病院清掃のプロが教える、感染リスクを減らす(超)掃除術。家庭内クラスターを防げ!

コロナ感染経路の多くが”家庭内”とも 東京都が行った調査でも7割超が家庭内感染

記事まとめ

  • 感染者が増え続ける新型コロナの感染経路の多くが”家庭内”ということがわかってきた
  • WHOと中国の調査では感染経路の約8割、東京都が行った調査も7割超が家庭内感染とも
  • 飛沫が多量に落ちるテーブルの上、手洗い行う洗面所、寝室のほうがハイリスクとも

病院清掃のプロが教える、感染リスクを減らす(超)掃除術。家庭内クラスターを防げ!

病院清掃のプロが教える、感染リスクを減らす(超)掃除術。家庭内クラスターを防げ!

pearlinheart / PIXTA(ピクスタ)

 いまだ新たな感染者が増え続ける新型コロナウイルス。実は感染経路の多くが”家庭内”ということがわかってきた。家の中でも特に感染リスクが高いスポットと、そこに潜む病原体を除去する方法を感染予防のプロに聞いた。

◆コロナ感染の8割が家庭内。汚部屋ではリスクが増大!

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府の専門家会議が「人と人との接触8割削減を」と呼びかけるも、経団連が全会員企業を対象に4月に実施した調査では、テレワークや在宅勤務が8割以上実現できたのは36.1%にとどまっている。取引先などの身近なところに感染者が現れ、明日は我が身、と危機を感じながら通勤している人々も多い。

 感染予防策としてマスクの着用、帰宅後の手指消毒や手洗いが推奨されているが、それでも家の中にウイルスを100%持ち込まないようにするのは不可能だ。

 実は、新型コロナがここまで世界的な大流行となった一大要因が「家庭内クラスター」だ。WHOと中国の調査では感染経路の約8割、東京都が行った調査でも7割超が家庭内感染によるものと発表されており、無症状の感染者が同居する人に無自覚に移しているケースも多いと見られている。

◆ウイルスは汚れの中で数日間残存する

 下記に、新型コロナについての最新の知見をまとめた。このウイルスは、主に飛沫感染と接触感染によって広がっていく。特に物の表面では、ウイルスの飛沫が生活汚れやホコリと混じり、数時間から数日間にわたって残存するとされている。つまり、汚れている部屋ほど、ウイルス感染リスクが高い“危険スポット”なのだ。

<ここまでわかってきた新型コロナウイルス>

▼新型コロナウイルスは3タイプに分類できる

 新型コロナウイルスを遺伝子型で分類したとき、A、B、Cの3タイプに分けられることがわかった(※1)。Aタイプは中国の広東省や日本、アメリカ、オーストラリア、Bタイプは、武漢市を含む中国やその周辺地域の東アジア、Cタイプは、フランスやイタリア、アメリカ、ブラジルなど欧米を中心に、それぞれ感染が確認されている

▼新型コロナウイルスの残存時間はどれぐらい?

 ステンレスで48時間、プラスチックで72時間後まで、新型コロナウイルスが残存していたと発表されている(※2)。一方で、4日後もウイルスが検出されたという報告も。それだけではなく、医療用マスクの外側表面からも、7日後に感染可能なウイルスが検出されたと発表されているのだ(※3)。いずれにせよ、数日間は感染するウイルスが残存している可能性は高いので、注意が必要である

▼新型コロナウイルスにはアルコールや石けんが有効

 一般の風邪の原因となるウイルスや、猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)の原因もコロナウイルスである。コロナウイルスの遺伝物質(RNA)は、「エンベロープ」と呼ばれる被膜で覆われている。この被膜の主成分は脂質で、アルコールや石けんによって破壊できることから、新型コロナウイルスもアルコールによる消毒や、石けんを使った手洗いが有効とされる

※1:イギリス・ケンブリッジ大学のピーター・フォスター博士らの研究チームによる

※2:アメリカの国立アレルギー・感染症研究所などの研究グループによる

※3:香港大学のレオ・プーン教授率いる研究チームによる

※上記の情報は4月24日時点のもの。新型コロナウイルスに関しては現在も研究が続けられており、これらは研究中の情報であることに留意してほしい

 一方で、新型コロナが属するコロナウイルスは、脂質を主成分とする「エンベロープ」という被膜で覆われている。この被膜は、石けんや手指消毒に用いられるエタノールはもちろん、家庭用の中性洗剤で破壊できることがわかっている。新型コロナにも手洗いや消毒が有効なのは周知の通りだが、経済産業省が中心となって中性洗剤による洗浄効果を調べる検証も進められており、効果が実証されれば、ウイルスを不活性化させる選択肢を増やせるだろう。

◆室内感染防止の鍵。それは正しい掃除法!

 そこでウイルスの感染拡大を防ぐ正しい掃除術、“感染掃”が重要だと話すのが、病院清掃30年のプロ・松本忠男氏だ。家の中でも、特に飛沫を含んだ汚れが多く、ウイルスが潜んでいる危険性が高い場所を意識的に清掃することで、家庭内感染のリスクを大幅に減らすことができるという。

 家の中の感染対策としてよく挙げられるのが、ドアノブや照明スイッチなど手でよく触れる場所の消毒だが、「より危険な場所が見落とされている」と松本氏は話す。

「感染の危険度は、ウイルスの感染力や数、接触頻度の両面で考えなければなりません。ドアノブやスイッチに触れるのは一瞬なので、危険度はそこまで高くない。それよりも会話や食事で飛沫が多量に落ちるテーブルの上、手洗いやうがいを行う洗面所、長時間過ごす寝室のほうがハイリスクです」

 では、これらの場所に付着したウイルスを除去する正しい掃除法とは何か。松本氏は、「乾いた汚れは、乾いた布などで除去するのが基本」だと教えてくれた。

「掃除というと住居用洗剤を吹きかけたり、濡らした雑巾でゴシゴシこすったりする人が多いと思います。ですが、これはウイルスなどの病原体を含む汚れを、水分で塗り広げてしまうだけなのでむしろ逆効果。正しい掃除方法は、乾いた布を往復させるのではなく、S字を描くように一方向に動かすやり方。こうすると、病原体を含む汚れを効果的に除去できます」

 テーブルの上の有機物を含む汚れが、乾拭きと水拭き、また往復拭きと一方向拭きで、それぞれどの程度除去できたかを松本氏が調べたところ、濡らした布で往復拭きを行った場合はかえって汚れが増えているのに対し、乾いた布で一方向拭きをすると、汚れが確実に減っていることがわかった。

「この拭き方なら、汚れと一緒に病原体の多くを除去できるので、健康な人であれば毎日の掃除はこれだけで十分です。もし家族に高齢者など、免疫力の低い人がいる場合は、さらにエタノールや中性洗剤を使って洗浄を行うとよいでしょう」(松本氏)

 なお、拭き掃除をせずにエタノールや中性洗剤を噴霧しても、十分な消毒効果は得られないという。上に示したように危険スポットの汚れは一方向に乾拭きを行って除去し、かつハイリスクな人が同居する場合は消毒を行うというのが、感染予防の確実な手順となる。

◆家のカビに潜む肺炎リスクにも注意

 新型コロナでは改めて肺炎の恐ろしさが知られたが、実はウイルスだけでなく、家のカビによっても肺炎を発症することがあるので、これからの季節は注意が必要だ。

「梅雨から夏にかけて、肺炎の原因となるカビの発生リスクが特に高まるのがエアコンです。冷房を使うとエアコン内部が冷えてエアコン内に水が溜まり、カビが繁殖します。さらにカビはホコリの中で増殖しやすいので、気づかないうちにエアコンが大量のカビとホコリを放出する、病原マシンと化してしまうのです」(松本氏)

 ほかに空気清浄機や浴室など、カビが発生しやすい場所は梅雨の前に掃除をしておきたい。“STAY HOME”と言われるが、実は家の中でも我々はリスクにさらされている。これら目に見えない病原体に対する正しい闘い方を知ることが、自身はもちろん、周囲の大切な人を守るためにも肝要だ。

◆このスポットは特に危険!

▼テーブルの上(飲食、会話での飛沫)

咳やくしゃみはもちろん、近距離で会話するだけでも飛沫感染は起こる。右ページで示したように新型コロナウイルスは平らな表面では数日間残存するため、テーブルの上の掃除が不十分なまま飲食を行えば、おのずと感染リスクは上昇する。乾いた布で一方向拭きを

▼洗面所(うがいの飛沫)

ウイルスを排出しようと勢いよくうがいをするのはいいが、飛び散った飛沫から

の感染リスクは見落とされがちだ。洗面台は濡れたまま放置せず一方向に乾拭きすることで、ウイルスの多くを除去することができる。2日に一度は中性洗剤で掃除をしておきたい

▼寝室(飛沫を含んだホコリ)

寝室は、寝具から出る大量の綿ホコリにウイルスの飛沫が含まれて滞留しやすい。帰宅直後、ドライシートをつけたフローリングワイパーで床に落ち切ったホコリを除去しよう。寝る直前に掃除すると、ウイルスとホコリが舞う中で寝ることになるので絶対にNGだ

◆こんな場所も感染リスク大

 感染予防の掃除が重要なのは、家の中に限らない。仕事中や休憩時にも注意が必要だ。

「ウイルスは、ホコリの中で数日間活性を保ちます。パソコン周辺には静電気でホコリが集まるので、そこにウイルスを含む飛沫が付着すればホコリと混ざって舞い上がり、感染する可能性も」(松本氏)

 デスクに不要な書類が多い人は、これを機に整理と掃除を実践してみよう。その際、ホコリが舞わないよう、マイクロファイバークロスなどでそっと除去すること。

「また、スマホも感染リスクが高いツール。通話でスマホに飛沫がつくので、それを触った手で別の場所に触れていくことで感染が広がることが考えられます」(同)

 スマホはメガネ拭きのようなやわらかい布で、一方向にやさしく拭くように。素材によっては画面に傷がつくので注意してほしい。

 身の回りをすべて掃除するのは不可能だが、こうした危険なものの周辺だけでもきれいにしておくことが感染予防の一助となる。

<取材・文・撮影/金谷亜美 黒田知道>

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