売り上げ激減で支払いに悩まされ、バッシングに苦しむ日欧「夜の街」の素顔

売り上げ激減で支払いに悩まされ、バッシングに苦しむ日欧「夜の街」の素顔

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 自粛要請が緩和され、無観客ながらプロスポーツも再開し、少しずつ日常が戻ってきている昨今。しかし、その一方でコロナウイルスの感染者数は再び増加傾向にある。そして、その要因のひとつとして政治家やメディア、ネット世論からバッシングを受けているのが、「夜の街」だ。

◆スケープゴートを生む「夜の街」表現

 そもそも「夜の街」とはなんなのか? 今回、新たに感染が確認されたのは接待飲食と呼ばれる業種の店舗だ。しかし、「夜の街」には一般飲食店、深夜酒類提供飲食店、その他さまざまな業態が混在している。

 行政やメディアが「夜の街」という曖昧な表現を使うことによって、さまざまな業種を一括りにするのは、スケープゴートにしようとしていると批判を受けてもおかしくないだろう。というか、ハッキリ言って営業妨害だ。

(参照:TBS News、日テレNEWS24)

 今後はより具体的な表現に転換していく動きもあるようだが、新型コロナウイルスが問題となり始めてから今にいたるまで、こういった表現が使われ続けてきた影響は小さくない。

(参照:時事ドットコムニュース)

 「職業に貴賎はない」とは言うものの、明らかに「夜の街」へのバッシングは度を超えている。コロナショック下で甚大な被害を受けながらも、ビジネスとして正しい手続きを経て真面目に営業している店舗が、社会のストレスや不安の捌け口になっている感は否めない。

 もちろん、「夜の街」が「わかりやすい標的」となっているのは、日本だけではない。2月より筆者が滞在している欧州でも似たようなケースはいくつも挙げられる。

 本稿では、日本の居酒屋と欧州のパブ、それぞれがコロナショック下でどのような影響を受けているのか考察することで、彼らへの偏見や疑いの眼差しを晴らせればと思っている。

◆収入ゼロのなか、家賃や支払いに苦しむ

 ポーランド中北部の都市・トルンでは、創業25年のパブ「黒いチューリップ」のオーナーに話を聞いた。一般的に、欧米では日本よりも政府からの補償は手厚いようなイメージがあるが、実際は彼らも過酷な戦いを強いられているようだ。

「ウイルスが発生し始めた当初は、我々(ポーランド)は大丈夫。インフルエンザのようなもので、気をつければいいと思っていました。報道で大勢の死者が出ていることを知るまでは、お店を閉めなければいけないような状況も考えていませんでしたね」

 しかし、ご存知のとおり欧州でもコロナウイルスは猛威をふるうこととなり、「黒いチューリップ」は約2か月の休業を余儀なくされた。

「その間、収入はゼロ。家賃や大量の発注品の支払いに悩まされました。政府からの小さな支援もありましたが、政治家たちの争いを見ている間、我々は苦しんでいた。お店を閉めて逃げるべきか、待つべきか、どれが一番いいのか悩みましたね」

 日本における特別定額給付金のような、個人レベルでの支援のほかに、店舗に対しても補償はあったものの、それは微々たる額だったという。

「支援金はすぐ消えてしまいましたね。申し込むにも書類があまりに多くて、専門家に頼まなければいけませんでした」

 現在は営業を再開しているものの、依然厳しい状況が続いている。また、日本のような風評被害も少なくないという。

「売り上げは60〜70%程度まで戻りました。残りは(授業がリモートで行われている)学生客だと思います。普通の仕事はしてもいいけど、パブはダメという風潮はありますね。議論があるのは仕方ない。ただ、店内や利用客の消毒液の費用などもタダではありません。残りの30%ぐらいを補償してくれればいいのにとは思いますね」

◆来店客数が1割程度にまで低下

 一方、「武漢の報道は対岸の火事のように観ていましたが、日本の感染状況が悪化するにつれ、3月後半からすべての予約がキャンセルされ、この先どうなっていくのか不安しかありませんでした」と語るのは、池袋にある老舗大衆居酒屋・バッカスの店主だ。日々、深刻さを増していく状況に不安と戸惑いを隠せなかったという。

「来店客数が激減し、売り上げが普段の3分の1ほど、酷い日には1割程度になりました。高齢の従業員もいるので、感染リスクや自店がクラスター発生源になる危険も感じているなかで営業していたので、どうしようか悩んでいたところに緊急事態宣言が発令され決断に至りました」

 当然だが、お店を休業するまでには激しい葛藤があった。

「正直、心が折れました。リーマンショックや東日本大震災や計画停電なども乗り越えてきましたが、比較にならないほどの売り上げ減と、先が見えない不安感しかありませんでした。損害は1か月完全休業していたので、その売り上げと家賃、管理費、光熱費、保険料などです。補償については東京都から感染拡大協力金、政府からは持続化給付金、どちらも満額給付されました」

◆売り上げは平時の3〜4割

 なんとか休業期間は乗り越えたものの、日々増加する感染者や行政の動向に一喜一憂する日々が続いている。また、「夜の街」報道についても、心中は複雑だ。

「攻撃対象を作ることによって、民意を誘導するのは政治家の常套手段ですし、日本のメディアがそれに疑問を呈するような機能もないので、やむを得ないと苦笑いしています。売り上げは通常の3〜4割、先日はプロ野球開幕という特別要素もあり8割になりましたが、通常の日は厳しい状況が続くと思います」

 日欧、どちらも厳しい状況は続いている。このまま感染者が増加すれば、第2の休業を余儀なくされる可能性もゼロではないだろう。果たしてそれまで生き残ることはできるのか?

「負けちゃダメですよ。仕事と自宅だけでは生きられません。たとえ挨拶のハグはしなくても、会話はしなきゃいけないと思います」(黒いチューリップ)

「飲食店はかなり厳しい状況が続いており、先の見えないなか、残された体力を振り絞って営業を継続しています。今まで通っていたお店やお気に入りのお店がありましたら、難しい時期ではありますが足を運んでいただければと思います。また、お店によってはさまざまな工夫を凝らして試行錯誤していますので、通えない方はそういった方面で応援していただければ幸いです」(バッカス)

 コロナウイルスの影響が「対岸の火事」ではないことは、世界中の人間が痛感したはずだ。

 「夜の街」についても、「自分たちには関係のない世界」だとスケープゴートにするのではなく、一丸となって問題の解決に取り組めることが理想なのではないか。いつかコロナショックを乗り越えたとき、祝杯をあげるための憩いの場を見捨ててはいけない。

<取材・文/林泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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