コロナ休校で注目を集める絵本の読み聞かせ動画。同時に浮上する著作権侵害問題の深刻さ

コロナ休校で注目を集める絵本の読み聞かせ動画。同時に浮上する著作権侵害問題の深刻さ

aijiro / PIXTA(ピクスタ)

◆ 学校自粛で絵本の読み聞かせ動画が流行るが問題も

 新型コロナウイルスの影響は続いている。経済活動の自粛要請だけでなく、小学校の自宅待機が大きな影響を社会に与えている。また普段、保育園に子供を預けている家庭で、子供を家に待機させているところもある。子供が家にいる家庭では、何とかして子供を大人しくさせて、その隙に仕事を進めている。

 なかなか大変なのは、飽きやすく仕事の妨げになる子供に、どういったコンテンツを与えるかだ。その解決方法の一つとして、Youtube に上がっている絵本の読み聞かせ動画に注目が集まっている。しかし、これらの多くは著作権侵害の問題を抱えている。2017年から2018年にかけて話題になったマンガ海賊版サイト「漫画村」のような違法コンテンツなわけだ。

 絵本の読み聞かせ動画が、著作権を侵害していることは以前から問題になっていた。それが今回のコロナ自粛によって、大きくクローズアップされるようになった。

 一般の人が無許可でアップロードしている絵本の読み聞かせ動画の多くは、著作権を無視している。中には絵本をそのまま撮影して、読み上げているものもある。これらは本の中身を全て見られる状態だ。もちろん、読み上げ自体も、著作権者の許可が必要な行為だ。アップロードしている本人は犯罪の自覚がないのかもしれないが、いつ訴えられてもおかしくない。

 動画サイトには、実は紙の本を撮影した違法動画がよく上がっている。著作権者の許可を取っていない絵本の読み聞かせ動画だけでない。マンガもその対象だ。今回は、新型コロナウイルスの流れで話題になった、絵本の読み聞かせ動画に絞って、最近の動向を振り返ってみようと思う。

◆絵本読み聞かせ動画問題の広まり

 今回のコロナ禍で、絵本を出版している会社は、問題についての情報発信をしている。『だるまさん』シリーズで有名なブロンズ新社では、4月10日の時点で、違法動画や違法グッズに対して何が問題なのかをマンガでまとめた【大切なお願い】ツイートを公開している。

 この流れを受けて、4月15日には BuzzFeed にて『「好きだから」こそ思いとどまって。“愛ある”著作権侵害に悩む、絵本出版社の嘆き』という記事が公開される。この記事では、上記のブロンズ新社の『だるまさん』シリーズを取り上げて、Youtube の違法動画や、メルカリでの違法グッズの問題を紹介している。同記事では、弁護士のコメントとして「刑事上は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金刑」という法律も紹介されている。

 この翌日、4月16日には、『ぐりとぐら』や『ねないこだれだ』などの絵本で有名な福音館書店が『絵本の読み聞かせ動画配信についてのお願い』というページを公開した。こちらでは、読み聞かせの動画配信をおこないたい場合は、利用を希望する作品を事前に申請するようにと案内が書かれている。

 申請のあった作品については、著作権者に意向を確認して返信をするそうだ。出版社の手間を考えると頭が下がる。当然、希望に添えない可能性もある。どのような方針で、この問題に向き合うかは出版社によってそれぞれだろう。いずれの場合も、手間が掛かるので出版社側の負担になる。

 4月20日には、こうした絵本の読み聞かせ動画の問題は、『“読み聞かせ動画の無断公開やめて” 出版各社が呼びかけ』という形で、NHKでも取り上げられた。問題は、各出版社個別の問題から、全国ニュースにまで発展した。出版社が声を上げたことで、大きな社会問題として認知されたことになる。

◆適正な絵本読み聞かせ動画の利用

 では、インターネットに上がっている絵本の読み聞かせ動画は、著作権違反のものばかりなのか。実はそうではなく、きちんと対処しているものや許可を取っているものもある。

 今回の新型コロナウイルスの自宅待機を支援するために、声優の悠木碧氏が、絵本読み聞かせ音源『手袋を買いに』を SoundCloud で4月8日に公開している。

http://soundcloud.com/user-683254243/ywoxe0qsngjn

 この作品は、新美南吉の児童文学で、「青空文庫」に公開されているものだ。青空文庫は、著作権フリーな文書を収録した著名サイトだ(2020/4/20追記:著作権フリーじゃない作品もあるので注意。詳細は青空文庫参照)。また、編集とBGM作成は、声優の小岩井ことりさんが担当しており、著作権的に問題がないように配慮されている。

 青空文庫に収録されている作品の朗読は、実は Youtube でも多く存在する。私も過去に、複数の読み上げ動画を聞き比べたりしていた。絵本に限定したものではないが、こうしたものを聞くのも一つの手だろう。

 また、書店でこうした取り組みをしているところもある。福岡県の白石書店では、『絵本の読み聞かせ動画のYouTubeチャンネルでの無料公開』をおこなっている。こちらの動画は5月6日までの期間限定で、動画の冒頭に著作権者や出版社の協力を得ていることが表示されている。

http://youtu.be/jo_eGjE1gzg

 絵本の読み上げ動画をネットにアップロードしたい場合は、このように確認を取る必要がある。また、ずっと公開することは元の絵本の販売を妨げることになるので、期間限定でおこなうのがよいだろう。

 声優や書店ではなく、テレビが主導のケースもある。日本テレビでは、YouTube で『日テレアナウンサー絵本よみきかせ』を公開している。こちらも出版社に確認を取っていることが、説明文に記されている。

http://youtu.be/i_TCue4R6Zk

 もし、在宅で子供に絵本の読み聞かせ動画を見せたい場合は、こうした著作権の問題をクリアしたものを見せることをおすすめする。

 最後に、著者自体が朗読するケースについて、私自身のやり取りの経験を書いておく。以前、出版社に自著の読み上げ動画をアップロードすることについて尋ねたことがある。権利的には問題がないが、著者が読み上げていることが明確に分かるように配慮して欲しいと言われた。

 著者が読み上げているから自分たちもやっていい。そう短絡的に判断する人が多いということだろう。現状、著作権についての知識は一般に行き渡っていない。今回の絵本読み上げ問題などを通して、少しずつでも知識が広まっていくとよいと思う。

<文/柳井政和>

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。

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