コロナ対策の使い捨て手袋が森に散乱。自然環境改善の陰で目にしたゴミの山

コロナ対策の使い捨て手袋が森に散乱。自然環境改善の陰で目にしたゴミの山

需要の高まっている使い捨て手袋だが……

 いまだ世界中で猛威をふるい続けている新型コロナウイルス。収束への道のりはまだまだ長いが、その一方で全世界的な外出自粛や渡航制限により、自然環境が急速に改善されているという報告が各地で出ている。

◆世界的には自然環境回復も

 例えば、大きな被害が出ているイタリアのヴェネチアでは、観光客の減少によって運河の水が澄んだことが大きな話題となった。また、アジアのインドでは大気汚染が改善し、微小粒子が過去20年間で最低を記録したという。

 厳しい状況が続くなか、こういった話題はせめてもの明るいニュースだ。しかし、実際に自然のなかへと足を踏み入れてみると、そこには暗い影もある。

 筆者が現在滞在している欧州・ポーランドでは、外出時のマスク着用が義務づけられており、違反者には罰則もあるなど、厳格なコロナ対策が行われている。そんななか、4月20日より、森での散歩が解禁されたので、足を踏み入れてみると……。

 幹線道路沿いにはゴミ! ゴミ! ゴミ! コロナ対策で一時的に閉鎖される前よりも多くのゴミが散らかっていた。なかでも多かったのが、使い捨ての薄い手袋だ。営業が許されているスーパーや薬局では、必ず入店する際に着けなければいけないことから、利用者が増えているのだろう。

 わざわざ森に来て捨てている人は少ないだろうが、風で飛ばされてきたのか、草木にはまるでクリスマスツリーの飾りのように大量の手袋が付着していた。

◆割れた瓶が森に散乱

 せっかく解禁された森の散歩で自然を楽しむどころか、文字通り社会の“汚い部分”を目の当たりにすることに。そこで、筆者は居候させてもらっている弟家族と「エコパトロール」に繰り出すことにした。

 しかし、意気揚々とゴミ拾いを始めたはいいものの、圧倒的な物量にはまるで敵わず。特に多いのが、アルコール関連の空き瓶や缶、ペットボトルやスナック菓子の袋だが、大きなゴミ袋はあっという間にいっぱいになってしまう。

 瓶は割れているものもあるため、重みも相まってゴミ袋はすぐズタボロに。捨てられたビニール袋などを拾って“再利用”するゲリラ戦術に切り替えるが、やはり圧倒的なゴミの前には、ほとんど歯が立たなかった……。

◆台車がゴミでいっぱいに

 そこで、後日あらためて台車を用意して臨むことに。道なりにゴミを拾いながら、森に設置されているゴミ箱に集めていく作戦にシフトした。

 今回もみるみるうちに台車はいっぱいになっていくが、前回よりも多くのゴミを捨てていくことに成功! また、他人とは2メートルの距離を取らなければならないのだが、道ゆく散歩中の人も声をかけてきた。

「個人でやってるんですか? さっき集めてあるゴミを見ましたよ。応援してます!」(50代の夫婦)

「ゴミ拾い? 今日はリュックが小さいけど、俺もよく集めてるよ」(30代の自転車乗り)

「いつも決まった時間にやってるんですか? 私も参加したいです」(30代の犬を連れた女性)

 物理的には離れていても、なんだか知らない人と近づいた気分に……。

 また、森では我々以外にもゴミ袋を持って歩いている人を見かけることもあった。ゴミを捨てる人に比べれば数は少ないものの、同じような志を持った人がいるのは心強い。

◆あと回しにされがちな環境問題

 今後も森での散歩が許されるかどうかはコロナウイルスの感染者数次第だろう。しかし、外出する人が減っているのにゴミが増えているというのは、なんとも皮肉な話だ。

 拾ったゴミを見てみると、使い捨て手袋のような“タイムリー”なもの以外にも、古タイヤ、壊れたスマートフォン、下着を含む衣類、絨毯など、自然に投棄されたものはさまざまだ。

 コロナウイルスに関連しては、「地球を浄化するためにウイルスが発生した!」という陰謀論的な言説も見られるが、冒頭で述べた大気や水質汚染、そして我々が近所の森で目にした光景にしても、人が自然環境を破壊しているのは紛れもない事実。世間ではコロナ収束後の経済活動ばかりが注目されているが、今後はこういった環境問題にも目を向ける必要があるだろう。

 日本でも不要不急の外出以外は自粛が求められているが、もし外に出る機会があるならば、身の周りの自然に目を向けてみてはどうだろう? 木々や花の美しさに目を奪われがちだが、足元には思わぬ景色が広がっているかもしれない。

<取材・文・撮影/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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