知られざるコロナ問題。トイレを貸したくないコンビニ、借りられなければ困るトラック運転手

知られざるコロナ問題。トイレを貸したくないコンビニ、借りられなければ困るトラック運転手

トイレに掲げられた使用禁止のお知らせ

◆コロナ禍で奮闘するドライバーたちの苦悩

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回から「差別」や「シャワールームの閉鎖」など、コロナ禍によってトラックドライバーに降りかかる悩ましき問題について述べているが、今回はもう1つ「コンビニのトイレ問題」を紹介しながら、「それぞれの立場の正義」について考えていきたい。

 コロナ禍で逼迫する物流。とりわけ宅配を担う配達員や、スーパーに生活必需品を卸すドライバーは、毎日が戦いだ。

「ウチの主人も青果を運ぶトラックドライバーをしている。ニュースなどで『心無い言動された』的な事が取り上げられると、やり切れなくなると言っていた。このコロナで、物量が増えて身体もボロボロな程忙しくなっている」

「コロナの影響で物量に殺される。朝トラック重すぎて坂道唸ってたんだけど」

 筆者の自宅にやってくる顔馴染みの配達員にも状況を聞いてみたところ、謙虚にも「(仕事があるだけ)ありがたいです」と話していたが、その顔には4月の肌寒い朝にも関わらず、大粒の汗が滴っていた。

 トラックドライバーは、これら消費者に近い人たちに限らない。一次輸送(いわゆるBtoB)を担うドライバーたちもまた、このコロナ禍の中で必死に物流を支えている。

 中でも「長距離」の輸送を担うドライバーたちは、「コロナ運ぶな」、「こんな状況の中、日本全国をウロウロするな」と言われたり、家族が登校・出社拒否に遭ったりするなどの偏見や差別を被ったりする現状がある。

 消費者と直接触れ合うことがない分、その実態はあまり知られていないが、今でも筆者の元には「なんとかしてくれ」といった相談メールが度々送られてくる。

◆コンビニのトイレ使用禁止はドライバーにとって死活問題

 彼らが直面しているのはこうした差別問題だけではない。

 前回紹介した「ガソリンスタンドに併設されているシャワールームの利用停止」といった、肉体的・衛生的負担も大きな悩みの種だ。

 詳細は前回記事を読んでいただければと思うが、4月中旬、トラックドライバーの間で最も利用率の高いガソリンスタンドのシャワールームが、感染拡大防止を理由に次々閉鎖され、「シャワー難民」が続出した出来事があった。

 しかし再開要望の声が多く、各大手ガソリンスタンドは1週間ほどで決定を撤回。事態は終息し、一旦はトラックドライバーに平穏な日々が戻ったのだが、その直後の4月28日、今度はコンビニエンスストアのローソンがトイレを禁止にして物議を醸した。

 ガソリンスタンドのシャワールーム閉鎖は、トラックドライバーのみが関係する事態だった一方、コンビニの場合は一般客にもその影響が降りかかったためか、世間からの反発の声はシャワー時以上に大きかった。

 が、トラックドライバーにとってこのトイレ閉鎖は、シャワールーム時よりも、また一般客よりも深刻度が高い。その原因は、元々トラックドライバーが使用できるトイレの圧倒的少なさにある。

 長距離で1週間以上家に戻れないことが多い彼らにとって、トラック車内は仕事場兼自宅とも言える場所。ゆえに大型車の運転席後部にはベッドが備え付けられていることが多いのだが、さすがにトイレまでは付いていない。

 そのため、数時間に一度どこかに停まって用を足さねばならなくなるのだが、その車体の大きさから、たとえトイレがあっても駐車場がなければ、その場を通りすぎなければならない。

 トラックドライバーにとってトイレ問題はつまるところ、「駐車場所問題」でもあるのだ。

 普段から「駐車可能ポイント」を熟知しているほど、トイレにシビアなトラックドライバー。コロナ禍で時間的余裕もない中、コンビニのトイレが使用禁止になるのは、トラックドライバーにとって最悪な状況でしかない。(もちろん、トイレを借りるだけではなく、同時に買い物もしているのは言うまでもない)

◆トイレ難民と化すドライバーたち

 こうしたトラックドライバーや一般客、さらには一部の加盟店オーナーからの強い要望もあったことで、ローソン本部からのトイレ使用禁止は、発表翌日に撤回された。

 が、最終的な判断が店舗ごとに委ねられたことから、現在でもトイレ使用を禁止している店舗が目立つ。

 さらにはこの「トイレ閉鎖」の動きが、他の大手コンビニや他商業施設でも徐々に広まりつつあり、トラックドライバーは現在も依然として「トイレ難民」と化している。

 現場からは、

「トラックで寄れるコンビニのトイレがコロナで使えなくなってて膀胱が破裂しそうだしそろそろ尊厳まで失いそう」

「今日途中で回ったコンビニ、道の駅、ガソリンスタンド、お客さんのとこ全部トイレ、ごみ捨て禁止。世間が殺しに来てる。3:00から18:00までトイレ(大)我慢とかホント鬼」

「トラックを停めて入れるコンビニに行って、トイレを借りられないのはかなり困る。コロナだから仕方ないとは思うけど、高速以外では運転手は、コンビニに頼るしかないんだけど。ゴミ箱は使えなくても持ち帰れるけど、トイレは我慢できるものではない。運転手だけはトイレ使用可能って所は有難い」

 と言う声が次々と聞こえてくる。

 とりわけ、女性トラックドライバーにとってこのトイレ問題はより深刻だ。筆者も現役当時、トイレの少なさには非常に難儀していた。

◆生理用ナプキンを取り替えられない女性ドライバーも

 中でも問題なのが「生理」だ。

 拙著『トラックドライバーにも言わせて』でも紹介しているが、筆者も現役時代、トイレが見つからず、ナプキンが取り換えられないことが多々あった。

 帰社後、洗面所で汚れた座布団とショーツ、ズボンを手洗いする時の虚しさは、今でも忘れられない。それ以降、生理5日目であっても念のため夜用ナプキンを使うことが習慣になった。

 もう1つ、こうしたトイレの減少によって現在個人的に心配しているのが「立ちション」や「黄色いペットボトル」問題の増加だ。

 トラックドライバーは日頃からマナーが悪いと決めつけられることが多い。

 このイメージは、一部の悪質なドライバーによって付けられたものではあるが、今後こうしたトイレ難民の増加が加速していけば、立ちションや黄色いペットボトルの投げ捨てが増え、彼らの評価がますます下がり、差別問題がより一層深刻になる懸念もある。

 しかし忘れてはいけないのは、こうしたシャワールームやトイレといった商業施設は、あくまで店側の「厚意」で貸してもらっているということだ。

◆貸し出しを禁止する店側にも理由がある

 トラックドライバーも、「物流を停めない」という正義のもと日々走っているが、施設側にも「開放によって感染者が出れば閉店を余儀なくされ、店員も客も守れなくなる」という彼らなりの「真っ当な理由」や、「その判断に至る正義」がある。

 そのため、「どうして閉めるんだ」、「物流を回しているのは俺たちだぞ」といった一部のトラックドライバーによる一方的な主張は、筋が違う。

 他方、トラックドライバーの中には、シャワーやトイレの閉鎖が相次いだことで、自分たちがいかに周囲の協力を得て仕事ができていたのかに気付いたとする人も多い。

「シャワー完備してくれているガソリンスタンドと大型駐車場完備のコンビニが無ければ僕らは大変な事に……。この環境に感謝してマナー良く使わせていただきましょう」

「コロナの影響で一部のコンビニさんではトイレが借りられない状態です。仕方ないですよね。店員さんだって、掃除、消毒、(中にはペーパーの持ち出し)などもありますもんね。コンビニさん!いつもお世話になってます!でも、危機一髪の時には貸してくれるのは感謝!」

「毎朝利用させて頂くコンビニの店長は理解があって、トラックドライバー、現場仕事、外勤の方の事を気遣ってくれていた。感謝」

 東日本大震災以来、空になったスーパーの棚に対峙したことで、世間にはトラックドライバーが欠かせない存在だという再認識がなされ、温かい言葉も多く聞くようになった。

 有事の只中。互いの事情を汲み、理解しながら、共存・共生できる社会構造ができるといい。

<取材・文・写真/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto

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