野口悠紀雄氏に聞く、コロナ時代に自分の能力を伸ばす方法

野口悠紀雄氏に聞く、コロナ時代に自分の能力を伸ばす方法

野口悠紀雄氏

 新型コロナウイルスの影響で、4月7日より緊急事態宣言が発令されている日本。外出自粛や在宅勤務など、すでに日常生活に大きな変化が訪れているが、私たちはこれらの変化をどのように捉え、そしてどのような心構えで日々を過ごすべきなのか。

 経済学者であり、一橋大学名誉教授、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問を務める野口悠紀雄氏に話を聞いた。

◆在宅勤務は「能力主義」への転換をもたらす

 新型コロナウイルスの拡大を契機にして、Zoomなどを活用したオンライン会議や在宅勤務など、すでに働き方は大きく変わっています。こうした変化はコロナ収束後も続いていくことでしょう。

 在宅勤務による働き方の変化で最も重要なのは、成果主義、ひいては能力主義に転換していくという点です。これまでは、成果よりもオフィスにいるかどうかが評価されていました。上司に「おい」と呼ばれた時に、「はい」と答えられるかどうかが重要だったわけです。

 しかし在宅勤務の仕組みが続いていけば、必然的に成果主義に変わっていかざるを得ません。そして成果をあげるには能力を持っていなければならない。つまり、能力主義への転換と言ってもいいでしょう。

◆ゴロゴロ寝ているか、勉強しているかで差が開く

 能力を高めるのは、勉強です。仕事をするには能力が必要で、、自分の能力を高めるには勉強が必要なのです。容易に外出できないからといって今の時期にゴロゴロしているのか、それとも勉強するのかによって、コロナ後の時代に差がついてきます。今の時代こそ、自分の能力を高めることに注力すべきなのです。

 多くの人は勉強というと学校にいって勉強することだと考えますが、それは思い込みです。若い時に学校に通うことは社会的な生活の訓練も兼ねているわけですから必要ですが、社会人が個々の能力を高めるためには必ずしも学校に通うことが最適な方法ではありません。学校に行かない勉強、つまり、独学が重要なのです。

◆独学は「学校に行って勉強すること」の代わりではない

 例えば、英語学習を取り上げてみると明らかです。多くの人が仕事で英語を使えるようになりたいと考えていますが、仕事で使う英語は英会話学校では学べません。なぜかと言うと、仕事で使う英語は分野によって非常に異なるからです。専門用語がわからなかったら話になりませんし、逆に専門用語さえわかれば多少文法が間違っていたとしても通じます。

 英会話学校では「こんにちは」「ごきげんよう」といった誰にでも必要な言葉を教えていますが、専門用語は教えてくれません。独学は「学校に行って勉強すること」の代わりではないのです。

◆独学を続けるコツは「教える」こと

 独学は決して簡単なことではありません。カリキュラムを自分で作らなくてはなりませんし、途中で挫折してしまう可能性が高い。学校に行く場合には、通わなければ卒業できないとか授業料が勿体無いということがモチベーションにもなりますが、独学はそうもいきません。これを乗り越えるために重要なことは、何のために勉強しているのかという目的をはっきりさせることです。

 独学を途中でギブアップしないための強力な方法があります。それは「教える」ということです。例えば公認会計士になるために簿記の勉強をしているとしたら、「野口悠紀雄の簿記講座」というのをブログに作ればいいのです。

 多くはないかもしれませんが誰かが私の講座を読んでくれると思えば間違えたことは書けませんし、他の人と同じ事を書くわけには行きませんから深く勉強します。勉強するインセンティブが生じるのです。

◆独学をする環境はすでに整っている

 こうした勉強方法は、昔はなかなか実現し難いことでした。自分の考えを多くの人に知ってもらうことはそんなに簡単なことではなかった。しかし今はインターネットが発達し、自分でブログを書くのはごく簡単なことになりました。

 英語学習においても、紙の教材だけでなく聞いたり話したりするオーラルな教材が簡単に手に入るようになりました。YouTubeにいくらでも英語の音源があります。独学を続けるための条件は、整ってきているのです。まさに今こそ、独学に取り組むべきです。

 必ずしも、新しいことを学ばなくとも良いと思います。これまで自分がやってきたこと、仕事で身につけたノウハウをブログに書くのも良いでしょう。書いているうちに、これはこうした方がいいのでは、と思いつくこともあります。書くという行為は自分自身との対話なので、新しい発見があるのです。

 独学をするには、無駄なことに時間を使わないことです。私自身も、政府の委員会に出席する時間は無駄だと判断し、切りました。多くの人ができることではないかもしれませんが、無駄なことを切るのは重要です。

 今は、通勤時間も減り、会議のためにオフィスに行く必要もありません。普段無駄なことに取られていた時間を活用できる今だからこそ、独学に時間を充てるべきなのです。

<取材・文/汐凪ひかり>

<取材/5月4日にオンラインで実施>

【汐凪ひかり】

早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。

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