オンライン授業のメリットとは?東大パズル王に聞いてみた

オンライン授業のメリットとは?東大パズル王に聞いてみた

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◆オンライン授業、東大生が実感するメリットとは

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各大学はオンライン授業の導入を推進している。既に授業が行われている大学も多く、初めての試みに対して教師や学生からは様々な意見が出ている。

 この状況の中、他大学に先駆けてオンライン授業を開始したのが東京大学だ。今回、『東大パズル王 世界でいちばんアツいパズル』(KADOKAWA)などの著者で、東京大学経済学部3年生の谷政一郎さんにオンライン授業を受けた感想を聞いた。

「自宅で好きなように授業を受けられることには助けられています。カメラをオフにすればこちらの様子は映らないので、コーヒーを飲みながら、筋トレをしながらなど自由なスタイルで受講できます。また、登校する必要がないので、移動時間がかからず、随分と生活にも時間的な余裕が出来ました」

 好きなことをしながら受講できる、通学に時間が掛からない……と、メリットの方を強く感じているようだ。谷さんは、こうしたメリットを持つオンライン授業と通常の授業を比較してまとめたツイートを作成。すると、28万インプレッションを獲得し多くの共感を呼んだという。

◆デメリットに思えることもメリットに

 しかし、オンライン授業では教授に直接質問しにくいなどのデメリットはないのだろうか。谷さんは、その点はむしろメリットに繋がっていると話す。

「質問はしやすくなったと思います。オンライン授業で使われるZoomなどのアプリにはチャット機能が備わっているので、質問や相談したいことを教授とやり取りできます。普通の講義では、質問するためには大人数の前で教授に聞きに行く必要があるので、一定のコミュニケーション能力がないと難しいと感じます。

 しかし、チャットでのやり取りの場合そういった能力は必要ありません。他の学生が見られない一対一のチャットでも会話ができるので、直接質問するより敷居が低くなったように感じます」

 思っていた以上にオンライン授業は広範囲にわたってメリットがあるようだ。この他にも、自分の興味ある授業を簡単に見られるというのも大きなメリットだと言う。

「履修登録システムのサイトからアクセスすることで、一部パスワードがかかったものを除き授業の映像を自由に閲覧したり受講したりすることも出来ます。YouTube で動画を検索するくらいの感覚で聴きたい授業を探せる上に、入退出も自由なので気軽に受講できるところが良いです。このような仕組みは是非とも今後も続けて欲しいです」

 もちろん、その大学の学生以外は閲覧できないようになっているようだ。が、この様な履修していない授業にも顔を出す行為は「もぐり」などと呼ばれ、大学生が様々な学問に興味を持つきっかけになってきた。この様な「もぐり」行為をむしろ歓迎する教授は今も昔も少なくない。

 このように様々な授業をネットで手軽に受けられる形式は、近年人気を集めているN高等学校や映像授業の予備校のような通信制教育を彷彿とさせる。こうしたパソコンやスマートフォン一つでどこでも受講できるオンライン授業の強みは大きい。

 

 「新型コロナウイルスをきっかけにテレワーク化が進む」とも言われているが、オンライン授業というスタイルも、今回をきっかけに拡大し、今後の教育界を変えていくのかもしれない。

 一時は、学生によって通信環境に格差があることが問題となり議論を呼んだ。だが、現在は無料でパソコンやWi-Fiのルーターを貸し出すなどの措置をとる大学が増えている。とはいえ、通信環境の格差は解決される一方で、オンライン授業という形式自体に懸念点はないのだろうか。

◆プライベートな空間を侵食する危険も

「オンライン授業が、プライベートな空間を侵食する危険があるのではないかと懸念しています」と警鐘を鳴らすのは、上智大学の北條勝貴教授だ。

「本来、学校という公共の環境でするはずの教育を家庭というプライベートな空間で行うと、部屋や機材などを占拠して使用してしまい、無自覚にせよ家族などに負担を強いる可能性がある。それを『授業だから仕方がない』と私的な空間であるにもかかわらずオフィシャルな正当化で抑圧してゆくことでストレスが蓄積され、予想外の問題へと発展するかもしれない。講義を行う教員の家庭でも同じようなことが言えます。

 また、ライブ授業では学生同士でカメラから家庭が見えてしまう場合があります。以前、SNSにアップされた女性の瞳に映った景色から自宅を特定したストーカーがいましたが、類似のトラブルが生じる危険もあるでしょう。

 こうした問題を出来るだけ回避するために、時間割によって学生を束縛するライブ型の講義ではなく、テキストベースの解説や動画を事前に教務システムなどにアップしておき、それを学生が見たいときに見るといったオンデマンド型の講義の方が望ましいと考えます」という見解を示した。

◆この機会にネットリテラシーを高める教育を

 北條教授はさらにオンライン化をめぐる諸問題について、こう話す。

「学生のネット環境が十分に整備できるか、講師側がオンライン化に対応できるかなどの問題がありますが、それらはだんだんと解決していくと考えています。ただ、文科省や携帯各社などが次々と支援策を打ち出しているが、学生側が情報を得られていないこともある。それらの情報を大学側が整理して発信し、学生を不安にさせないよう努める必要があると思います。

 また、図書館が使えないこの機会に、ネットを活用した調査・研究の技術を例年以上に学生に教授し、ネットリテラシーを向上させたほうがいい。今年の教育を経験した世代は、他の世代よりネットリテラシーが高い、という所まで持って行ければと考えています」

 オンライン授業は多くの実利がある。学生からすれば便利に感じる部分は多く、実技や実験以外のマス向け授業に関しては今後普及していくかも知れない。一方、解決すべき課題はまだまだ残されており、収束後も対策を考えていかなければならない。

<取材・文/茂木響平>

【茂木響平】

ライター・イベンター。大学のお水飲み比べサークル会長。現在、上智大学4年生。面白そうな場所に顔を出していたら、なりゆきでライターに。興味分野はネット・大学・歴史・サブカルチャーなど。Twitter:@mogilongsleeper

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