入管収容施設にトランスジェンダーの被収容者。24時間中、22時間を独房に閉じ込められ続ける

入管収容施設にトランスジェンダーの被収容者。24時間中、22時間を独房に閉じ込められ続ける

収用前のパトさん。収容施設内では、化粧もおしゃれもできない

 東京入管では、面会をするとき「面会・物品授与許可申出書」というものを書かされる。面会する相手や自分の情報(名前、住所、国籍など)を書かなければならないのだ。面会する相手が男性か女性かをチェックする欄もある。

 今まではあまり深く考えずどちらかにチェックを入れていたが、筆者は初めてその欄があることに若干の違和感を覚えた。これから面会する相手は、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の被収容者であったからだ。

 入管収容施設にLGBTの人が収容されることはまれにあるのだが、入管はそうした立場の人への対応がまだ積極的にできていない。

◆独房に閉じ込められ、自由時間はわずか2時間

 面会室に現れたフィリピン人のパトリックさんこと、パトさん(28歳)は、収容前の写真のように化粧はしていないが、若々しくてかわいらしい感じの人だった。

 2019年7月にオーバーステイで収容されたパトさんの左手首には、複数の傷があった。収容されてからうつ病になり、毛抜きで自ら傷つけたという。

 パトさんは「トランスジェンダー(心は女性だが、体は男性)であること」を理由として独房に入れられている。収容されてから24時間中、22時間はずっと独房に閉じ込められている状態。自由時間は2時間しかなく、12〜13時と16時30分〜17時30分となっていて、その時間帯でシャワーや洗濯を済ませなければならない。他の人とは一切、会うことができない。

 ほかの被収容者は7時間の自由時間があるにもかかわらず、パトさんの自由時間はあまりにも短い。毎日誰とも話し相手がいない生活に、心が次第に弱っていく。そのうえ20歳のころからずっと服用していたホルモン剤を、収容されてから一切使わせてもらえなくなった。ストレスは増すばかりだった。

 ついには精神科の医師から診断を受け、「うつ病」だと診断された。そして職員たちの高圧的な態度に、さらに心が蝕まれていく。

「私が病気だから。よく叫んだり、暴れたりするから嫌われてしまったんだと思う」

◆さみしい。誰かと話したい 

 精神的に参っているパトさんに対して、職員たちは決してやさしくはない。

 パトさんはほかにも食道炎、胃炎などの病気もある。痔ろうに関しては「手術の必要がある」とまで言われているが、職員たちは心配してくれる様子もない。常用している薬をくれない時もよくあるという。

 向けられる口調も強いし、点呼では自分だけ呼んでもらえない。差別されている気持ちになり、ますます悲しくなってしまう。

 家族は日本にいるが、父は他界。母にはビザがあり、家族の生活を支えるために働いている。まだ小学生の兄弟の面倒もみなければいけないので、めったには面会に訪れることができない。

「さみしい。誰かと話したい」

 話し相手のいない毎日のなかで、誰かが面会に来てくれるのは非常にありがたいとパトさんは言う。

◆男性房にも女性房にも入れてもらえず、9か月間独房に

 4月6日、やっと「プレマリン」というホルモンの錠剤をもらえるようになったが、パトさんにはあまり効果がみられない。今まで使っていた薬とは違うようで、使用することに不安を感じている。「月に1回、注射を打てないか」と医者に頼んだが、「注射は高いから入管が認めないだろう」と拒否された。

「だったら解放してくれればいいのに……」

 パトさんは以前「フリータイムだけでも誰かと一緒がいい。男性でもいいから同じにさせてほしい」と頼んだが却下された。「ならば女性房のフリータイムで一緒にさせてほしい」と頼んだが、「それもどうせ聞き入れてもらえないだろう」と話す。

「心は女性でも体が男性だから、無理みたいなこと言われた。でも私だって人間よ。犬じゃない。たったの2時間だけ部屋の外に出して、そのあとは部屋に押し込める。そんなの犬扱いじゃない!」と、強く怒りをにじませた。

「このままずっと一人のままなら、また自殺するしかない」

◆多様性を認めない入管の体質がLGBT収容者を窮地に追い込む

 トランスジェンダーであるがために男性房にも女性房にも入れてもらえず、9か月も孤独の中で、ただ苦しみながら生きているパトさん。繊細な彼女は、どこまで耐えられるのだろうか。

 過去にも決して多くはないにせよ、LGBTの被収容者はいたし、これからもあることだろう。入管は収容するのであれば、しっかりとした対策を学んでほしい。それができないのであれば、むやみに苦しめないで即刻解放すべきだろう。

<文・写真/織田朝日>

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