あえて三密に飛び込んでしまう人々。「自分は大丈夫」の裏にある心理状態

あえて三密に飛び込んでしまう人々。「自分は大丈夫」の裏にある心理状態

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◆異常事態が能力の過大評価を加速させる

 「三密」を避けるために外出自粛令が出て3週間以上が経つ。世界中でコロナウイルスの拡散を防ぐために、ロックダウンや外出自粛が行われて、世界規模での外出制限(自粛)が行われている。

 それにも関わらず、「私は大丈夫」という感覚で、三密全てを満たすような危険な場所へ行く人がいる。

 例えば、巣鴨地蔵通り商店街で行われた縁日には、多くの人が集まっていた。現場の映像をニュースで見ると、マスクすらしていない人も多く見られる。

 そのような行動をする人の頭のなかには、「私は大丈夫」という感覚がある。まるで、超人無敵のヒーローかのように自分の能力を過大評価してしまったり、あまりの異常事態に脳が正常な判断ができなくなっている可能性がある。こういった事態だからこそ、その人が持つ本性が行動に現れやすい。

 今回は、「私は大丈夫」と考えさせてしまう心理作用や、心理バイアスについて解説する。

◆判断を鈍らせるさまざまなバイアス

@能力が低い人ほど、自分は大丈夫と考えてしまう

 認知バイアスのひとつに「ダニング=クルーガー効果」というものがある。これは、「能力の低い人は自分の能力について、実際よりも高く評価してしまう」というものだ。この法則はビジネスの場だけでなく、コロナショック下の状態においても当てはまる。

 この法則に当てはめると、「自分は大丈夫」と思ってマスクをつけない・三密へ出かける人は、ビジネスにおける能力は低いということになる。

A異常事態への脳の処理オーバー(正常性バイアス)

 心理バイアスのひとつで、「予想外の事態に直面したときに、都合の悪い情報は無視して『自分は大丈夫』と事態を過小評価してしまう」ものだ。

 3・11のときにも、この正常性バイアスが問題になった。津波が自分たちの住まいに近づいているにも関わらず、事態を過小評価する正常性バイアスによって逃げ遅れてしまう人がいたのではないかと考えられている。

 この正常性バイアスが発生してしまう理由は「怠け」「状況を甘く見てる」ではなく、脳の認知負荷が限界を超えてしまっているからなのだ。例えるなら、ある種のパニック防止機能である。

 あまりの異常事態に、脳に様々な情報が入ってきて、何を変えるべきか、どう変えるべきか、変えることでどうなるかなどを考えすぎて脳に高負荷がかかってしまい、結局考えずに行動できる平常時の行動を取ってしまうのだ。

◆コロナ報道には身近な情報が必要

B心理的距離が遠い

 最近、テレビでよく観る身近な存在である芸能人の感染・訃報のニュースが増えている。子供のころからテレビで観ていた志村けんさんの訃報は私も大きなショックを受けた。

 そのような身近な人の感染・訃報を聞くと、コロナの脅威が他人事ではなく、その脅威に自分もさらされていると感じるようになる。みなさんも、同じような感覚があったのではないだろうか。これは、心理的距離による影響だと考えられる。

 心理的距離とは本来、対人心理的距離感と呼ばれ、対人関係における距離感のことだが、脅威や課題に対して、どれくらい身近に感じるかの距離感として考える。

 つまり、「ある対象(課題・脅威・人物など)と自分との『身体的距離』ではなく、どれだけ対象に対してどれだけ自分事として身近に感じれるかの、対象と『心の距離感』」である。

 仕事でも、上司は担当者と比べて課題に対する心理的距離が遠いため、感情的ではなく冷静な判断をすることができる。それが逆に、冷静すぎて社員に対して親身ではないと感じさせてしまうこともある。

 メディアは視聴者にコロナの脅威に対して心理的距離を近づける方法として、芸能人の感染だけでなく、より具体的な感染者情報を提供する必要がある。

 例えば、今では都道府県単位で感染者数の情報が出ているが、市区町村単位での感染者数の情報を提供することでより心理的距離を近づけることが可能だ。より具体的で、自分が所属することが意識できるレベルでの感染者情報を出すことで心理的距離を近づけることができる。

◆行動だけでなく心理作用に目を向けるべき

 このように、「私は大丈夫」と考えてしまう人には、心理学的なバイアスがかかっている場合もある。

 もし、その人の行動を変えたいのであれば、行動を批判するのではなく、行動の根底にある心理作用について理解することが重要だ。行動だけ批判して我慢させても、相手の行動を促進させてしまうだけだ。我慢を押さえつけるのではなく、方向性を変えて行動を変えさせる必要があるのだ。

 相手の心理を正しく理解するためには、コミュニケーションとあらゆる可能性を想定する偏見無き分析が必要だ。そのために、ぜひ、心理学を活用してみて欲しい。

<取材・文/山本マサヤ>

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。

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