ミイラ事件のライフスペース残党が豊島区倫理法人会に集結中<シリーズ「風化」するカルト問題・第1回>

『ミイラ事件』の『ライフスペース』残党が豊島区倫理法人会に集結か

記事まとめ

  • 99年にミイラ化した遺体が発見され『ライフスペース』代表・高橋弘二氏らが逮捕された
  • 高橋弘二氏は遺体はまだ生きていたと主張し、「サイババの勝手」などの迷言を披露した
  • そのライフスペースの残党は今も活動し、豊島区倫理法人会に集結しているという

ミイラ事件のライフスペース残党が豊島区倫理法人会に集結中<シリーズ「風化」するカルト問題・第1回>

ミイラ事件のライフスペース残党が豊島区倫理法人会に集結中<シリーズ「風化」するカルト問題・第1回>

豊島区倫理法人会の会長でライフスペース幹部の釣部人裕氏(同会ウェブサイトより)

◆約20年前の「ライフスペース」事件の「残党」

 1999年11月。千葉県成田市内のホテルの客室から「ミイラ化」した男性の遺体が発見された。宿泊していた「ライフスペース」の代表者・高橋弘二氏と関係者たちは、遺体はまだ生きていたと主張。記者会見で、インドの「グル」であるサイババの弟子を自称するヒゲ面の高橋氏が「定説」「サイババの勝手なんです」などの迷言を披露しワイドショーを賑わせた。「ライフスペース事件」あるいは「ミイラ事件」と呼ばれるものだ。

 その残党がいま、ライフスペースとは無関係の保守系倫理運動団体「豊島区倫理法人会」に複数、入り込んでいる。私が確認できただけでも、高橋氏が逮捕されて以降のライフスペース(SPGF=シャクティパット・グル・ファウンデーションの名で活動)の幹部だった釣部人裕氏が豊島区倫理法人会会長に。そのほか高橋弘二氏の妻・伸子氏を含め、少なくとも3人のライフスペースの元メンバーが「会員」として所属している。うち2人はミイラ事件の際に逮捕された人物でもある(後に不起訴)。

 私の身辺では「倫理法人会に対する事実上の乗っ取りではないか」と疑う声もあるが、釣部氏本人は「そのような指摘は聞いたことがない」と語る。一方の倫理法人会の本部(一般社団法人倫理研究所)の担当者に見解を求めると、「知らなかった」と絶句した。

 すでにミイラ事件を忘れている人も多いかもしれない。しかし未だに残党が活動し、既存団体がそれと気づかずに自団体に招き入れてしまっている。

◆ミイラ化遺体を「生きている」と言い張った

 ミイラ事件は、ライフスペースのメンバーだった男性が病気で入院中だった父親を連れ出し、成田市内のホテルで高橋氏のシャクティパットを受けさせたところ死亡してしまったというもの。シャクティパットのせいではなく、痰をつまらせたことによる窒息死だったとされている。

 遺体発見後、高橋氏を含め11人が保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕。うち高橋氏が殺人容疑で起訴され、亡くなった男性の息子が保護責任者遺棄致死の容疑で起訴。ほかは不起訴となった。

 事件発覚から逮捕されるまでの間、高橋氏らライフスペース関係者は記者会見やメディアの囲み取材で、ミイラ化した遺体について警察が発見した時はまだ生きていた、司法解剖によって死亡したなどと主張。高橋氏がメディアの前で意味不明な持論を「定説」として披露した。またサイババの弟子を自称している点について、サイババ側が否定しているとメディアから尋ねられた高橋氏は「それはサイババの勝手なんですよ!」という、よくわからない反論で逆ギレしてみせた。

 こうした様子をワイドショーなどが面白おかしく取り上げた。

自己啓発セミナーから変質したカルト集団

 有限会社ライフスペースは、80年代に大阪で設立された自己啓発セミナー会社だ。当時、この手のセミナーが一大ブームとなっており、ほぼ同じ内容のセミナーを開催する会社がいくつもあった。その数は全国に100社以上あったとする説もある。

 この手の自己啓発セミナーは、60〜70年代にかけてアメリカでブームとなった民間の複数の心理療法をマルチ商法のセールスマン向け研修を開催していた業者が取り入れ、マニュアル化し、「本当の自分を見つけるセミナー」などの謳い文句でマルチ商法と無関係な一般の人々にも提供するようになったものだ。

 日本には1977年に上陸。「ライフ・ダイナミックス」という名のセミナー会社が草分けとなった。

 同社のセミナーは、主に3つのコースで構成されていた。1つ目は、3日間程度の通いで参加する「ベーシック・コース」(9万5,000円)。次が「アドバンスコース」(4日間合宿、26万円)で、3つめが「インティグリティ・ネットワーク」(約4ヶ月間、通い、7万5,000円)。合計で43万円もする高額なものだ。

 「ベーシック」と「アドバンス」は、レクチャー、瞑想、レクリエーションのようなゲーム(実習)などを通じて、自分の生き方やコミュニケーションのあり方を見つめ直し、ビジネスや人生の成功を手に入れると称するものだ。心理療法のテクニックをごちゃ混ぜにした、心のトレーニングのようなものだ。

 たとえば瞑想しながら幼少までさかのぼって親との関わりを思い返していく実習では、終盤にトレーナーが「ずっと言いたかったことを声に出して見てください」などと煽ると、受講生たちは「お母さん!」などと各々に叫びながら涙を流したりする。受講生同士で、相手の悪い面を言い合わせたり、逆にいい面を言い合わせたりする。もちろん罵声も飛び交う。真剣にやっていない受講生は吊し上げに合う。こういったことを、朝から夜まで缶詰になって延々と繰り返す。

 私の知人で漫画家の村田らむ氏が、ライフ・ダイナミックスではないが同種のセミナーに潜入取材をしたことがある。それ以前にオウム真理教(アレフ)にも潜入し、オウムの修行も体験したことがある村田氏だったが、自己啓発セミナー受講直後に会ってみると、かなり様子がおかしかった。目は血走り、セミナーで叫び続けたせいか声はガラガラ。

「あれはヤバい。オウムは、課題は与えられるけど修行は個々人でそれぞれがやる。でも自己啓発セミナーは集団で同じことをして、実習にしっかりのめり込まないとすぐ怒られる。適当にやってるふりをするということができないから、オウムよりキツい」(村田氏)

 批判的な物言いをしているのに、目を見開いて半笑いで興奮しながら話していた。百戦錬磨の潜入ライターが、完全に狂ってしまっていた。

◆「マニュアルさえあれば誰でもできる」

 このセミナーには台本のようなものが存在している。セミナーをリードする「トレーナー」やアシスタントたちはこれに従って、数十人から多いときには200人にもなる受講生たちを操る。

「心理学の知識なんて必要ない。もちろん抑揚をつけた話し方など、人によって上手い下手はあるが、分厚いマニュアルの中身を丸暗記してその通りやるだけで、基本的に受講生たちはわめいたり泣いたりする。マニュアルさえあれば誰でもできる」(ライフスペースの元幹部)

 部屋の明かりを落とすタイミング。BGMのタイミングや曲目(中島みゆき、松山千春、さだまさしなどのフォークソングがよく使われた)。それら全てマニュアル化されており、心理療法のテクニックが使われているが心理療法を学んだことなどない「トレーナー」がセミナーをリードする。

 参加者の大半は知人などからの「紹介」で参加する。各コースの最後には「卒業式」がある。トレーナーの指示で、受講生たちは目を閉じ、それまでの数日間の「感動的」なセミナー体験を振り返る。

「このセミナーにあなたを紹介してくれた紹介者に、いまどんな言葉をかけてあげたいですか。それでは目を開けてください」

 トレーナーの指示で目を開いた受講生の前には「紹介者」が立っている、というサプライズだ。紹介者の「おめでとう!」と言う言葉で、互いに抱き合ったり手を取り合ったりして喜び合う。傍目には何ということもない演出だが、それまでの数日間のセミナーで泣き叫び、ただでさえおかしなテンションになっている受講生たちは、松山千春の曲などが流される中で、涙を流して抱きしめ合う。

 まるで見てきたかのように書いているが、自己啓発セミナーに参加したことがない私も、実は「紹介者」の手引でいくつかのセミナー会社に潜り込んで「卒業式」だけ見学させてもらったことがあるのだ。

◆高揚感と偽の感動が原動力の「心のねずみ講」

 こうした感動が冷めやらぬうちに、受講生たちは次のコースの受講を勧められる。そして最後のコースでは「セミナーで学んだ人との関わり方などを日常生活で実践する」「本当の自分を見つけることができたセミナーを、親しい人と分かち合う」といった謳い文句の「実習」として、無償の勧誘活動を課せられる。たとえば「3人誘います!」などと自己目標を宣言するが、「本気さが足りない」「できるかできないかのラインを目標にしなければ意味がない」などと言われ、結局厳しい勧誘ノルマが課される。

 マルチ商法の場合、セールスマン(ディストリビューター)が商品を売ったり、自分が勧誘して引き入れた人間が売上を出すと、ディストリビューターが「儲かる」という仕組みが売りだ。しかし自己啓発セミナーでは受講生は何人勧誘しようが1円も儲からない。「セミナーで感動した」という喜びと、受講直後の高揚感だけが原動力だ。ある編集者はこれを「心のねずみ講」と呼んでいた。

 セミナー会社にしてみれば、カネを払ってセミナーに参加した人が無償で次の客を連れてきてくれる。広告費も人件費もかけずに、合計数十万円もするセミナーに客が次々やってくる。

 こんな美味しい商売が、マニュアル通りやるだけで誰でもできる。セミナーを受講してのめり込んだ人がアシスタントになり、トレーナーになり、やがて離脱して自分でセミナー会社を始めるというケースが多発した。80年前半から末にかけてのことだ。

 折しもバブル経済が到来し、成金と同時に「お金よりも心の充足を」といった考えをもてはやす「意識高い小金持ち」も大量発生する。自己啓発セミナーは当時、金をかけずに客が集まる夢のようなベンチャー・ビジネスだった。

 こうして80年代に大量発生した自己啓発セミナーは、決してまともな商売とは言い難い。しかしそれでも、基本的には宗教やオカルトとは無縁のものだった。飽くまでも、心理学的なテクニックを悪用した自己啓発ビジネスである。

 もともと税理士だったライフスペースの高橋弘二氏も、ライフ・ダイナミックスのセミナーを受講し、トレーナーになった。ライフ・ダイナミックスの大阪支部で活動していたが、仲間を引き連れて独立し、83年にライフスペースを設立した。

「ライフ・ダイナミックスにあった大量のマニュアルを、コピーしたり手書きで写したりして持ち出した。ライフスペースのセミナーも、ライフ・ダイナミックスそのまんまだった」(前出の元幹部)

◆80年代後半の変質と「トレーナー病」

 このライフスペース幹部は、80年代のうちにライフスペースを離れている。「高橋弘二がおかしくなってきたから」だという。

「マニュアル通りにやるだけで、受講生たちが面白いように泣き叫んでトレーナーの思い通りの反応をしてくれる。マニュアルがすごいだけのことなんだけど、それを自分の能力だと勘違いして万能感を抱いてしまうことがよくある。それを我々は仲間内で“トレーナー病”と呼んでいた。高橋弘二もそんな感じになっているように思えた」(同)

 90年代に入ると、バブル崩壊により景気が後退。また80年代末以降、自己啓発セミナーは「洗脳セミナー」などとしてメディアに取り上げられ、高額な料金や勧誘活動が消費者問題として社会問題化した。80年代に大量発生したセミナー会社は、ここから斜陽産業化し、00年代にかけて多くの会社が廃業したり商売替えをしていった。

 たとえば2012年に『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』を出版したディスカヴァー・トゥエンティワンは、80年代に設立された自己啓発セミナー会社「iBD(I’s a beautiful day)」の出版部門を受け持つ関連会社だった。iBDは90年代から「コーチング」と呼ばれる、自己啓発セミナーのプログラムとは別のカウンセリング資格ビジネスに移行している。

 フォークデュオ「ゆず」の北川悠仁の母親は宗教団体「かむながらのみち」の教祖だが、悠仁の兄が中心となって宗教団体とは別に自己啓発セミナー「ETLジャパン」も経営していた。兄は前出のライフ・ダイナミックス(ARCインターナショナルと改称)でトレーナーを務めていたこともある。このETLジャパンは、受講生減少により2010年に閉鎖されている。

 ライフスペースも、90年代に入って受講生が減ったと聞く。商売上の都合なのか歪んだ自己承認欲求の暴走なのかはわからないが、この頃から、前出の幹部が言う高橋氏の「トレーナー病」はさらに悪化していったようだ。

 91年前後から高橋氏は「人の過去や未来が見える」などと口走るようになり、それを「ビジョン」と呼んだ。従来の自己啓発セミナーでは、「なりたい自分」のあり方などを指して「ビジョン」という言葉を使うが、高橋氏のような超能力的な意味合いではない。

 ライフスペースは「ビジョンセミナー」なる名称のセミナーも開始し、93年には高橋氏がインドに赴きサイババに会う。やがて受講料金が最高で500万円などというコースまで登場した。高橋氏はサイババから後継者に指名されたと自称し、相手の頭部を軽く叩く「シャクティパット」という儀式で病気を治すことができるなどと主張し始めた。

 95年には、熱湯風呂に入る修行で男子学生が死亡。この事件も、受講生減少に大きく影響したようだ。そして97年、新たに「SPGF(シャクティパットグル・ファウンデーション)」という団体名を名乗って、シャクティパットによる病気治療を本格的に謳い始める。集客不振から、「宗教化」に拍車がかかった形だ。

 この中で発生したのが99年のミイラ事件だった。

◆教祖逮捕後も残党が活動

 高橋氏は殺人罪で懲役7年の実刑判決を受け服役した。しかしSPGFはその後も活動を続けた。「千葉成田ミイラ事件@の再審支援の会」(代表は釣部氏)の団体名で、ミイラ事件を「冤罪」だと主張するシンポジウムなどを開催。その回数は200回近くに及ぶ。

 同会は「冤罪」などをテーマにして、様々な部外者を巻き込み利用した。2015年には袴田事件弁護団事務局長の小川秀世弁護士がこのシンポジウムに招かれている。また釣部氏は「冤罪のない社会を目指す 白熱教室!」と称して、2013年に関東学院大学の宮本弘典教授のゼミ、2014年には山口大学経済法学科ゼミと大阪経済法科大学法学部法律学科ゼミで講演を行なっている。

 09年に高橋氏は出所したが、その後は表舞台に出てくることはなかった。

 しかしライフスペースは、2012年に紀藤正樹弁護士に対して民事訴訟を起こし、また弁護士会に懲戒請求も行なっている。ミイラ事件以前からライフスペースはメディアで批判的な発言をした被害者団体や弁護士などを相手に訴訟を起こすなどしており、そのSLAPP(恫喝訴訟)体質は比較的最近まで健在だった。

 私自身、まだ大学生だった90年代末に、自分の個人サイトでライフスペースに言及していたことから、訴訟予告のメールで恫喝されたことがある。その際、ライフスペース側の窓口になっていたのが釣部人裕氏。釣部氏は高橋氏逮捕後もSPGFの活動を支え、「ジャーナリスト」「作家」を名乗ってSPGF外でも冤罪などをテーマとした講演活動を展開してきた。児童相談所批判も講演などのテーマの1つとしていた。

 ミイラ事件当時、ライフスペースではメンバーの子供たちが学校に通わされないまま共同生活をしていたことから児童相談所が子供9人を保護するという事件も起こっている。当時の報道によると、ライフスペースではミイラ化した遺体のシーツを変えたり体を拭いたりといった「看病」もさせられていたという。

 一方、高橋氏の妻・伸子氏は17年に「一般社団法人NEOビジョンアカデミー」を設立。現在もライフスペースメンバーとともにヨガ教室などを開催している。伸子氏もこのメンバーも、釣部氏らとともに「千葉成田ミイラ事件@の再審支援の会」のシンポジウムに登壇したりスタッフとして関わったりしていた。

 私が2018年に釣部氏に確認したところ、高橋氏は15年12月に死去。この頃からSPGFの「冤罪シンポジウム」は開催されなくなった。

 ところがこの2018頃、釣部氏は豊島区倫理法人会の会長に就任。現在、同会のサイトでは「会員」として、伸子氏のほか複数のライフスペースメンバーたちが顔写真入で紹介されている。うち1人と伸子氏は、ミイラ事件の際に逮捕された経歴を持つ(不起訴)。また同会の会員紹介ページでは、伸子氏の「一般社団法人NEOビジョンアカデミー」も紹介され、リンクまで張ってある。

 前述の通り、「ビジョン」は高橋弘二氏がライフスペース時代に好んで使いセミナーの名称にもなっていた単語だ。しかも豊島区倫理法人会のサイト内には〈代表の高橋さんと荒町さんは、ヨガ・瞑想歴がなんと30年!!〉などと書かれている。ライフスペース時代の「瞑想歴」も含めてカウントしてアピールしているのだ。

 ライフスペースを脱会した「元メンバー」が心を入れ替えてそれぞれの道を歩んでいるのではなく、明らかに「残党」の活動である。

◆倫理法人会はなぜ気づかなかったのか

 倫理法人会は、PL教団の前身である「ひとのみち教団」を離脱した丸山敏雄氏(故人)が1945年に設立した倫理運動団体「倫理研究所」(現在は一般社団法人)の地方組織だ。豊島区倫理法人会はいわば「豊島区支部」にあたる。

 企業経営者などを集めて早朝から「モーニングセミナー」などを開催しているが、保守運動ネットワークとの関係も深い。以前本紙でリポートした日本母親連盟とも関わりがある(参照:山本太郎氏、日本母親連盟を支持者の面前でぶった斬り!)。

 もともとライフスペースとは関係がない団体で、釣部氏がどのような経緯で豊島区倫理法人会の会長に収まったのかはわからない。倫理研究所に問い合わせると倫理法人会首都圏担当者は「私が赴任したときにはすでに釣部さんが会長だったので経緯はわからない」と語り、釣部氏本人は「お話することはありません」との答え。

 倫理研究所の担当者は釣部氏やほかのライフスペースメンバーについて「会員の経歴をそこまで詳しく調べたりはしていないので……」と語る。しかし少なくとも釣部氏については、ミイラ事件を「冤罪」だと主張する活動を展開してきた人物であることは氏名でネットを検索すればわかりそうなものだ。

 とは言え、ライフスペースは団体名を変え、また関係者はライフスペースや事件の関係者であることを示さずに活動してきた。前述のように、弁護士や大学関係者まで利用し、第三者も賛同する市民運動か何かのように見えなくもない体裁をとってきた。

 こうして緩やかに擬態しつながり続けるライフスペース残党の活動に、今回、倫理研究所が巻き込まれたという構図だ。

 気づかなかったこと自体を責めるのは酷かもしれない。問題は、すでに事実が判明した今後、倫理研究所がどう対処するかだろう。

 倫理研究所の担当者は、「倫理法人会のモーニングセミナーについては、内容は決まっていて、商行為や勧誘活動、会と関係ない内容のものは禁じられています」と言う。しかしモーニングセミナーの内容を管理できたとしても、モーニングセミナー以外の場での関係ややりとりまで管理できるはずもない。

 事件を反省していないどころか冤罪だと主張したり、ライフスペース時代の実績をひっさげてヨガだの瞑想だのと言ったりしているカルトのメンバーに、倫理法人会のほかのメンバーが接触したり感化されかねない。母体である倫理研究所は、それをよしとするのか。倫理研究所の倫理が問われる。

 ミイラ事件は20年も前の事件だ。もう忘れている人や、そもそも知らない人も少なくないかもしれない。しかし「定説などと口走っていたヒゲのグル」と言えば、思い出す人もいるのではないか。実際、倫理研究所の担当者も私が説明すると、「(そういう事件が)確かにありましたね」という反応だった。

 本サイト配信の「オウム事件の「風化」に言及しても「風化」の実情は報じない新聞・テレビ」で、オウム問題をめぐるメディアと「風化」について書いた。しかしオウム以外のカルトの方が、より風化し忘れ去られている。

 しかしオウムがそうであるように、他のカルトも完全に消滅はせず、組織が存続していたり何かしらの形で残党が活動していたりするケースが多い。事件の記憶が薄れたとしても、警戒を解いていい状況にはなったわけではないのだ。

 本連載では今後、こうした団体の過去を蒸し返し、その後の経過や現状をリポートしていく。

<取材・文・写真/藤倉善郎>

【参考サイト】

ライフスペースを考える会

自己啓発セミナー対策ガイド

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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