新聞各社の新型コロナウイルスのグラフを比較してみた

新聞各社の新型コロナウイルスのグラフを比較してみた

mattthewafflecat via Pixabay

◆新聞各社が、新型コロナウイルスの特設ページを作っている

 新型コロナウイルスのニュースが連日続いている。日本ではまだ死者数が少ないものの、世界を見渡せば数百万人の感染者が出ており、10万人以上の人が死んでいる。日本でも、陽性者が増え続けており、医療崩壊が叫ばれている。日々刻々と状況が変わる中、多くの新聞系ニュースサイトを中心に、新型コロナウイルスの特設ページが作られている。

 こうした特設ページは、過去には選挙の際によく作られていた。状況が変わるたびに数字が更新されてグラフが変化する。その表示方法は各社で異なる。選挙の時には、ある程度似通っていたこうしたビジュアル化だが、新型コロナウイルスではかなり見た目が異なっている。どういった情報に注目して、どんな情報を出していくのか。その視点により作り方は違う。

 新聞系ニュースサイトを中心に、様々な視点で情報が出されている今回の新型コロナウイルスのビジュアル化を見ていこう。

◆新聞各社のグラフ化を比較する

◆朝日新聞デジタル

 まずは、朝日新聞社のニュースサイトである朝日新聞デジタルから見よう。こちらでは、ニュースと有用な情報をまとめた『新型コロナウイルス特設ページ』と、日々の情報をグラフ化した『新型コロナウイルス感染者数の推移』というページを用意している。

 情報は上から順に「国内での感染判明例(陽性、死亡)」「都道府県別(感染数を地図上に円で表示)」「陽性・死亡者数(類型、日ごと)」「入院・退院者数(各日時点、日ごと)」と並んでいる。

 最も最上位に置かれている情報は、国内での陽性数、死亡数。次に都道府県での状況。後半にまとめられている陽性・死亡者数、院・退院者数については、折れ線グラフで日々の変化が示されている。新型コロナウイルスのビジュアル化で特徴的なのは、時系列でデータを扱えるようにしているメディアが多いことだ。

 陽性・死亡者数を見ると、徐々に上昇カーブが急になっている。入院・退院者数の入院中の値を見ると急激に増加しているのが見てとれる。グラフ化された情報は、分かりやすく危機的な状況を知らせてくれている。

◆読売新聞オンライン

 次に、読売新聞のニュースサイトである読売新聞オンラインを見てみよう。『【随時更新】新型コロナ、今なにをすべきか〜正しい情報で正しい行動を』という特設ページを設けており、最新のニュースや基礎知識、予防方法などの項目がタブで並んでいる。この中に、情報をビジュアル化して表示してくれる『新型コロナウィルス データビジュアル』という項目がある。

 情報は上から順に「各国感染者数の人口比」「新型コロナウイルス 国内感染者数」「新規感染者数の推移(都道府県)」「新型コロナウイルス世界感染者数」「感染者数の国別推移」「新型コロナウイルス感染者・回復者・死者の総数」「各国の死者数」「中国以外の各国が感染者500人突破するまでの日数比較」となっている。

 朝日新聞デジタルが身近な危機をビジュアルで知らせるという意図で作られているのならば、読売新聞オンラインは世界情勢を俯瞰して見ることに重きが置かれている。各国の情勢から世界の動向を見るには、こちらの方が適しているだろう。しかし、生活者の視点で情報を得たいという欲求には答えてくれない。この二社は、新型コロナウイルスのビジュアル化について、顕著な視点の違いを持っている。

◆日本経済新聞

 日本経済新聞のサイトでは、『新型コロナウイルス』というニュースのまとめページを用意している。また、『チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス』というページで、情報をビジュアル化している。このページは3ページに分割されており『国内の感染状況』『世界の感染状況』『世界マップ』が用意されている。

 『国内の感染状況』では、情報は上から順に「新規感染者数」「首都圏とその他の新規感染者」「首都圏とその他の累計感染者数」「感染者、退院した人、死者の数」「都道府県別の人口10万人あたり感染者数」「PCR検査の実施人数」「年代別の感染状況」「年代別の人口10万人あたり感染者数」と並んでいる。これらには全て、文章による解説が付いている。数字だけでなく、どこに注目すればよいのか示されている。また「首都圏」「年代」という情報が他社とは異なり加わっており、読者層を反映した情報を提示しているのが分かる。

 『世界の感染状況』では、「世界全体」と「国別」と大項目が用意されている。「世界全体」では「新規感染者数」「新規死者数」「累計感染者数」「感染者、回復者、死者の数」とグラフが並んでいる。また「国別」では、「累計感染者数の増加ペース」「累計死者数の増加ペース」「新規感染者数」「新規死者数」「累計感染者数」「累計死者数」「感染している人の数」「致死率」「人口10万人あたり感染者数」とグラフが並んでいる。こちらにも、全てのグラフに文章による解説が付いているため、意味を読み取りやすい。

 『世界マップ』では、世界地図上の感染者の推移を、時系列でたどれるようになっている。

 日本経済新聞の『チャートで見る日本の感染状況』は、より多角的な情報を出しつつ、その情報を「読み取る」ことに重きが置かれている。情報をただグラフ化するだけでなく、それをどう読み解けばよいのか文章を添えることで、判断の基準にして欲しいという意図を感じる。

◆毎日新聞

 毎日新聞のサイトでも、『新型コロナウイルス』の特設ページを用意している。こちらは、1ページにニュースもグラフもまとまっている。他の新聞社系のサイトと比べると、あっさりとした内容になっている。

 情報は上から順に「国内感染の状況」「ニュース」「地域別の患者報告数(都道府県別情報)」「国内の患者数の推移(新規、累計)」「国内のPCR検査実施人数の推移(新規、累計)」「新型コロナウイルスの基礎知識」となっている。

 他の新聞系サイトとの大きな違いは、「国内のPCR検査実施人数の推移」の情報があることだろう。

◆NHKやロイターも特設サイトを設置

◆NHK

 NHKのWebサイト『NHK NEWS WEB』でも『特設サイト 新型コロナウイルス 感染者数やNHK最新ニュース』という特設ページが用意されている。こちらでは、情報やニュースとともに、最新の情報やグラフが掲載されている。

 記事執筆時点での情報は、「街の人出は減っているか? 各地のデータ」「日本国内の感染者数(NHKまとめ)(1日ごと、累計)」「日本国内の感染者数(NHKまとめ)」となっている。グラフは感染者数のみで、あとは表になっている。

 テレビのニュースに付随した情報ということで、経時的な情報ではなく、速報的な情報に重きが置かれていることが分かる。

◆ロイター

 ロイター日本語版にも『地図とグラフでみる新型コロナウイルスの感染者数』というビジュアル化されたページが用意されている。

 こちらの情報は「感染者数の世界地図」「世界の感染者数(累計、日別)」「累計死者数」と並んでいる。特徴的なのは、非常に多くの国での死者情報がまとまっていることだ。米国、スペイン、イタリアといった、新型コロナウイルスのニュースでよく見る国もあれば、ニカラグア、バチカン市国、モーリタニアといった、死亡者数が少ない国や、ゼロの国まで掲載されている。そしてそれらが、感染者数順にソートされている。また、欧州、北米、中東のような地域別でも確認できる。

 世界の国々の様子を細かく見るには、ロイターのグラフは有用だ。

◆厚労省や自治体のコロナ情報サイトは?

◆厚生労働省

 厚生労働省も『新型コロナウイルス感染症について』というページで情報発信をしている。こちらでは、最新の情報をPDF等でダウンロードできるだけでなく、国内の発生状況についてまとめている。

 こちらの情報は「PCR検査陽性者数」「PCR検査陽性時の有症状・無症状の別」「入退院等の状況」「入退院の状況」が表でまとめられている。速報的な内容で、時系列でグラフ化されているわけではない。変化の状態を把握したい場合は、情報をグラフ化した他のサイトを見るか、自分で数字を入力してグラフを作る必要があるだろう。

◆新型コロナウイルス感染症対策サイト

 東京都公式の『都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト』は、東京都の新型コロナウイルスの最新情報を確認するためのものだ。

 こちらの情報は「検査陽性者の状況」「陽性患者数」「陽性患者の属性」「陽性患者数(区市町村別)」「検査実施状況」「検査実施人数」「検査実施件数」「新型コロナコールセンター相談件数」「新型コロナ受診相談窓口相談件数」「都営地下鉄の利用者数の推移」「都庁来庁者数の推移」と、非常に細かい数字までがグラフ化されている。

 新聞系のサイトが大枠を把握するための情報だとすれば、こちらは東京都の住民が詳細を確かめるためのものだと言える。

 『東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト』のソースコードは、「MITライセンス」という再利用しやすいライセンスで公開されており、誰でも自由に利用できる。そのため、『県内の最新感染動向 | 神奈川県 新型コロナウイルス感染症対策サイト』のように、他の地域の情報についてのサイトが派生的に作られたりしている。

◆COVID-19 Japan - 新型コロナウイルス対策ダッシュボード

 もうひとつ有用なページを紹介しておく。『COVID-19 Japan - 新型コロナウイルス対策ダッシュボード #StopCOVID19JP』では、都道府県の「現在患者数 / 対策病床数」の情報を表示している。病床数が逼迫している都道府県は、だんだん赤になり、最後は黒くなる。国や地方自治体が、対策病床数を増やした場合の情報も反映される。

 このサイトを毎日見ているのだが、患者数が対策病床数を超えて黒くなる地域が徐々に増えている。少し前は東京都ぐらいしか黒くなかったが、今では多くの都道府県が黒くなっている。国や地方自治体の後方支援が足りていない様子が見てとれる。マスクなども含めて、速やかな支援が必要なことが分かる。

◆情報のグラフ化の差異

 いくつかのサイトのグラフ化を見て来た。新型コロナウイルスという災害に対して、様々な視点でグラフ化がおこなわれているのが分かる。情報は、詳しく全てを提示すればそれでよいというわけではない。見たい情報に素早くアクセスできるように整理して表示することが大切だ。

 新型コロナウイルスの動向は、身近な生活、都道府県、国、世界という様々なレイヤーに関係する。日々の危険を避ける視点もあれば、世界情勢を見て投資にどう活かすかといった視点まである。そして、単一の視点だけでは許されない状況になっている。こうした様々な視点を通して情報を得て、身体的、経済的な危機を回避していきたい。

<文/柳井政和>

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。

関連記事(外部サイト)