デパートのレストランがピンチに!その陰には「歴史的企業の再編」があった

デパートのレストランがピンチに!その陰には「歴史的企業の再編」があった

かつて西友と同じ「西武セゾングループ」だった大手ファミレス「CASA」。 懐かしい!という人も多いであろう

◆窮地に陥る「デパートのレストラン街」

 最近、そごうや西武百貨店のレストラン街で「空き店舗」や「改装中」の店舗が目立ったり、飲食以外のテナントで埋めている店があることに気付いた人も居るのではないだろうか。

 もちろん、4月現在は飲食店舗の多くが新型コロナウイルスの影響で時短営業などになっているのだが「空き店舗問題」はそれより前、2019年秋から発生していた。

 実はこの問題には「かつて西武セゾングループだった歴史的企業の大再編」が大きく関わっていたのだ。

◆西武解体から数奇な運命を辿った「西洋フード」の再解体

 2020年8月末に閉店予定のそごう徳島店。まだ閉店には時間があるものの、2019年末にはレストラン街の殆どが空き店舗となっており、人の姿はまばらだった。

 この「空き店舗問題」の発端となっているのが、英国コンパスグループの日本法人「西洋フード・コンパスグループ(旧西洋フードシステムズ)」と傘下の「エムエスエル(旧森永フードサービス)」の事業再編だ。

 かつての国内有数の巨大企業集団「西武セゾングループ」の大手飲食店グループとして名を馳せた「西洋フードシステムズ」は1947年9月、森村武次郎により「キンケイカレー」を手掛ける荏原食品工業として創業。同一の創業家(森村家)を持つエバラ食品や平和食品工業と緊密な関係にあったが、1975年には経営悪化を機に西武セゾングループの傘下となり、1976年に「レストラン西武」と合併。西武百貨店や西友のレストラン街を中心にらーめん店「京らーめん糸ぐるま」やファミリーレストラン「CASA」(カーサ)など多くの業態を展開し、その後1989年10月には「西洋フードシステムズ」に社名変更。バブルの勢いに乗り、全国各地に様々な業種の飲食店を展開する一大飲食店グループとなった。

 2001年には経営破綻した旧そごうグループの「そごう商事」からとんかつ専門店「双葉亭」、和食店「四季」など自社グループ店舗や繁華街で営業していた飲食事業を取得し更なる事業多角化を推し進めたものの、今度は西武セゾングループの経営再建に伴い、2002年1月から英国企業「コンパスグループ」の傘下に入り現在の社名に変更。以降は経営規模を大幅に縮小していくこととなる。

 2007年8月には主力業態であったファミリーレストラン「CASA」の大部分(主に百貨店内以外)や、居酒屋「藩」「居食処 博多五風」「京らーめん 糸ぐるま」などのレストラン事業約120店舗を「西洋レストランシステムズ」に分社化し、モルガン・スタンレー証券とオフィス井上に売却、のちに居酒屋チェーン大手の「川中商事」(現・アンドモワ)に売却された。そして、西洋フード・コンパスグループはオフィス・工場を始めとする各種事業所の社員食堂運営受託、宿泊施設・公的施設・保養所・研修所・高速道路のSA・PA、給食、百貨店内テナント店舗の運営受託を中心とした事業展開に移行した。

 西洋フード・コンパスグループが継続して運営した百貨店内テナント店舗に関しては、レストラン事業分社化もロードサイド型店舗と共通ブランドで営業を行っていたが、商標等の関係などから、西洋フード・コンパスグループ直営の「CASA」を「CASA Grande」に、「小吃坊」を「皇雅」に、「双葉亭」を「○かつ亭」に変更している。つまり近年「CASA」に関しては、見た目がほぼ同じでも「CASA」と「CASA Grande」で運営企業が異なる状況となっていた。

 今回のレストラン街店舗の大量閉店の発端は、西洋フード・コンパスグループの事業再編で百貨店内テナント店舗以外の殆どの事業が譲渡されたことによるもの。

 西洋フード・コンパスグループの事業のうち「スポーツ施設およびレジャー施設におけるレストランその他の飲食提供業務および宿泊業務に係る事業」が「エスエスエル」に吸収分割承継、外食大手「クリエイト・レストランツHD」に2019年9月1日に経営譲渡され、それ以外の店舗のうち「百貨店内テナント店舗」はすべて閉店されることとなったのだ。

 なお、西洋フード・コンパスグループの大部分を引き継ぐことになった「クリエイト・レストランツHD」は1999年5月に創業(2010年に持株会社制に移行)した外食大手。「マルチブランド・マルチロケーション戦略」を掲げ、百貨店やショッピングセンターにしゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶ菜」、自然食レストラン「はーべすと」、クレープ・タピオカ専門店「デザート王国」など222ブランド925店舗を展開している(2019年2月末現在)。

 今後「西洋フード・コンパスグループ」は社員食堂・給食・高速道路SA・PAの運営受託などのみをおこなうこととなり、もはやかつての「国内大手」の面影はほぼ無くなってしまう。

◆そごう・西武のレストラン街、一部は「空き店舗だらけ」や「飲食以外」に

 今回の事業再編により窮地に追い込まれたのが全国各地の「そごう・西武」のレストラン街だ。

 西洋フード・コンパスグループは先述したとおり、成立の経緯から大手百貨店「そごう・西武」のレストラン街に相当数の店舗を出店している。そのため、今回の事業再編による「百貨店内テナント店舗の全面撤退」に伴い、そごう・西武各店のレストラン街では大量の空き店舗が発生することとなった。

 そのうち、西武東戸塚店(オーロラシティ東戸塚)ではレストラン街8店舗のうち2店舗(CASA、いろどり家)が2019年8月に閉店したもの閉店に先駆けて後継店2店舗(ベーカリーレストランサンマルク、とろ麦)の新規出店が決定するなど影響の少ない店舗がある一方で、西武所沢店ではレストラン街6店舗のうち西洋フード運営4店舗(CASA、○かつ亭、トラットリアパスクーア、皇雅)が閉店、そごう徳島店ではレストラン街5店舗のうち3店舗(ファミリーレストラン、○かつ亭、京まいこ)が閉店するなど飲食店区画の半分以上が閉鎖状態となる店舗もあった。

 所沢西武では2019年末までの改装に合わせて1区画を除いて後継テナントが決まったものの、飲食テナントとして再開した区画はごく一部のみで「レストラン街」としての魅力は失われることとなった。さらに、2020年中に閉店することが決まっているそごう徳島店では殆どの区画が空き店舗のままであるなど、とくに地方店舗では後継テナントが決まらずに淋しい状況となってしまっているところも少なくない。

 大型店が新型コロナウイルス禍により苦境に陥るなか、こうした「空きテナントだらけ」の状況が続けば店舗の集客力が更に落ちてしまうことにもなりかねず、各百貨店にとっては頭が痛い問題となりそうだ。

◆かつての大手ファミレス「CASA」は残り4店のみに…

 さて、今回の事業再編に巻き込まれて大規模閉店となったなかには、かつて大手ファミリーレストランチェーンだった「CASA」の店舗も含まれる。

 CASAは西武グループのファミリーレストランとして1970年代に創業し、1991年には九州地盤の大手スーパー「寿屋」(2002年廃業)運営のファミレス「グルッペ」を買収し地域子会社「西洋フードシステムズ九州」を設立、CASAの店舗とするなど最盛期には200店舗以上を展開。「小さい頃の思い出のファミレス」として記憶に残っている人も多いであろう。

 しかし、ファミリーレストラン各社が出店攻勢をかけるなか「西武セゾングループの解体」という憂き目にあったCASAは2001年から2002年にかけて首都圏・関西店舗の大半をゼンショー傘下となったファミレス「ココス」に売却するなどして大幅に店舗網を縮小。2010年代に入ると、川中商事(現・アンドモワ)傘下の「CASA」と西洋フード・コンパスグループが運営する「CASA Grande」を合わせても20店舗を割り込む状態となっていた。

さらに、今回の事業再編による「商業施設内テナント店舗の全面撤退」により、西武百貨店などに出店していたCASA(CASA Grande)は全てが閉店となってしまった。

 現在、営業を続けるCASAはアンドモワ運営の路面店や一部の西友内店舗など、首都圏に4店舗を残すのみとなる。

 かつて日本有数のファミレスチェーンだったものの、もはや風前の灯となってしまった「CASA」。思い入れがある読者は、もし見かけることがあるならば立ち寄ってみてはどうだろうか。

 残る4店舗のなかにはバブル期に出店したものもあり、少し懐かしい「あの頃のファミレス」を感じることができるかも知れない。

<取材・文・撮影/淡川雄太・若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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