事前通告なく一斉解雇。ハウステンボスから派遣切りに遭った当事者を直撃

事前通告なく一斉解雇。ハウステンボスから派遣切りに遭った当事者を直撃

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 長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」が3月中旬、同施設でスタッフとして働いていた派遣社員数十人の契約を一斉に打ち切った。

 運営会社のハウステンボス株式会社は「新型コロナウイルスの影響」と説明する。一方、突然に派遣切りに遭った元スタッフたちは困惑。補償が受けられるかどうかも定かでなく、不安を訴えている。元スタッフたちが匿名を条件に取材に応じてくれた。

◆事前通告もなく、派遣社員が全員解雇に

「このコロナが蔓延している中で、いきなりクビを切られて放り投げられて、非常に腹立たしいです」――。そう訴えるのは、ハウステンボスで契約社員として働いていたAさん(女性・20代)。3月16日付で、契約期間中だというのに解雇を言い渡されたのだという。

「新型コロナの影響で、ハウステンボスは2月29日から3月15日まで休園することになりました。休園中も私たちは施設の清掃や園の草むしりをやり、シフトは営業再開の16日から組まれていましたが、同日付で解雇を言い渡されました。

 私だけではなく、派遣は事前通告なく全員クビです。こうした状況をハウステンボスの社員さんは誰も知らされていませんでした。人件費や売り上げなどで財政的に厳しくなることは、休園が決まった時点で分かっていたと思います。

『もしかしたら、休業してほしいと言われるか、切られるかもしれない……』と思っていましたが、何も予告せずクビにするというのは、さすがにあり得ない」(Aさん)

◆金銭的補償についても不透明

 筆者がハウステンボスに事実確認すると、まだ契約期間中だというのに派遣社員を一方的に契約解除したことは事実であるようだ。

「感染拡大を防ぐため、屋内施設のスタッフの方々の契約を終了させていただきました」(ハウステンボス広報)

 しかし、Aさんとともに同施設から解雇された派遣社員Bさん(男性・20代)は、このハウステンボスの主張を否定した。

「屋内・屋外に関係なく、50人ほどいた派遣社員は全員解雇されたんです。解雇は派遣会社を通じて伝えられ、ハウステンボス側からはまったく説明がありませんでした」(Bさん)

 しかも、補償が支払われるかどうかもあいまいだ。ハウステンボスは「派遣会社と協議して補償支払いの準備をさせていただいている」と説明するが、AさんとBさんはこう反論する。

「所属する派遣会社によって対応が違うという状況です。現時点では『補償はない』と決まっているところ、ハウステンボスと補償の協議中のところと、それから1か月分の給料補償がおりるところもあると聞いています」(Aさん)

「僕の場合、当初の契約期間は4月下旬まででしたが、金銭的補償は今のところ一切ないとのことです。ハウステンボスが一時休園したのも、政府の自粛要請によるもの。政府にはハウステンボスにしっかり補償を払うよう指導してもらいたいし、失業対策をキチンとやってほしいです」(Bさん)

◆非正規労働者の解雇が深刻化するのはこれから

 問題は、ハウステンボスにとどまらない。各地の労働組合には、新型コロナウイルスによる労働問題が多数報告されているという。

「全国労働組合総連合」の仲野智氏は、「もともと年度末のこの時期は労働問題が多いのですが、今年3月は昨年の2倍の相談件数があり、コロナ関連の相談件数が約半数を占めています」と語る。

 深刻な事態を受け、全労連では3月16〜19日、追加の電話相談を実施。そこで寄せられた訴えには「休業補償を払ってもらえない」というものが多かったという。しかも今後、新型コロナに関連した労働問題はさらに増える見込みだという。

「リーマンショック時のタイムラグから考えても、非正規労働者の解雇が深刻化するのはこれからで、ゴールデンウィークあたりにピークを迎えるのではないでしょうか。5〜6月の株主総会に備えてリストラを断行する企業も出てきますし、正規労働者も安泰とは言えなくなるでしょう」(仲野氏)

 AさんやBさんのように、突然解雇された人々はどうしたらよいのか。仲野氏は「ぜひお近くの労働組合にご相談してください」と言う。「全労連傘下の地方労組は、非正規労働者の皆さんも加入できます。組合員になっていただければ、労組が企業と交渉します」(仲野氏)。

 リーマンショック超えは確実とされる、新型コロナウイルス感染拡大による経済危機。休業や業績悪化に苦しむ企業の救済もまた不可欠ではあるが、その大前提として、そこで働く人々の権利がまず守られなくてはならない。

<取材・文/志葉玲>

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