トラック運転手が車内で自炊する「トラック飯」の世界

トラックドライバーが車内で自炊する「トラック飯」に反響 車に炊飯器や冷蔵庫設置も

記事まとめ

  • トラックドライバーの「日常生活」が紹介され、「自炊」に関する反響が大きかった
  • トラックドライバーが車内で自炊する「トラック飯」は、とてもコスパがよいという
  • 「トラック飯」のために炊飯器、冷蔵庫、さらには電子レンジまで設置するドライバ―も

トラック運転手が車内で自炊する「トラック飯」の世界

トラック運転手が車内で自炊する「トラック飯」の世界

トラックに積まれている調理道具

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回、トラックドライバーの生活必需品から垣間見える彼らの「日常生活」を紹介したが、思いの他「自炊」に関する反響が大きかったので、今回は、前回紹介しきれなかった現役のトラックドライバーが車内で作る「トラック飯」を、より詳しくお伝えできればと思う。

 1週間以上自宅に帰れなくなることも多い彼らトラックドライバーは、車内(キャビン)の中に様々な生活必需品を積み込んでいるというのは前回述べた通りだ。

 全国各地を走り回る彼らは、その行動範囲から「自由」な仕事だと思われがちだが、大きな車体のせいで駐車違反を気にせずクルマを停めて一休みできる機会もごく僅かに限られているため、必然とキャビンの中で過ごす時間は増え、その分自宅と変わらぬ快適な“日常生活”が送れるよう工夫されていくのだが、その中でも最も人それぞれに個性が出る1つが「食事」環境だ。

 トラックドライバーにとって、数少ない楽しみの1つである「食事」。各地の名物にありつけるのはトラックドライバーの特権ではあるものの、やはりその大きな車体のせいで、せっかく訪れた地方でも「有名店をわざわざ訪れる」といった冒険まではなかなかできない。

◆一食70円! 食費が10分の1になったというドライバーも

 そうなると、必然的にコンビニやサービスエリアやパーキングエリアの食事が多くなるのだが、毎日そうした食事ばかりとっていると飽き、太り、出費もかさむ。それらを解消すべく、一部のドライバーによってなされるのが「自炊」というわけだ。

 彼らが作る食事は、「トラック飯」と呼ばれ、SNSなどではその調理過程や完成品を披露する光景をよく目にする。

 日頃から自炊をよくするというあるトラックドライバー曰く、

「具なしですが、(自炊すると)とてつもなくコスパがいいです。パスタ5人分250円。チキンライス5袋入り100円ほど。2人前作っても一食70円くらいです」

 サービスエリアやパーキングエリアで定食を頼むと、1,000円はくだらない。中には1か月10万円近く食費として使っていたのが、自炊をすることで10分の1ほどになったというドライバーもいる。

◆調理のためソーラーパネル式バッテリーを積載

 そんな彼らが作る「トラック飯」は、レトルトカレー、パスタ、目玉焼き、野菜炒め、鍋など想像以上にバリエーション豊かである。

 作るもののバリエーションが豊かだと、使われる調理器具も増えてくる。

 家電でいうと、前回紹介したように、炊飯器、冷蔵庫、さらには電子レンジまで設置しているドライバーもおり、それらを快適に使えるようにするために、ソーラーパネルで充電できる大型のモバイルバッテリーを積んでいるドライバーまでいる。

 その他にも、カセットコンロ、鍋、フライパンなど、本格的に「調理」をするための器具を積んでいる人も少なくない。

 そこで1つ懸念されるのが「包丁」の携帯だ。本格自炊派の中には、まな板や包丁を使用する人もいる。そうすると必然的に「車内に刃物を携帯させておく」ことになるのだが、同法の規定によると、「刃体の長さが6センチを超える刃物」が対象になるというが、調理で使用される包丁はこれに該当する。はたしてこの行為は銃刀法違反にならないのか。

 今回、その是非を確認するため警視庁に問い合わせたところ、銃刀法は「何人も業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない」と定められているため、調理という明確な目的があって携帯することは、銃刀法に当たらないとのことだった。

◆キャビンは仕事場であり家のようでもある

 この考え方は、キャンピングカー、出張でシェフや寿司職人たちが包丁を持ち歩くケースでも同様となる。

 無論、トラックドライバー全員が車内で自炊をしているわけではない。料理ができない、面倒臭い、ゴミや洗いモノが出る、匂いが籠る、油が跳ねる、1人前を調理するのが難しい、愛妻弁当があるなどの理由から、自炊をしない人のほうが割合的には多い。筆者自身も長距離を運転してきた1人だが、今まで自炊はしたことがなく、毎度コンビニで軽食を買い、腹4分くらいにして眠気がこないよう調整していた。

 いずれにしても、あのキャビンの中は、彼らにとって仕事場であり、自炊をするほど家にも近い空間でもあることを、前回と今回の記事で知っておいていただけると、次回紹介する「キャビンの構造」がいかに彼らトラックドライバーにとって大事なのかが分かりやすくなる。

<取材・文・写真/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto

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