トラックドライバーのシャワールーム利用休止は新型コロナ感染防止においても死活問題

トラックドライバーのシャワールーム利用休止は新型コロナ感染防止においても死活問題

ガソリンスタンドに貼られたシャワールーム利用停止のお知らせ

◆トラックドライバーにとっての「コロナ禍」

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回は、コロナ禍によるトラックドライバーたちへの言われなき「職業差別」の実態を伝えたが、今回は、先日彼らに降りかかったもう1つの悩ましき問題について紹介したい。

 前回言及したように、トラックドライバーの一部には、このコロナ禍の影響で言われなき差別を受けている人が少なくない。

 「仕事があるだけいいと思え」、「コロナ運ぶな」と言った声には、「自分たちだって国が補償してくれればこんな状況下で仕事をしたいとは思わない」、「ならば走らないから自分の荷物は自分で運んでくれるか」という悲痛な叫びが聞こえてくる。

 そんな中、トラックドライバーにとってもう1つ悩ましい動きが全国で広がっていたことは、世間ではあまり知られていない。

 「ガソリンスタンドのシャワールームの一時利用停止」だ。

 実は、全国展開している大型のガソリンスタンドには、法人契約をしている長距離トラックドライバー向けのシャワールームが併設されているところがある。

 店舗によって利用条件や方法は異なるものの、そのほとんどが給油をすれば無料で利用できる。1週間、長いケースだと1か月もの間自宅に帰らず、日々時間に追われ、かつ荷主先で肉体労働をする彼ら長距離トラックドライバーにとって同施設は、給油がてら手短に身を清められる数少ない「オアシス的存在」。ゆえに全国のシャワールームの中でも、普段からダントツに利用率が高い。

 そんな憩いの場の利用停止。

 後述する通り、4月24日現在は順次再開されているが、1週間ほど続いたその利用停止期間中、こんな時世であるがゆえに、今後の衛生面を不安視した多くのトラックドライバーからは、こんな声が上がった。

◆「自分が拾ったウィルスに自分が感染してしまう」

「1週間風呂無しかな(泣)」

「集団で入浴するわけじゃないのに」

「消毒どころかシャワーも浴びられない」

「スタンドのシャワーが使えないとかなりの打撃です。トラックステーションのコインシャワーなんか常に渋滞ですし、スーパー銭湯などは大型トラックが駐車できるところなどあまり無いですしね」

「ガソリンスタンドのシャワーが続々と閉鎖されてくのは、今からの暑い季節は死活問題」

「ポリタンクにホース付けて水浴び検討中」

「月曜日に出勤したら土曜日まで帰れなくて毎日車中泊です。このままだとどうにもなりません」

「シャワールームでは感染しないと思いますけどね。心配なら中性洗剤とブラシで掃除してから入り、使用後は換気しておけば大丈夫だと思います。ちょっと神経質になりすぎなのでは?」

「あらゆるところのガソリンスタンドのシャワーが使用禁止になってるから、うちの出ずっぱりドライバーはわざわざ車庫にシャワー浴びに戻らなくてはいけない為、車庫のシャワールームが争奪戦になってきている」

「高速を使えないドライバーがウイルスを付けたままトラックの中で睡眠を取れば、自分が拾ってきたウイルスに自分が感染するリスクが高くなる。人手不足の中、ドライバーに感染が広まったら日本の輸送が崩壊してしまう」

 東京などで出された休業要請の中には、娯楽性の高い「スーパー銭湯」は対象となったが、「銭湯」は含まれなかった。「社会生活の維持に必要な施設」と判断されたからだ。

 長距離のトラックドライバーは先述通り、長い時だと1か月もの間家に帰れないケースもある。高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(SAPA)にもシャワールームがあるところはあるが、

「そもそも高速道路に乗らない」

「SAPAのシャワーは有料がほとんどで、毎日入るとなると大きな出費になる(だいたい200円/9〜10分)」

「ガソリンスタンドは必ず寄るところ」

「汗をかいた作業の後でもすぐに立ち寄れる」

 などという理由から、やはり全国に点在するガソリンスタンドのシャワールームは、彼らにとってその「社会生活の維持に必要な施設」そのものなのだ。

◆ドライバーの衛生面が悪化すれば本末転倒

 前回、トラックドライバーの差別問題でも言及したように、一部の消費者からは「全国走り回りながらウイルスをまき散らすな」といった心無い声が掛けられる。

 そんな言葉に反し、彼ら自身は単独行動が多く、感染することもさせることも確率的には低い。しかし、身を清められない日が続くとなると話は別だ。

 今回、各ガソリンスタンドのシャワールームが閉鎖された原因は、察しの通り「施設内でのコロナ感染防止」によるものなのだが、彼らの衛生面が悪化し、感染リスクが高まれば、本末転倒以外のなにものでもないのである。

 ただ、このガソリンスタンドのシャワールームは、そのほとんどがガソリンスタンド側の厚意で開放してくれているものであるため、店側に直接「シャワー利用はドライバーの権利だ」などと強く主張することは無論できない。

 が、彼らドライバーとしては、ウイルス対策としてはもちろん、これからの「季節」を考えるとシャワーを利用しない訳にもいかないため、今回ガソリンスタンドのシャワールームが利用できなくなっていた期間、サービスエリアなど他の施設ではこれまで以上に混雑が生じたという。

 こうして「シャワー難民」と化したトラックドライバーの中には、

「ガソリンスタンドのシャワールーム利用再開までの期間、30分で移動厳守、もちろん有料でいいから、車高4mのクルマが駐車可能なラブホや大型ホテルさん、誰か手を上げてくれたらいいのに。街道沿い&インターチェンジ傍に沢山あるし」

「大型の観光ホテルに関しては、観光バス用の駐車場が既にあるという、メリットもあります」

 といったやり取りも。それほどドライバーにとって今回の件は死活問題だったのだ。

 こうした悲痛な現場からの声や国からの働きかけによって、4月23日ごろから、全国の各ガソリンスタンドは順次再開を決定。全国を走り回っているドライバーたちは、その素早いガソリンスタンドの対応に胸をなでおろし、筆者も入稿していた原稿を急遽修正するという嬉しい手間に追われた次第だ。

◆シャワールームがあることで人気のラーメン店「山岡家」

 一時はドライバーの感染率の上昇さえ懸念された今回の件だが、この出来事に対して募集したアンケートで、現役ドライバーから「便利だ」という声が相次いだ店がある。全国展開するラーメン店「ラーメン山岡家」だ。

 店舗の多くが24時間営業で、大型車が何台も入る駐車場を持っているのだが、さらには店舗によって食事をしたら無料で使えるシャワーまで付いているため、普段から「トラックドライバーに優しいラーメン店」として親しまれている。

 今回、ある店舗に確認してみたところ、ガソリンスタンドのシャワールームが閉鎖していた期間も、「利用停止という話はない」とのことだった。

 トラックドライバー以外でも利用できるというが、「ガソリンスタンドのシャワールームが使えなくなって以降、シャワーが混んだりしていないか」と聞いたところ、「そんなことないですよ。コロナでお客さん全体の数が減ってしまったので」という、飲食店側の切実な声も聞こえてきた。

 我々のインフラを守るために、コロナ禍の状況下でも昼夜を問わず走り続けるトラックドライバー。

 シャワーに入れないことになれば、シャワールームで感染する以前に、衛生上、感染リスクが高まる可能性も考えられなくもないし、「臭い」などといった偏見を持たれるきっかけにもなる。

 感染防止対策は慎重に講じながらも、引き続き全国のシャワールームの存続を願ってやまない。

<取材・文・写真/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto

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