法律の授業でも「処刑」については先生も避けたがる!? 金日成総合大学の授業あれこれ<アレックの朝鮮回顧録7>

法律の授業でも「処刑」については先生も避けたがる!? 金日成総合大学の授業あれこれ<アレックの朝鮮回顧録7>

北朝鮮の金日成総合大学に通っていた筆者は、どのような授業を行っていたのか?(写真は同校の校庭/筆者撮影)

◆北朝鮮の大学、授業はこんな感じ!

 朝鮮民主主義人民共和国の法について学ぶ、「社会主義憲法」の授業においての話だ。

 北朝鮮の法には、重大な罪には処刑が適用されるとはっきりと書かれてある。先生はこの部分を教えるとき、少し落ち着きがなくなる。規定により、朝鮮の現実については外国人留学生に知られてはならないことが多い。

 北朝鮮旅行に来た外国人観光客がもし、処刑について案内員に聞こうものならおそらく答えが出てこない。しかし、授業では仕方なく扱わなければならないこともある。

 先生はこの問題をこっそり避けようとするが、ある留学生は例外的に好奇心に溢れていて、知識に対する渇望が強く、なぜ処刑がそのように多く必要なのか聞いた。先生は答えた。

「我々は米帝国主義と戦っていて準戦時状態にあります。なので我々の法は軍法と似ているのです。しかし心配はいりません、留学生トンム。朝鮮で長期滞在する外国人の権利と文化的差異は認められているので、深刻に処理されることはありません」(※筆者注:では私の事例は例外なのか? 残念だ)。

 社会主義憲法の他の授業では、文化についての法を学ぶ。朝鮮は大部分の現代文化を恣意的に「ブルジョワ文化」と規定する。朝鮮の公式思想によるとこの「退廃的文化」は朝鮮を「浸透」し、帝国主義者がたやすく侵略できるようにする(※筆者注:この文化の波及はもちろん、人々が望んだものではなく帝国主義者の陰謀だ)。

 それで朝鮮の法ではそのような「悪い」文化を外来メディア遮断と関連する法で制約する。

 印象深く残ったのは先生が帝国主義者たちの悪しき「資本主義文化」を禁ずる法的必要性を説明したときだ。あるベトナム人留学生が教室の後ろに座り、退屈な先生の講義を完全に無視して漫画の韓国語版「NARUTO」を読んでいた。この光景は多くの在北留学生たちのアイロニカルな生活を美しく総括していたと思う。

◆留学生の学費は年間3000〜4000ドル

 (短期実習生以外の)留学生はほとんど北朝鮮で学位を取得する。それぞれ、学士学位の卒業証書を受ける本科生、修士を取得する修士生、博士号を受ける博士生がいる。現地学生は無償教育だが、留学生は朝鮮教育省にある教育委員会に年に一度学費を支払う。本科生は3000(米)ドル、修士生は3500ドル、博士生は4000ドルである。

 卒業式は通常、真冬である1月中旬だ。インターネットでは中国人留学生たちの卒業写真を見ることができる。金日成総合大学本館で女子学生たちが朝鮮服(チョゴリ)を、男子学生がスーツを着て、もらったばかりの立派な学位記を持って教員と大学の対外事業部職員たちと記念撮影し、自分たちどうしでも写真を撮る。そして教員たちとも食事を共にする。これは唯一の機会であるように思える。

 学位記自体はとても見栄えが良く作られていると思う。私ももともと、留学生の中では最優等生(私を追放した国家安全保衛省の職員もそのように言った)であり、文学大学の現代朝鮮小説文学の修士号を2020年1月あたりに取得するはずだったのだが、逮捕によって霧散した。

 私はその代わりに国家安全保衛省の尋問学院を卒業したのだ。卒業証書のようなものは残念ながら、なかった。最近、一緒に卒業するはずだった留学生の友人たちの卒業写真をFacebookで見た時は悲しかった。私は、まだ在学中の友人に私の成績表を対外事業部からもらってきてくれと頼んだが、彼らはそれをやりたがらなかった。人生とはそんなものだ。残念だ。

 本科生は授業のコースが修士生、博士生とは違う。本科生は学年別に同じ授業、同じ専攻を取る。専攻は朝鮮語だ。

 彼らの授業は大部分が朝鮮語と関連しており、金日成総合大学文学大学(2019年に朝鮮語文学部に改名)の言語学専門家から教育を受ける。朝鮮語講読、朝鮮語文法、作文、朝鮮語方言学、文体講読、語彙論、ヒアリングをはじめとるする朝鮮語授業を行い、文学基本、朝鮮民俗学、文学史、朝鮮地理学、主体哲学、論理学、言語学概論、数学(やっと終わった)など、多岐にわたる。

 博士院生(博士、修士過程)は先行を選ぶことができる。現代朝鮮小説文学の修士コースだった私は唯一の中国人以外の博士院生だった。ほかには法学が2人、言語学が2、3人、主体哲学2人、博士過程には公共保健(この学生は金日成総合大学医学大学に別途通っている)と主体哲学、デジタル設計、経済学を専攻する朝鮮族の学生がそれぞれ一人いた。

◆教員に卒論を書かせる中国人留学生たち

 留学生は惜しくも現地学生たちと授業をともにすることができず、私のように一人しかいない専攻はマンツーマンで、法学を学ぶ二人は二人で授業を行うなどしていた。

 我々のような専攻を学ぶ現地学生とは会う機会すらなかった。それも残念だった。私はいつか、朝鮮からきた学生たちと朝鮮の小説について討論する機会があることを期待する。いつになるかはわからないが。

 親切な教員たちとは、興味深い対話をたくさん行った。彼らのほとんどは外国人(特に“西方人”)を教えたことがないが、非常に心根がよく、学生によくしてくれる人々であり、たった一人の学生である私にも好奇心や厚意を寄せてくれた。私は情の厚い彼・彼女らのことを今だに記憶している。

 卒業するためには卒論の審議を通過しなければならない。学業のできない本科生たちの多くは先生に頼んで書いてもらう(部分的に手伝う学生もいる)。

 「総書『不滅の導き』中 長編小説『2009年』で用いられた成句についての研究」などといった内容は、すべて教員が書いた後に学生の名前がつけられる。

 とある学生は、報酬として先生のために言語学関連書を翻訳するが、ほとんどはそのまま現金を渡す。ある中国人留学生の博士論文が本として出版されたが、私がそれについて言及したとき他の留学生が「あのバカが自分で書いたはずがない」と言ったのを覚えている。金日成総合大学の教員たちは本当に苦労が多い。

 修士、博士生たちは論文のほかに小論文を書かなければならない。私の場合、卒業前に5編を書かなくてはならなかった。小論文は最短数ページで、「金日成総合大学学報」、「経済研究」などの「対外出版物」にて発表される。

◆大学の図書館に外国人は入れない

 学究熱が高かった私は、大学の図書館で本を読めると期待した。しかし金日成総合大学に到着したとき、対外事業部の先生に聞くと我々は科学図書館や本館の電子図書館を使ってはならないという。他の留学生に聞くと彼らは図書館の位置すら知らなかった(しかしこれは彼らが勉強に関心がないからかもしれない)。

 同宿生(寄宿舎で生活する現地学生)に図書館がどこにあるか聞いた友人は「教えられない」と答えられたという(大学のホームページを見ればわかるが)。私は許可なく二つの図書館に入った外国人のことを聞いたことがあるが、本の貸し出しは拒否されたという(しかし数年前に行くと少し自由になっていた)。

 ほかの友人からは、電子図書館で朝鮮の本や雑誌、学術誌を検索しUSBにダウンロードできると聞いたが実際にやってみたことはない(もしやったら、国家安全保衛省からもう一つ怒られるネタができていたことだろう)。そこでも学生たちの成績を閲覧できると聞いたので、我々を監視する同宿生たちの成績を検索し彼らをからかってやりたかった。できなかったのが惜しい。

 我々が使っていた本もほとんどが特別な「留学生用(表紙にもこのように表示されている)」教科書だった。我々は現地人用の書店に入ったことはなかった。

 こんな規則もおかしな状況を作り出した。私が「文学作品構成論」という授業を受けた時、教員は自身の書いた本からそのまま教えてくれた。

 私は試験に備えてその本を買いたかったが、それは対外用ではなかった。本は明らかに純粋な文学理論のようなもので、特に敏感な内容ではなかった。もともと、朝鮮の神秘主義と出版物に対する厳格な規則がある。

 私は外国人研究生が図書館に出入りし、現地の教員と学生たちと自由に討論できる日を期待する。そうなった日に、私は金日成総合大学に戻り、修士過程を全うしたい。

【アレック・シグリー】

Alek Sigley。オーストラリア国立大学アジア太平洋学科卒業。2012年に初めて北朝鮮を訪問。2016年にソウルに語学留学後、2018〜2019年に金日成総合大学・文学大学博士院留学生として北朝鮮の現代文学を研究。2019年6月25日、北朝鮮当局に拘束され、同7月4日に国外追放される。『僕のヒーローアカデミア』など日本のアニメを好む。Twitter:@AlekSigley

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