ビデオ会議の壁紙、さまざまな企業が続々提供開始。急速に流行する文化

ビデオ会議の壁紙、さまざまな企業が続々提供開始。急速に流行する文化

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◆ビデオ会議の壁紙を各社が出し始めている

 新型コロナウイルスの影響で、テレワークの実施者が拡大している。人気のビデオ会議ソフト Zoom では、昨年12月の1000万人から2億人に、デイリーのアクティブユーザー数が急増している(参照:VentureBeat)。

 手軽に始められる Zoom が、多くのユーザー間に広まって行くにつれて、ネットでは新しい動きが出ている。それはバーチャル背景の供給である。これはちょうど、スマートフォンやパソコンの壁紙のようなものだ。Zoom では、簡単に背景を変えられる(参照:Zoom ヘルプセンター)。そして人間以外の部分を、設定した背景画像にすることができる。

 自宅で自分の姿を出すときに気になるのは背景だ。自分の部屋の様子を見せたくないというのは自然な欲求だ。片付けるのが面倒。プライベートな情報だから、他人にさらしたくない。ただでさえ気分が滅入るので、ネタを交えた背景で笑いを取りたい。様々な理由で、バーチャル背景を利用する人がいる。その流れに乗って、各社が自社の製品を宣伝する目的で、バーチャル背景用の画像ファイルを公開している。

◆ゲーム会社の提供する背景が話題に

 特にゲーム会社のバーチャル背景公開が話題になっている。元々、ゲームには背景画像があることが多い。その画像を素材として出せば、話題になり自社製品の宣伝になる。ファンが喜ぶだけでなく、メディアで取り上げられることもある。そうした活動をしているところを、いくつかピックアップしてみよう。

 大手のゲーム会社の筆頭である任天堂は、『スーパーマリオ オデッセイ』のバーチャル背景を公開している。

 マニアに根強い人気を持つセガは、『メガドライブミニ』や『ぷよぷよ』『龍が如く』のバーチャル背景を公開している。

 ヴァニラウェアが開発して、アトラスから発売された『十三機兵防衛圏』。熱狂的な人気になっている同ソフトは、アトラスがバーチャル背景を出している。

 和風にしたいのならば、コーエーテクモゲームスの『信長の野望』がある。戦国武将になり切って会議をするのもよいだろう。

 ファンタジー風のバーチャル背景が欲しいならば、Cygamesの『グランブルーファンタジー』が複数公開している。冒険気分で話し合いをするのも一興だろう。

◆アニメや映画会社も続々参入!

 バーチャル背景を提供しているのは、ゲーム会社だけでない。アニメーションや映画の会社も、この流れに乗っている。Marvel Entertainment や、Walt Disney Studios、20th Century Studios といった会社のバーチャル背景が、ネットでも話題になっていた。

 日本のコンテンツだと、エヴァンゲリオン公式が、バーチャル背景を提供している。スレッドには、いくつかの種類が投下されており、作品の雰囲気から怪しい秘密会議のようになるのが面白い。

 その他、ネットでは大喜利のようになっており、「電波少年」や「例のプール」、「ソフマップ」など、いかに面白いバーチャル背景を選ぶか、頭をひねっている人たちが出ている(Togetter)。

◆個人が商品の広告塔になる

 さて、こうしたバーチャル背景の提供は、過去と比べて珍しいものではない。商品の画像をノベルティとして提供する行為は、昔からおこなわれている。スマートフォンの壁紙やロック画面。パソコンの壁紙やスクリーンセーバーなどが、それらに当たる。

 有償のものもあれば、無償のものもある。会員へのポイント特典などで配布されることもある。たとえば、Nintendo Switch では、もらえるポイントを使って、各種ゲームのパソコンやスマートフォン向けの壁紙をもらうことが可能だ(参照:マイニンテンドー)。

 こうした画像の提供は、おもに利用者への宣伝や販促を目的としている。そうした画像と、ビデオ会議の背景では、宣伝対象が少し異なっている。バーチャル背景は、選択した人だけでなく、その人物とビデオ会議をおこなっている人たち全員に提示される。宣伝の対象が、内向きではなく外向きなのだ。

 また会議の冒頭で、バーチャル背景が話題になり盛り上がることも多い。これは商品の宣伝としては非常に強力だ。ユーザーが自身の言葉で、コンテンツについて語ってくれる。個人が商品の広告塔になってくれるわけだ。

 バーチャル背景は、個人の満足で終わるのではなく、バイラルに広がる可能性を持っている。他人の背景を見て、面白いと思った人が、自分もその背景にして感染していくこともあるからだ。

 ビデオ会議の頻度が増えれば増えるほど、広告効果は増していく。そしてコストは非常に低い。画像を1枚提供すればよいだけだからだ。そのため、フットワークの軽い会社は、自社の商品のバーチャル背景を積極的に提供している。

 ビデオ会議がメディアになれば、それ自体が広告媒体として機能し始める。まだ、各社は流行に乗って画像を出しているだけだが、効果を考えながら展開していくところも出てくるだろう。

 たとえば資金力があり、広告をおこないたい会社が、こうしたバーチャル背景を、ビデオ会議ソフトに同梱してもらうということもあるだろう。パソコンのバンドルソフトのような商売だ。これは、ソフトウェアを提供する会社側にもメリットがある。提携先によっては、ソフトは話題になり認知度が向上するからだ。

 それだけではない。バーチャル背景まとめサイトや、検索サイト、投稿サイトなど、数々の周辺サービスが生まれていくことも考えられる。そうした状況になれば、背景を変えられないビデオ会議システムも、基本機能として実装していくだろう。実際に、Microsoft Teams も対応するようになった。ビデオ会議の流行は、周辺を巻き込んで、新しい文化を育てていく可能性を持っている。ビデオ会議の流行は、周辺を巻き込んで、新しい文化を育てていく可能性を持っている。

◆ 広告化する映像世界

 インターネットの世界では、動画が広告の重要な手段になっている。動画のあいだに広告を差し挟むだけでなく、動画の一部を改変して、商品や宣伝を合成する試みもおこなわれている。

 ビデオ会議の世界的な使用頻度が高まり、メディアとして力を付けてくれば、広告メディアとして利用され始めるのではないか。

 たとえば着ているティーシャツの模様が、企業のロゴに変換される。画面に、特定の飲料が映りこむ合成がおこなわれる。こうしたバーチャル着せ替えや、バーチャル前景が登場してもおかしくない。

 ユーザーは、それらを表示することで、広告料を受け取ることができる未来が来るかもしれない。

 また、テレワークが標準となったとき、その映像は、現実世界とは異なるものが標準となる可能性がある。

 3月の末に、「Microsoft Teams」を利用した上司の姿がジャガイモになった、という話が話題になった(参照:ねとらぼ)。「Microsoft Teams」では、Snapchat のフィルターが利用できる(Lens Creator)。

 上司がジャガイモになった一件では、そのまま会議がおこなわれた。そのことから考えて、ビデオ会議では、必ずしも姿が人間のものである必要はないことが分かる。VTuber のように姿を変えてビデオ会議をおこなってもよいのだ。アニメやSFなどのフィクションでは、そうした世界が多く描かれてきた。未来と思われていた世界が、ようやく現実になろうとしている。

 ビデオ通話や、ビデオ会議自体は以前からあった。しかし、いまいち生活や仕事に密着することはなかった。新型コロナウイルスによる世界的な外出規制や自粛は、まだ当分続くだろう。その結果、人々の行動様式が大きく変わる可能性がある。SNSから動画による直接対話に、人々がシフトするかもしれない。

 新型コロナウイルスの蔓延は突発的で危機的な事態だが、その結果社会がどのように変わるのか興味を持って見ている。

<文/柳井政和>

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。

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