「会社のオンライン飲み会が地獄すぎる」とのツイートから見える、子どもに冷たい日本の制度設計

「会社のオンライン飲み会が地獄すぎる」とのツイートから見える、子どもに冷たい日本の制度設計

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◆「会社のオンライン飲み会が地獄すぎる」とのツイートが話題に

「コロナ対策ではやりのオンライン飲み会を『俺もしたい!』という上司に付き合ってあげたら、ああだこうだと私生活に介入された。『なんで君は自分の部屋を見せられんのだ。だらしない生活をしとるからだろう』といじられる」

「つまらなくて寝だした奴が『寝るなぁ!』と怒鳴られる。俺はニッカの瓶だけチラ見せしてコップには麦茶入れて呑んでいる。幇間役の社員が『これからが本番ですよぉー』と叫んでいる。こうして、いつまでも終えることができない無間地獄に落ちた……」

 上記のような、ある会社員がTwitterに書き込んだオンライン飲み会の様子が、まとめサイトのtogetterで紹介されて大きな話題となった。

『会社の偉い人がオンライン飲み会したいと言うので付き合ったが、オンラインなのにもう帰りたい』→その様子が地獄すぎた「家庭が侵食されてる感半端ない」という記事だ。

◆戦後日本は「集団に所属する夫と専業主婦の核家族」に最適化された社会

 この記事を見て、境治がFacebookに感想を投稿した。境は私の高校時代の新聞部仲間で、コピーライターとして名をなし、現在はメディアコンサルタント。「メディア酔談」というYouTube配信を私と一緒に行っている。

「ここに出てくる『偉い人』ってわしと同世代か少し下くらいでしょう? 会社入った頃は新人類とか言われてもこうなっちゃうんだねー。おれホント日本の会社って奇妙だと思うわ」

 境はかなり早い時期に会社を辞めてフリーランスになっている。私はこの投稿に次のようにコメントした。

「早々と逃げ出して良かったじゃない。ぼくらが若手のころも似たようなことあった。NHKの中国地方の若手記者が広島に集められて会議の後、報道統括(中国地方の報道責任者)の行きつけのスナックでベテラン中堅交えて延々説教聞かされるのに嫌気がさして、仲良しだった松江の同期の記者と『ばっくれようぜ。こんなに大勢いるし酔ってるからバレないだろ』と言って二人で別の店に行ったのだが、翌朝局に行くとその上司が『お前ら逃げたな!』と怒るという…もうギャグですから 笑」

 私は当時20代。初任地であるNHK山口放送局の記者だった。これに境が返信した。

「スナックから出たことを『逃げる』と称して怒るっておかしいだろ、って感じだね。

ぼくはこういう猿山を逃げ出してこんな目には遭わずにすんだけど、離れザルの大変さは味わった。この国は完璧なほどに『集団に所属する夫と専業主婦の妻による核家族』のみに最適化されて制度設計されてるからそこから外れてる者どもにはキビシイ社会なのだ。それを教えてくれたのがNHKの『日本株式会社の昭和史』という教育テレビの番組だった。戦後体制は戦時体制の延長線上に構築されていて、岸信介が深く関与している、というもの。いまその孫が首相になって令和の戦時にオロオロしてるのは象徴的だと思う」

◆結婚を前提としている制度なのに、子作りや子育てには配慮が足りない

 そこで私は、以下のようなことを考えた。

 男を戦場に駆り立てるための戦時体制は、戦後もビジネス戦場に駆り立てるための仕組みとして残り、女性はいずれも「銃後の守り」の専業主婦と位置づけられた。

 境が指摘する通り「集団に所属する」ことのメリットが、今なお最大限図られている。コロナ対策でフリーランスがおいてけぼりにされそうになったのは、その象徴だろう。フリーで働く人が政策立案者の目線に入っていない。フリーランスとフリーターの区別すらついていない政治家もいた。

 社会生活で組織への所属と忠誠が求められると同様に、私生活では結婚して夫婦となり家庭を築くことが当たり前とされている。年金の第3号被保険者はそのための利益誘導だ。

 第3号被保険者はザックリ言えば、サラリーマンの夫に扶養されている一定の年収以下の専業主婦のことで、国民年金の保険料を自分で納める必要がない。専業主婦の特権とも言える。

 このように結婚が一人前の前提のような社会通念があるから、男も女も「まだ結婚しないの?」とディスられる。

 ところが結婚前提の制度のくせして、意外にも子作りや子育てにはまったく配慮の足りない制度設計になっている。保育所不足と「保育園落ちた日本死ね!!!」の叫びはその典型。医療費も高齢者に手厚く子育て世帯に冷たい。

 教育も、コロナ対策で真っ先に閉鎖されたのが学校ということがすべてを物語っている。これはホントに不思議。「産めよ、殖やせよ」じゃなかったんかい! 日本は抜本的制度改革をしないと国家として生き残れないし、そこに暮らす私たちの幸せもない。

◆子どもと、子育て中の親たちに優しいまなざしを

 境は『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない』(三輪舎)という本を上梓している。まさにその通りだ。境が本を出したのが6年前。いまだに事態は変わらない……というより悪化しているのでは?

 そして何より制度の問題以上に、私たちの社会全体、この国に暮らす人々が、子どもたちと子どもを育てる親たちに冷たい目線を向けていないか?

「コロナ対策で学校が休みとなった子どもが公園で遊んでいる」と苦情が出たという。保育所が近所にできることに反対する住民がいる。自分さえよければいい、自分の家族さえよければいい、そんな風に思ってないか? 子どもたちが将来、私たちの医療費や年金を負担してくれるんですよ。それでいいんですか?

 子どもと、子育て中の親たちに優しいまなざしを。子育てしたくなる国作りをしようじゃありませんか。それはきっと、他者に優しい寛容な社会、みんなが幸せになれる社会作りにつながると思う。

<文/相澤冬樹>

【相澤冬樹】

大阪日日新聞論説委員・記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『安部官邸VS.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)

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