堂々巡りで話が進まないリモート会議を劇的に変える、たったひとつの質問テク

堂々巡りで話が進まないリモート会議を劇的に変える、たったひとつの質問テク

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 2人で対話をしていたり、多数の人と会議をしているときに、議論が先に進まないということがよくある。議論が行ったり来たりして、進んだと思ったら後戻りしてしまい、いつまでたっても収束しないのだ。誰しも、そのような経験があるに違いない。

◆行ったり来たりで進まない議論

 在宅勤務の状況が続くなか、リモートでの対話や会議で議論が進まない状況が多発している。議論が中途半端なままになってしまい、いつの間にか、指示・命令により従わざるを得ない状況になってしまうことが少なくない。

 オフィスで顔を突き合わせていれば、対話や会議が終わっても、角突き合わせて言い合うことができた。しかし、リモートの状況のなかで、そうした機会がつくれず、無意識のうちに「リモートだからしょうがない」と諦めてしまって、対話や会議の合意形成が中途半端なまま放置されてしまっているのだ。

 実はたったひとつの質問を丁寧に繰り出すことで、この問題は解消できる。それも誰でも、今日からでもすぐに使うことができる、とても簡単な質問だ。

◆出たとこ勝負が進行を妨げる

 そもそも、対話や会議で議論が先に進まない理由は、進行役がいなかったり、進行役がいても進行のためのスキルを発揮していないからだ。わかりやすい例を挙げれば、ひとつの方針について合意形成するために、一対一で対話をしたり、多数で会議をしているとしよう。

 方針についての異論や懸念を解消して、合意形成するわけだが、異論や懸念についての発言がされるたびに、その意見について、ああだ、こうだ、ああではない、こうではないと言い合いが発生する。次の意見が出れば、またその意見について応酬が繰り返される。

 発言された異論や懸念が深刻な問題であろうとそうでなかろうと、出たとこ勝負で議論が繰り返される。これでは、議論が先に進まないのは当たり前だ。30分や1時間の会議時間を設定しても、時間切れになってしまう。進行役がいなかったり、進行のためのスキルを発揮していないと、ほとんどのケースでこういう状況に陥る。

 筆者がビジネススキル演習を実施していて、最も簡単で効果のある進行のためのスキルは、出たとこ勝負で出された意見について都度応酬するのではなく、4つの質問で進行する方法だ。

◆4つの質問で円滑な合意形成を

 4つの質問とは、「洗い上げ質問」「掘り下げ質問」「示唆質問」「まとめの質問」だ。洗い上げ質問とは、「この方針について、気になる点を遠慮なく出してください」「反対意見も歓迎ですので、ご意見ください」というように、異論や懸念を洗い上げる質問だ。

 大事なポイントは、洗い上げ質問をしている間は異論や懸念を洗い上げることだけに専念し、出された意見についての応酬は一切しないしさせないということだ。議論が先に進まないのは、応酬してしまうからだからだ。

 洗い上げ質問で異論や懸念が出尽くしたと思ったら、次に進行役が繰り出すのが掘り下げ質問だ。「今出た異論や懸念のなかで、最も深刻なのはどれですか」「どれから先に議論したいですか」というように、出された異論や懸念を深刻な順に並び変えるのだ。

 例えば、最も深刻な問題が、「人手が足りないから、その方針を実行できない」というように明確になったら、進行役は示唆質問を繰り出す。「人員を補充できたとしたら、賛成ですか」「○○チームの協力を得られたとしたら、試しに実施してもよいと思いますか」というように、ある前提をおいて方向性を示唆し、その方向性について合意形成する質問だ。

 示唆質問は、最も深刻な異論や懸念を発言した人に対して繰り出す。示唆質問で合意形成できたら、今度は参加者全員に対して、「○○の前提で、方針を実施するということで、よろしいでしょうか」というように、まとめの質問で確認するのだ。

◆前に進むには洗い上げ質問に注力すべし

 進行役が4つの質問で進行していくと、議論が先に進まないという状況が格段に解消される。それでもなお、議論が後戻りするケースがある。

 洗い上げ質問が終わって掘り下げ質問に入ったにもかかわらず、「先ほど洗い上げ質問のところで思いつかなかったが、あの問題がある」「言い忘れたが、この問題もある」というように、新たな異論や懸念が出されてしまうのだ。

 このケースは、洗い上げ質問に十分な時間が確保できていなかったという理由が極めて多い。進行役が短時間で会議を終わらせようと思うがあまり、洗い上げ質問に対する意見が十分に出されないうちに進んでしまうと、こうなってしまう。議論や後戻りさせないポイントは、洗い上げ質問にあるのだ。

 質問:掘り下げようとすると新たな異論や懸念が出てしまう

 洗い上げられた異論や懸念のなかから、最も深刻な問題を掘り下げようとすると、その段階で洗い上げた異論や懸念とは別の新たな異論や懸念が出て、進行が思ったとおりに進みません。何が問題なのでしょうか?

 回答:洗い上げを十分に行う

 洗い上げ質問で、方針説明者や進行役が考えている最も深刻な問題が発言されると、進行役はつい、そこからすぐに掘り下げ質問に移行してしまいがちです。参加者が感じている異論や懸念が十分に洗い上げられていない状況です。

 このように洗い上げ質問で、異論や懸念の洗い上げが十分に行われていないと、掘り下げ質問に移行してからまだ別の問題があるということで、議論が逆戻りしてしまうことになってしまいます。

 出された異論や懸念に対して、すぐに掘り下げ質問に移行してしまいますと、異論や懸念の洗い上げがされていないということになってしまいます。異論や懸念の洗い上げを十分に行うということが、とても大事なポイントです。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第193回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

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