毎年0.4%の炭素を耕作地の土壌に加えることが、地球温暖化の解決につながる!?

毎年0.4%の炭素を耕作地の土壌に加えることが、地球温暖化の解決につながる!?

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◆化石燃料を使う前からの「大地のかく乱」が温暖化につながった

 炭素豊かな土壌に、地球温暖化解決の方法を見つけた。それは、「4パーミル(0.4%)の炭素を土壌に」というものだ。

 知っている人なら、フランスがパリ議定書の際に提案したアイデアだとわかるだろう。今ある耕作地の土壌に、毎年0.4%の炭素を加えるだけでいい。

 それだけで、全世界では毎年大気に放出される二酸化炭素の75%を固定することができるのだ。

 しかしこの提案を多くの人は知らない。なぜなら地球温暖化の話では、ほとんど農業の話など関係ないと思われているからだ。だが地球上の大気の炭素分の約半分は土壌から放出されたものなのだ。

 人間が大地を壊し、土地に蓄えられていた炭素を大気中に放出させてしまったのだ。地球温暖化と言えば「化石燃料の燃焼」の問題だと覚えてきたが、実はそれ以前からの大地のかく乱の影響のほうが大きかったのだ。

◆「土を大切にする」地球温暖化対策が必要

 そうなると、対策ももっと抜本的な考え方の変換が必要になってくる。今のままただ化石燃料を使わなくなるだけでなく、「土を大切にする」地球温暖化対策が必要になる。FAO(国際連合食糧農業機関)の地図には、世界の土壌がどれほど壊されたかが示されている。

 それを見ると、日本は意外と「安定地域」となっている。しかし、世界的に見ると地球の土壌の荒れ方が惨憺たるありさまだ。確かに振り返ってみると、世界中でのエネルギーの無駄な利用以前に、世界各地での土壌流出や劣化、農地の荒廃は語られていた。それが実は、大きな地球温暖化の原因となっていたのだ。

 土というのは無機物と有機物との混合物で、生命を育む「母」だった。それが戦後に広がった化学肥料の洗脳の中で、ただの無機物のように扱うようになっていたのだ。土を有機物のように考えると、そこにはたくさんの微生物がいて、その豊かさに支えられて作物が育ち、消費者と呼ばれる動物たちが生きられる。

 いわゆる化学的な「窒素、リン酸、カリウム」だけでは植物は育たない。植物は根の周囲の菌類や微生物との共生によって、根の張った広さの7倍の範囲から栄養分を集めていると言われている。その菌や微生物たちに栄養を届けるために、根から水溶性の炭素や糖分などの栄養を届けていたのだ。

◆地下湖に莫大な量のCO2が蓄積されている!?

 でもどうしたら土壌に炭素を戻せるんだろうか。ここでたいへん面白い事例を見つけた。中国の新疆ウイグル自治区。石油や天然ガスが取れて資源が豊かなために、今や世界中から、そして中国政府からもホットな扱いを受けている地域だ。

 知られていないが、そこにアメリカの五大湖の10倍もの地下水を蓄えている地下湖がある。その地下湖に約1兆トンもの莫大なCO2が蓄積されているようだという記事だった。それまで吸収源を特定できないCO2はミッシングシンク (missing sink) と呼ばれ、その行き先は未解明のままとなっていた。

 その記事とは、「『消えたCO2』の謎が解明か/砂漠の地下の帯水層が大量のCO2を貯蔵、農業による灌漑が加速」という論文の紹介記事だ。「ワイリーサイエンスカフェ」というところに紹介されている。

「植物の根や地中の微生物から土壌中に排出されたCO2は、乾いた砂漠なら大部分が大気中に放出されますが、この地域の農地では、農家が塩害対策として大量に使用する灌漑用水とともに地下深くに送り込まれ、…地下水を蓄える帯水層…に約200億トンのCO2が蓄積されたのではないか」

 要は植物の根から土壌中に排出される液体化した炭素が、地下水に隠れ混んでいたというのだ。確かに植物は土壌の微生物と共生していて、微生物に栄養を届ける代わり、ミネラルや水分等を届けてもらうことが知られている。

 植物は自分が必要とする炭素分だけでなく、菌根圏にいる微生物たちのための分も炭素を固定しているのだ。それがここでは塩害対策として大量に使用する灌漑用水とともに地下深くに送り込まれたというのだ。

◆人間が放出しているCO2の45%を減らせばいい

 この場合はたまたま地下湖に蓄えられたが、もしそこに微生物がたくさん住んでいたとしたら、それは地中の有機分として土に蓄えられていただろう。

 一つは植物と微生物の共生の中に、炭素を含ませることができる。自然の摂理に沿って行われる農業は、土に炭素を蓄積させる優れた方法だ。

 それは土に炭素を届けていく方法の一つだ。しかし今の地球温暖化で相手にしなければならない量は桁違いだ。どれほどの量なのか、ここでIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2013年データにもとづいて示してみよう。

 単位がどでかい「億トンの炭素」だが、人間が放出しているのが89億トンで、陸上と海域に吸収されているのが49億トン、地球を暖めてしまう温室効果ガスとしてのCO2が40億トンだ。つまり減らすべき量としては89億トンのうちの40億トンになる。

 これはつまり、45%を減らせば良いことになる。

 次にいよいよ地球温暖化問題に入っていきたいのだが、「CO2の問題は陰謀だ」というような懐疑論を否定しなければならない。ここでは簡単に実力の差を問うことにしよう。

「地球を温暖化させているのは○○だ」といったようにCO2以外の原因を唱える人が多いが、「地球温暖化は起こっていない」とする人はさすがに少なくなった。その原因をCO2以外に求める説が多いように思う。

 しかし地球は熱源である太陽からの距離のせいで、地表の平均温度はマイナス18℃の氷の惑星のはずだった。ところが今の地表の平均温度がプラス15℃であるのは主にCO2の温室効果のおかげだ。

 その差を33℃も温めたCO2の温室効果は抜群だ。これほどの「横綱級」の存在と比べて、他の「温暖化の要因」が温める効果とはどれほどのものだろうか。

 もうこの時点で温暖化の現実を認めるのなら、「勝負あった」と言えるだろう。

◆家庭のCO2排出量をゼロにしても温暖化は止められない

 次なる難敵は「地球温暖化は私たちのライフスタイルのせいだ、だからライフスタイルを変更すれば解決する」という誤解だ。

 これもまた簡単に見ていこう。じゃ、そのCO2を出しているのは誰だろうか。「直接に出しているのは発電所かも知れない、しかしその電気を使っているのは私たちだ」と、義務教育で押し付けられている人が多い。その「直接に出している」ものを直接排出と言い、「その電気を使うことで出す」CO2を、間接排出という。ではそれぞれ数字で見てみよう。

 全国地球温暖化防止活動推進センターのサイトにある「日本の部門別二酸化炭素排出量の割合(2018年度)」を見ると、直接排出は確かに「エネルギー転換部門(つまり発電所)」が40%を超えていて、圧倒的に多い。しかしそこで作られた電気のCO2排出量を、その責任に応じて消費した人にカウントする「間接排出量」ではどうなるだろうか。

 それでも家庭の排出量は14.6%しか占めず、これをもしまったく出さないゼロの暮らしにしたとしても、地球温暖化は止められない。これを乗り超えるためには、どうしても産業部分の排出を減らせるか、全く別な方法を考えなければならない。

 ここで一つ考えられる方法が、世界中から排出されているCO2の貯蔵化だ。ここでフランス政府の提案した4パーミルイニシアチブを利用してはどうだろうか。産業はカネのことばかり考えていて、人間の生存のための努力を考えてくれるとは思えないためだ。

 88億トンという全世界での排出量は、炭素換算されたものだ。「二酸化炭素」を「炭素」に換算するには、二酸化炭素に 12/44をかける必要がある。逆に炭素換算の値に3.67を掛けるとCO2の量が得られる。ということは、「現在排出している89億トンの中の40億トン」を減らせばいい。この40億トンを地中に蓄積させればいいのだ。それを世界中の農地に蓄積させればいい。そんなに多くの量を蓄積させることが可能なのか。

 フランス政府は世界中の耕作地に4パーミルで可能だと試算した。しかし土地の中に炭素を莫大に含ませることは可能なのか。ここでブラジルのアマゾンに隠されていたいくら連作しても障害を起こさない「黒い土(テラプレタ)」の秘密がある。なぜそのような土地があるのか謎だったが、それはインディオたちが人為的に作った土だった。有機物を不完全燃焼させて「炭」にし、それをアマゾンのやせ細った土である「ラテライト」と混ぜ合わせたものだった。

◆地域の仲間と、土地に炭素を入れていく活動を始めよう

 今はそこからさらに調査が進化している。その結果、北アメリカは、ヨーロッパからの侵略者に植民地にされる前に、「テラプレタ」と同様の「モリ土壌」と呼ばれる豊かな土地に覆われていたことがわかった。

 西欧からの侵略者たちはただ侵略し、伝染病を移して殺戮し、土地を使い捨てながらダメにしただけだったのだ。今やこうした人為的な「炭素作り」を、「バイオチャー(Biochar)」と呼んで進めている。これを日本の中でも進められないだろうか。土地の豊かさを示すのに、その土の中に住む微生物の種類と量で測る試みが進められている。それは耕地だけでなく、林地であっても同じだ。

 それで見ると日本には豊かな土地を保持してきている土壌も多い。そのために「炭」を混ぜ込んだ「バイオチャー(Biochar)」が欠かせない。豊かにするだけでなく、それを土壌に混ぜ合わせるだけで、地球温暖化も防げるのだ。「テラプレタ」の場所によっては。黒い土の20%近くが「炭」だったりする。ほぼ無限に炭素を入れる必要のある土地はあるのだ。

 化石燃料の利用を止めていくと同時に、地域の仲間たちと「バイオチャー(Biochar)」を作って土地に入れていく活動を始めないか。もしかしたら地球温暖化問題の解決までの期限に、間に合うかもしれない。

 ぼくは10年前に『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)という本を書いている。その時に解決策を明瞭に打ち出せなかった恨みを、この原稿で取り返したいと思う。もしやる気があるなら、解決は可能なのだと。

【「第三の道」はあるか 第2回】

<文/田中優>

【田中優】

1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『放射能下の日本で暮らすには? 食の安全対策から、がれき処理問題まで』(筑摩書房)『地宝論 地球を救う地域の知恵』(子どもの未来社)など多数

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