コロナ禍のデマが物流を混乱させる!「国の血液」、物流業界への影響

新型コロナ禍のデマが物流を混乱させる!「国の血液」、物流業界への影響

デマで物流は混乱する

◆新型コロナ禍が物流に及ぼした影響

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回の記事(「『送料』は『無料』じゃない! 『送料無料』を喧伝する裏に潜む運送業軽視」)は、楽天の「送料無料化」に対して、元ドライバーとして感じる日本の「顧客至上主義」について述べたが、今回は、昨今蔓延する新型コロナウイルスがトラックドライバーや物流に及ぼしている影響をまとめて紹介していきたい。

 2月、突如として売店からトイレットペーパーが姿を消した。

 報道された通り、広く拡散された「マスクはトイレットペーパーからできている」や「トイレットペーパーは中国から輸入されており今後買えなくなる」といった情報は全くのデマで、それらの情報が流れた後にも、倉庫や製造工場には多くの在庫や原料の古紙が潤沢にあった。

 実際、暫くの間トイレットペーパーはその姿を消したものの、製造工場や各スーパーなどはその直後、「大量に積み上げられたロール」の写真や「お1人様10点まで」とする“パフォーマンス”で、騒ぎ立てる消費者を黙らせた。

 一方、トイレットペーパーを店へと運び、世間の需要をどこよりも早く敏感に感じ取るトラックドライバーの中から聞こえてきたのは、「古紙の動きが大きい」という声だった。

 しかし、それでも彼らから「トイレットペーパーを運ばなくなった」、「品薄になっている」というような話は全く聞こえてくることはなく、SNS上では、トラックドライバーたちが次のようなツイートを連日投稿していた。

 「なぜトイレットペーパーが不足じゃないって言い切れるかって?だってトイレットペーパー運んでるもんw倉庫に在庫たんまりありますよw」

 「週明けの積みがトイレットペーパーとティッシュ」

 「僕も運んでるけどなくなる事はない」

 「今日も〇〇(大手トイレットペーパーメーカー)の倉庫行きましたが紙製品は大量にあります」

◆デマのせいでトイレットペーパーを何度も運ぶことになるドライバー

 彼らがこうした声を上げ続けたのには理由がある。他でもない、こうした物流の混乱はドライバーに大きな負担となってそのまま自身に跳ね返ってくるからだ。

 

 SNSには、

 「どっかの誰かがデマを流すせいで不必要に仕事が増えてまじきつい」

 「デマ流したやつのせいで物流関係めちゃくちゃ。トラックドライバー無駄に働かなきゃいけないからマジでクソすぎるわ」

 「くだらないデマのせいで大忙しの製紙工場。みなさんティッシュ、トイレットペーパーの在庫は豊富にあります。何でもそうですが買い占められるとその補充のために物流がおかしくなります」

 などといった、現場の混乱を訴える声も多く見られた。

 

 日本の貨物輸送の9割以上は、トラックが担っている。しかし、定期便として輸送ルートがあらかじめ決められていること、そして何よりトラックドライバーの慢性的な人手不足により、こうしたデマ情報はトラック物流業界にとって大きな混乱を招く原因になるのだ。

 トラックがあっても、運ぶ商品があっても、それを運ぶ「人間(ドライバー)」がいなければ、物流は今回の騒動ように簡単に止まってしまうのである。

◆大規模イベント中止のしわ寄せなども

 こうして「国の血液」とも称されるトラックドライバーたちに、今回のトイレットペーパー騒動以外に生じているコロナの影響について聞いたところ、その答えにはバラつきがあった。

 同じ運送業でも、「運んでいるモノ」によってその影響は大きく違ってくるのだ。

 「仕事が大幅に減った」と答えるのは、各イベントで使用する機材などを運ぶトラックドライバーや、中国をはじめとする海外からのコンテナを運ぶトレーラーのドライバーたちだ。

 現在、ブルーカラー(作業服労働者)の間では、「部品や製品が中国から入ってこないために作業が途中でストップしてしまい、納品できない」という状況が各所で生じているが、こうした異変をいち早く感じ取ったのも、海上コンテナを運ぶトレーラーのドライバーだった。

 国による大規模イベントの開催自粛要請は、演者や現場スタッフはもちろんだが、こうした運び手の仕事や収入をも奪っている。

 3月14日に刊行された自著『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)でも述べている通り、トラックドライバーの多くは「日給月給」という給与体系で雇用されているため、仕事がなくなりその日が休みになれば、収入もそのまま吹っ飛ぶのだ。

 一方、二次輸送と言われる、いわゆる「宅配業務」は、各企業のテレワークの導入、国からの学校休校や不急不要の外出自粛の要請を受け、運ぶモノが多様化している。

 大手宅配業者や大手ECサイトAmazonの配送員たちに話を聞いたところ、現在飛ぶように売れていると感じるのがレトルト食品、水、コメといった生活インフラのための備蓄品だという。また、家で過ごす時間が増えるため、書籍のほか、トレーニングマシーンやダンベルといったジム用品なども多く運ぶ印象があるとのことだった。

 冷蔵冷凍車のトラックドライバーからは、休校になり家で留守番をする子どもが増えたことで冷凍食品が大きく動いているという話が聞こえてくる。が、あくまでもそれは家庭用で、レストラン向けの冷凍食品は逆に5〜6割減ったと感じるとのことだった。

◆巣ごもり消費も、ドライバーにはさらなる負担

 そんな中、コロナ騒動以前にはなかった現象として挙げられるのが、「巣ごもり消費」だ。

 外出を避ける消費者からは、

 「暇だからやることがネットショッピングしかない」

 「何もできない歯痒さにネットショッピングでポチポチ」

 「今は大人しくネットショッピングで経済を回します」

 「コロナのせいで払い戻しなどがあり、ストレス発散も兼ねてネットショッピング。色々と届くため、ますます引き篭もりに拍車をかけている」

 といった声が聞こえてくる。

 しかし、3月と4月は元々、卒業や入学入社などによって贈り物が行き来し、引越し時期とも重なるため、業界は1年の中でも繁忙期に当たる。

 仕事が減り、倒産寸前の同業者がいることを考えると、こうした巣ごもり消費は手を広げて歓迎したいところだが、今後こうした外出の自粛が続けば、荷量はさらに増加し、配達の遅延や物流のパンクなどが生じるのでは、と予想するドライバーもいる。

 余談だが、「新型コロナ禍の中、重視される『咳エチケット』。喘息持ちや花粉症の人は困惑も」の記事を執筆する際、トラックドライバーにもマスクの装着についてアンケートを取ってみたところ、マスクを「終日付けている」が11.9%、「車内では付けないが構内作業では付ける」が31.4%、「終日付けない」が49.8%となり、ほぼ半分のドライバーがマスクを終日付けていないことが分かった。

 

 その大きな理由としては、彼らは基本的に1人で行動することが多く、感染をしたりさせたりするリスクが少ないからというのが前提にある。

 が、その他の理由として、「運転中にマスクをすると温かい空気で眠くなってしまう」、「メガネをしてマスクをつけると曇りやすくなるが、運転中だと危なくて直せない」、さらには「喫煙率が高いトラックドライバー(一般が約27%に対しドライバーは約44%)にとって、マスクは邪魔」という意見もあった。

 現場のトラックドライバーは、こうしたコロナによる騒動や混乱の中でも、我々の生活インフラを守るべく、今日も第一線で日本中を走り回っている。

 

 先が見えない不安によって、今後もデマを信じたり不要な買いだめをしたくなったりすることがあるかもしれないが、物流が混乱すれば、今回のトイレットペーパーのように自らの首を絞める結果となることを理解し、冷静に経済を回していきたいところだ。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto

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