親切心や優しさがメンタルを蝕む!「いい人でいること」に心を殺されてしまう人々

親切心や優しさがメンタルを蝕む!「いい人でいること」に心を殺されてしまう人々

photo via Pexels

 「人に親切にしないと」「人に優しくしないと」そういう義務感に苦しんでいる人がいる。お願いごとをされると断れない、周りの期待通りに行動しようとする、怒りたくても怒れない、本音を言うことができない……。この記事に興味を持ってくれたということは、もしかしたら、あなたもそうなのかもしれない。

◆気づけば「優しさの奴隷」に

 「人に優しく」「人に親切」というのは、人格的には素晴らしいことだが、苦しい思いをしてまで「いい人」である必要はない。だが、「じゃあ、無理してまで人に優しくしなければいいじゃないか」と言われても、人に優しくない自分が許せなかったり、罪悪感があったり、自分自身に素直になれない人がいるのだ。また、「人に優しい自分」がアイデンティティになっているという人もいるだろう。

 そのため、本音を我慢してしまうわけだが、それがストレスになり精神的な負荷になって、心が疲弊していく。ある意味「優しさの奴隷」になってしまうのだ。

 「優しさの奴隷」にはいくつかタイプがある。ペンシルバニア大学のアダム・グラントらが研究した寛容度判定の4タイプをご紹介しよう。

・自分本位型:他者と接する機会をすべて自分にとっての利益増大機会とみなす。助けてもらって当然だという態度を取る傾向にある。

・お互い様重視:力添えをするが、貸しは返してもらうものだと考えている。損をしないように用心しながら、厚意の貸し借りをする。

・節度ある寛容:頼まれたら何でも引き受けるのではなく、利他的な行いを楽しみながら長く続けられるよう、小さな負担で大きな効果が得られる方法を探す。

・滅私:自分のことは構わずに他者を気遣う。他者、特に自分本位の人々に食い物にされかねない。自分のニーズを顧みないせいで疲れ切ってしまい、皮肉にも、大して他者の力になれずに終わる。

◆滅私は他人にも悪影響を及ぼす

 優しさの奴隷は、このなかでは「滅私」にあたる。

 滅私の教員の担当する生徒の成績は、自分をいたわる教員に比べて著しく悪くなるという研究結果がある。これは、あらゆる人からの要望に尽くしすぎて、生徒の成績を高めることができなかっただけでなく、自分自身も疲弊してしまうからのようだ。

 教職の場だけでなく、職場でも他者を助けようとする人は、次々と助けを求められるようになり、自分ではなく他者の仕事に忙殺されてしまう。そして、その忙しさから精神が疲労してしまう。

 人に親切をしても心を疲弊しない人がいるが、そういう人は、依頼されて親切をしているのではなく、自ら率先して人助けをしている人だからだ。自ら率先して親切をする人は、親切を行うことで脳内でオキシトシンが分泌されて幸せな気持ちになったり、精神力が高まったり、創造性が高まったり、脳内ネットワークが広がるなどのポジティブな効果がある。つまり、人を助けることが、その人の幸せと直結しており、寛容判定における「節度ある寛容」をさす。

◆優しさの基準を設けよう

 優しさの奴隷になる人は、「他者への優しさが、自分にとってどんな幸せになるか」について考えることが少ない。それよりも、相手がしてほしいこと、自分が失うことについて考えてしまう。

 まずは、その人を手伝うこと、その人の言うことを聞くことで、自分にとってどんな幸せがあるのか考えてみてほしい。それが、納得できる内容だったり、自分にとって幸せ感じれることなら、手伝えばいい。

 そうでないなら、「断る」という勇気を出す必要がある。自分にとっての、「やることで感じる幸せ」と「かけてもいい時間」とのバランスをとってみて考えてほしい。

 自分が得意な領域や好きな領域で手伝えるなら、あなたも幸せを感じれるだろう。自分にとって有限な時間を、無理なくその人にかけれる時間内で終わるなら手伝ってあげるほうがいいだろう。

 なんでも言うことを聞いていたら、聞かないことがあるとその瞬間が目立ってしまい、「あいつはワガママだ」と思われてしまう。自分のしたいことしかしないと、「あいつはワガママだ」と思われてしまう。

 つまり、人に優しくする基準というものを作る必要がある。そして、その基準を満たせば優しくすればいい。誰もあなたに聖人君子になってほしいとは思っていないし、思っている人がいたとしても、その人は自分本位な人であなたを自分の思い通りに動くように操りたいだけだ。

 自分の幸せを守るために、断る勇気・嫌われる勇気を持つ必要があるということだ。

◆後悔をしないための「当たり前」

 これは、すごく単純なことかもしれないが、当たり前のことを当たり前にする勇気や精神力を持っている人は少ない。

 日本人は協調性、社会圧力など社会にとっての幸せを考えるのは得意だが、自分自身にとっての幸せを考えるのが苦手なのではないだろうか。全体の幸せが個の幸せになる発想を感じる、逆にアメリカは個の幸せが社会の幸せにつながっていく発想があるように感じる。

 あなたにとっての幸せはなんだろうか。自分にとっての幸せを考えることは、あなたが死ぬ瞬間に後悔しないように重要なことだ。

 人が死ぬ直前にもっとも後悔することは、「もっと自分らしく生きればよかった」だというのは有名な話だ。誰かにとっての「優しさの奴隷」になるのではなく、自分らしく、自分に優しい人生を選択してほしい。

【参考資料】

『親切は脳に効く』デイビッド・ハミルトン

『「いい人」の心を消耗させない方法 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』アダム・グラント、レブ・リベル

『死ぬ瞬間の5つの後悔』ブロニー・ウェア

<文/山本マサヤ>

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。

関連記事(外部サイト)