カフェの業態は「街の性格を映す鏡」!?――山手線に誕生した「2つの新業態カフェ」その違いとは

カフェの業態は「街の性格を映す鏡」!?――山手線に誕生した「2つの新業態カフェ」その違いとは

3月21日に新駅舎となったJR原宿駅。 奥に見える木造駅舎は今年中に解体、その後は意匠を模した建物を建築する予定だという。

 この3月、山手線に2つのニュースポットが相次いで誕生した。1つは約50年ぶりの新駅となった「高輪ゲートウェイ駅」、そしてもう1つが、約100年ぶりに新駅舎となった「原宿駅」だ。

 実は、この2駅の駅舎内には、お馴染みのカフェチェーンによる「新業態店舗」が出店している。その2つの個性的な業態は、いずれも新駅周辺の「街の変化」が生んだものだった。

◆デキるビジネスマンは「スタバのカプセルに籠って仕事漬け」?!

 最初に紹介するのはスターバックスコーヒーの新業態となる「スターバックスコーヒー高輪ゲートウェイ駅店」。

 この新店舗がターゲットとしたのは「おひとり様」「ビジネスマン」だ。

 高輪ゲートウェイ駅店とスタバ従来店との大きな違いは、同社で初となるビジネス利用にフォーカスした空間「スマートラウンジ(SMART LOUNGE)」、そして完全個室のオフィスブース「ステーションブース(STATION BOOTH)」が導入されるなど、ビジネスマンに特化した業態となっていることだ。

 そのうち、スマートラウンジは「店内で集中して仕事や作業などを行いたい!」というニーズに応えるもので、仕事の打ち合わせなどに便利な大テーブルと、1人でも気軽に利用できる区切られた6席の半個室席を設置。さらに、店内にはJR東日本が展開する有料の小型カプセル型シェアオフィス「ステーションブース(STATION BOOTH)」も2台設置されている。こうしたシェアオフィスがスタバ内に設置されるのも日本初のこと。カプセルに籠ってコーヒーを飲みながら仕事を行えば「デキるビジネスマン」…の気分になれるかも知れない。

 営業時間はスタバ、「スマートラウンジ」、「ステーションブース」ともに午前7時から午後10時までとなる。店内には改札外からのみしか入ることができないためご注意を。(階下の無人コンビニ「TOUCH TO GO」は改札内からのみしか入ることができない)

 もちろん、これまでのスタバと同様の一般席も設けられており、一部座席では電源も設置されるほか、モバイルバッテリーの貸し出しなどもおこなわれる。

◆スタバ新業態、理由は「グローバルゲートウェイ品川」の存在

 さて、それでは何故スタバがまだ乗降客が少ない新駅に「ビジネスマン特化の新業態」を出店したのか――その答えはもちろん、東京の南の玄関口、そして国際的ビジネス拠点となることをめざして建設が進められている「グローバルゲートウェイ品川」(2024年度全面完成予定)の存在だ。

 スタバが「ビジネスマン特化業態」の店舗を出店したのは、もちろん「この駅の、そしてこの街の将来の姿」を見据えてのことであろうし、グローバルゲートウェイが順次完成していき、客が増えていくまでの期間にそうした「ビジネスマン特化業態のノウハウ」をゆっくりと蓄積していきたいという考えもあるからだろう。

 なお、現在「ステーションブース」は新宿駅、品川駅などの駅構内や駅ビル内に導入されているが、JR東日本は2020年度末までにこのブースを30ヶ所ほどにまで増やす計画を発表しており、今後は高輪ゲートウェイ駅のみならず各地の「駅ナカスタバ」に登場する可能性もある。

 近い将来、都内では「スタバのカプセルに籠って仕事する」というスタイルが定着する日が来るのだろうか。

◆原宿駅に誕生した猿田彦珈琲は「原宿オトナ化」の証?!

 続いて紹介するのが、96年ぶりに新駅舎となったJR原宿駅の2階に出店する猿田彦珈琲の新業態となる「猿田彦珈琲 The Bridge」(以下「The Bridge」)。

 この店舗もスターバックス高輪ゲートウェイ店と同様に新駅舎上階に誕生したカフェでありながら、このThe Bridgeがターゲットとするのは打って変わって「上質なコーヒーをゆったりと味わいたいオトナ世代」だといえる。

 The Bridgeと猿田彦珈琲・従来店との大きな違いの1つはその「広さ」だ。同社の従来型の店舗は狭いものが多かったが、同店の面積は277平方メートル・座席数は140席と、同社の都内店舗では最大で、都心の駅内でありながらゆっくりとコーヒーを味わうことができる(とはいえども、取材時は開店直後であるため非常に混雑していたが)。

 店舗への入口は改札の外から。店舗からは直接神宮前交差点にでることができるため、JR駅利用者でなくても入りやすい。原宿駅の新駅舎は線路を跨ぐ橋上駅舎となっており、「The Bridge」の名の通り、店舗もいわば「橋」のようなかたちになる。猿田彦珈琲によると、この名前には「作り手と客・日常と非日常・過去と未来を繋ぐ架け橋」という思いも込められているという。

The Bridgeと従来店とのもう1つの大きな違いが「高級感」。猿田彦珈琲といえば比較的ハイクラスなコーヒーを提供することで知られるが、この店舗ではさらにこだわりのハイエンドコーヒーを味わうことができる。

◆看板メニューはドリップ1杯1000円前後!

 そのなかでも看板メニューといえるのが独自の特別ブレンドコーヒー「猿田彦の夜明け-THE RISE OF SARUTAHIKO-」(ドリップ900円)だ。コーヒーの生豆をウイスキー樽で寝かせることでウイスキー特有の香りを豆につけた後に焙煎した「バジルエイドコーヒー」やゲイシャ種のコーヒーなど各国最高峰のコーヒーのみを厳選して独自にブレンド深煎りブレンドで、The Bridge限定販売の「原宿でしか飲めない味」となる。The Bridgeでは、このほかのメニューも「ドリップ1杯1,000円前後」のものが少なくない。

 原宿といえば「若者の街」というイメージであるが、地価は大きく上昇傾向にあり、4月には駅前に「家賃月100万円以上」の高級レジデンスも備える複合商業ビル「ウィズ原宿」が開業するなど、近年は特に「オトナ向け」の高級店や高級マンションも増えつつある。このThe Bridgeもそうした「原宿オトナ化」の流れを組むものといえよう。

 もちろん、店内も落ち着いた「オトナな雰囲気」であり、和を感じさせられる落ち着いた内装が印象的。デザインコンセプトは「日本の路地」だといい、鳥のさえずりや雑踏、話し声などが混ざった店内BGMも唯一無二だ。このBGMは、音楽プロデューサーやDJとして活動する田中知之氏によるものだという。

 新・原宿駅舎の特徴は「大きな窓」であるが、The Bridgeからも大きな窓越しに明治神宮へと繋がる神宮橋や神苑の森を見ることができ、優雅なコーヒータイムを楽しむことができる。余談であるが、明治神宮の御祭神は明治天皇と昭憲皇太后。「猿田彦命」は祀られていない。

 一方で、駅は「オトナ」のみならず老若男女、幅広い世代が利用する場所だ。原宿といえば強力なライバルとして挙げられるのが「タピオカミルクティー」であるが、今後も駅併設のカフェで「タピオカ2杯分の値段のコーヒー=オトナな価格」が受け入れられ、定着していくことになるのか注目される。

The Bridgeの店内では、最高級コーヒー以外にも原宿駅社員と猿田彦珈琲が共同開発したオリジナルブレンド「原宿駅ブレンド」(ドリップ540円、コーヒー豆100g 900円)や、アメリカのガラス製食器ブランド「Fire-King」と原宿駅・猿田彦珈琲がコラボレーションした旧駅舎モチーフの「スタッキングマグ」(3600円)などといった数多くの当店限定商品が販売されている。

 店内でコーヒーを飲まずとも、そしてコーヒーが苦手な人でも「原宿みやげ」のために立ち寄ることもオススメだ(いずれも価格は税別、コーヒーは時価のため価格変動の可能性あり)。

◆カフェの業態は「街の性格を映す鏡」

 「高輪ゲートウェイ駅」と「原宿駅」――それぞれの新駅舎はほぼ同時に開業したものの2つの「新業態カフェ」は全く異なった業態となった。

 このほかにも、3月26日にはJR五反田駅に新しい駅ビル「アトレ五反田2」が誕生するなど、都心の駅では東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて駅舎や駅ビルの再整備を行っているところが多くある。

 カフェの業態は「街の性格を映す鏡」であるともいえる。フリーパスなどを使って駅舎や駅ビルをはしごして、「その駅ならではのカフェ」を探してみるのも楽しいであろう。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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